第25話.原初の愛
警報が鳴り響く中。
扉が爆発と共に吹き飛んだ。
煙の向こうから現れた三つの影。
先輩。
後輩。
幼馴染。
三人の視線は、ただ一点に向けられていた。
拘束された主人公。
「見つけた」
先輩が震える声で笑う。
「もう逃げないよね?」
後輩はナイフを握りしめている。
「今度こそ一緒に帰ろう」
幼馴染は何も言わない。
ただ静かに、奪い返す準備をしている目。
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そのとき。
主人公の隣にいた少女が、立ち上がった。
ゆっくりと。
音もなく。
三人の前に立つ。
細い背中なのに、なぜか圧倒的だった。
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「だめ」
一言。
それだけ。
なのに——
空気が凍りついた。
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先輩が顔を引きつらせる。
「……誰?」
後輩の手が震える。
「邪魔」
幼馴染が一歩前に出る。
「どいて」
少女は振り返らない。
ただ、主人公を庇うように立つ。
「この人は」
静かな声。
「私のだから」
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その瞬間。
後輩が飛び出した。
最速の動き。
普通の人間なら反応できない。
けれど。
少女は、視線すら向けずに手を掴んだ。
止めた。
完全に。
「え……?」
後輩の顔が歪む。
信じられないという表情。
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少女はゆっくりと振り返る。
初めて三人を見る。
その目には、敵意も怒りもない。
ただ——
絶対的な所有の確信。
「あなた達も」
首を傾げる。
「壊れちゃったの?」
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先輩が笑い出す。
「ふ、ふふ……面白い」
「じゃあ壊し合おうよ」
幼馴染が低く言う。
「排除する」
後輩は震えながら呟く。
「先に好きになったからって、偉いわけじゃない」
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少女は少し考えてから言った。
「違うよ」
一歩、前へ出る。
「あなた達は途中から」
もう一歩。
「私は最初から」
三人の目が見開かれる。
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「この人しかいない」
その言葉には、迷いがなかった。
狂気すらなかった。
ただの事実のようだった。
だからこそ、一番恐ろしい。
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先生が後ろで呟く。
「……やはり、この子が完成形か」
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少女は拘束具を見下ろす。
そして、ためらいなく破壊した。
素手で。
金属が歪む音。
あり得ない光景。
主人公の手が解放される。
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「大丈夫」
手を握る。
温かいのに、逃げ場がない。
「もう離さない」
微笑む。
初めて会った日のような、無垢な笑顔で。
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三人が同時に動いた。
奪い返すために。
少女も動いた。
守るために。
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その瞬間。
部屋の中で、愛が衝突した。




