第24話.最初の依存者
先生が部屋の奥の扉に向かって歩く。
電子ロックの解除音。
重い扉が、ゆっくりと開いた。
「紹介するよ」
振り返らずに言う。
「君の最初の被害者」
暗闇の向こうから、足音がした。
カツ、カツ、カツ。
ゆっくり。
まるで確かめるように。
現れたのは、一人の少女だった。
長い髪。
青白い肌。
焦点の合わない瞳。
けれど——
主人公を見た瞬間、止まった。
呼吸が止まったように。
⸻
「……見つけた」
掠れた声。
一歩、また一歩。
近づいてくる。
「やっと……やっと……」
突然、崩れるように膝をつく。
笑っているのか、泣いているのか分からない表情。
「ずっと探してた」
顔を上げる。
瞳に光が戻っていた。
歪んだ形で。
「どこにもいなくなっちゃうから」
⸻
主人公の脳裏に、断片的な記憶が蘇る。
昼休みに一緒に弁当を食べたこと。
放課後、二人で帰ったこと。
「ずっと一緒にいてね」
そう言われた日のこと。
自分は、曖昧に笑って誤魔化した。
その次の日から——
彼女は学校に来なくなった。
⸻
少女はゆっくりと手を伸ばす。
拘束された主人公の頬に触れる。
震える指先。
「本物……?」
触れた瞬間、涙が零れた。
「夢じゃない……」
⸻
「この子はね」
先生が静かに言う。
「君を失った日から壊れた」
「時間が止まったままなんだ」
少女は頬に触れたまま、囁く。
「もうどこにも行かないよね?」
返事を待たずに続ける。
「逃げないよね?」
指が食い込む。
「今度はちゃんと捕まえたから」
⸻
その瞬間。
遠くで、爆発音のような衝撃。
施設全体が揺れる。
警報が鳴り響く。
赤い光。
先生が顔を上げる。
「……来たか」
⸻
監視カメラの映像に映る三つの影。
幼馴染。
先輩。
後輩。
もう人間の目じゃない。
獲物を狩る生き物の目。
⸻
少女はそれを見て、微笑んだ。
「誰?」
首を傾げる。
「邪魔するの?」
その表情は、これまでの誰よりも静かで、
これまでの誰よりも壊れていた。
⸻
「大丈夫」
主人公の耳元で囁く。
「全部、壊してあげる」
「あなたを奪うものは、全部」
⸻
狂気の中心が、揃った。
・依存する先輩
・危険な後輩
・支配する幼馴染
・管理する先生
・そして最初に壊れた少女
主人公を巡る愛は、もう後戻りできない。




