第23話.最初に壊れた日
目が覚めると、部屋の照明がついていた。
眩しさに目を細める主人公。
足音が近づく。
コツ、コツ、コツ。
ゆっくりと、確実に。
「やっと話せるね」
その声を聞いた瞬間、心臓が止まりかけた。
忘れるはずがない。
忘れたくても、忘れられない声。
「……先生」
そこに立っていたのは——
かつての担任だった。
中学時代の。
優しくて、面倒見が良くて、
誰よりも主人公を評価してくれていた人。
「久しぶり」
穏やかな笑顔。
けれど、目だけが笑っていない。
⸻
「君は昔から特別だった」
先生は椅子に座り、主人公をじっと見つめる。
「人を惹きつけて、依存させて、壊してしまう」
静かな声。
責めるでもなく、慰めるでもない。
ただ、事実を述べるように。
「覚えてる?」
先生が言う。
「転校してきたあの子」
主人公の脳裏に、記憶が蘇る。
いつも一緒にいた少女。
自分にだけ笑ってくれて、
自分にだけ怒ってくれて、
自分にだけ泣いていた子。
ある日、突然学校に来なくなった。
理由は知らされなかった。
「彼女は、君が原因で壊れた」
空気が凍る。
⸻
「依存して、独占して、誰にも渡したくなくて」
先生は楽しそうに続ける。
「最後は、君を刺そうとした」
主人公の視界が揺れる。
そんなこと——
知らない。
知らされていない。
「学校側は隠した」
「君を守るためにね」
先生の口元が歪む。
「でも私は見てしまった」
⸻
「だから決めた」
椅子から立ち上がる。
ゆっくりと近づいてくる。
「これ以上、君のせいで壊れる人間を増やさないように」
主人公の顎を掴み、顔を上げさせる。
「私が管理する」
逃げ場のない距離。
狂気と執着が混じった瞳。
「君は危険すぎるんだよ」
⸻
その頃。
三人はすでに動き出していた。
幼馴染が言う。
「思い出した」
「中学のとき、変な先生がいた」
ヒロインの一人が顔を上げる。
「……まさか」
もう一人が震える声で言う。
「そいつが?」
幼馴染は頷く。
目が完全に獣のそれになっていた。
「狩る」
⸻
部屋の中。
先生は優しく頭を撫でる。
「安心して」
「ここなら誰も君を奪えない」
「私以外はね」
その言葉は、三人と同じだった。




