第21話.脱出
崩れかけた外壁を乗り越え、主人公が外へ転がり出た瞬間
冷たい夜風が頬を打った。
久しぶりの“外”の空気。
息を吸い込んだそのとき、背後から砂利を踏む音がした。
「……見つけた」
振り返ると、そこに立っていたのは幼馴染。
その少し後ろ、息を切らせながらヒロイン2人も現れる。
三人が、同時に主人公を見つめていた。
逃げ場はない。
広いはずの外が、まるで囲まれた檻のように感じられる。
「なんで……外に」
ヒロインの一人が呟く。
混乱、怒り、不安、全部が混ざった声だった。
「崩れたの。家が……だから」
主人公が言い終わる前に、幼馴染が一歩前へ出る。
「ちょうどいい」
静かな声。
けれど今までで一番冷たい。
「もう隠れる必要ないよね」
その言葉に、残りの二人の表情が変わる。
「……どういう意味?」
「最初からこうすればよかったんだよ」
幼馴染は主人公の腕を掴み、自分の方へ引き寄せる。
速い。
抵抗する間もなかった。
まるで本当に“プロに誘われる足”を持つ人間の動きだった。
「この人は、私が守る」
「違う!!」
ヒロインの一人が叫ぶ。
「守るじゃない、閉じ込めてるだけでしょ!!」
空気が張り詰める。
三人の視線が、火花のようにぶつかり合う。
主人公は初めて気づく。
——これはもう「誰が好きか」の話じゃない
——「誰が支配するか」になっている
遠くで、崩壊がさらに進む音が響く。
建物の一部が崩れ落ち、砂煙が舞い上がる。
その瞬間。
幼馴染が囁く。
「……逃げるなら今だよ」
一瞬だけ、握る力が緩んだ。
それは命令でも、優しさでもない。
選択だった。
背後では二人が同時に駆け出してくる。
三方向から迫る足音。
心臓の鼓動が、すべてをかき消す。
——ここで捕まれば、もう二度と自由はない
主人公は、決断する。
そして走り出した。
闇の中へ。
三人を残して。




