44 オムライスとお風呂
いただきますをすると、僕はオムライスをゆっくり食べる。
「……うまい……うまい」
とても美味しい。
いままで食べたどのオムライスより美味しかった。
「お、ノエルは気に入ったか?」
「……きにいった。たまごがふわふわで……けちゃっぷのごはんもうまい」
コカトリスの卵は味がとても濃厚だ。
ケチャップの複雑な旨みを感じる。米も美味しい。
「おお、うまいな。リラの料理はなんでもうまいな」
「ふふ、ありがと」
僕もティルに続いてリラにお礼を言う。
「りら……ありがと。こんなにうまいオムライスをたべられるとは……」
「どうしたしまして」
「こかとりすも、ありがとな? たまごおいしい」
『よかった』『どんどんたべて』
「ぴよよ!」
卵を提供してくれたコカトリスにもお礼を言わねばならない。
ひよこもオムライスが好きなようで、うまいうまいと言って食べていた。
「おいしいねー」「うん、すごくおいしい」
「咖喱オムライスにしてもおいしそう」
「そだね。それもおいしそう」
エルフのみんなも気に入ったみたいだ。
これからオムライスが定番の料理になったら嬉しい。
オムライスを食べ終わったら、母様たちと女性陣とコボルトの半数がお風呂に向かった。
僕はティルや父様と一緒に後片付けだ。
「コボルトたちに性別ってあるの?」
皿を洗いながら、ティルがコボルトに尋ねた。
それは僕も気になる。
お皿を拭きながら、コボルトを見た。
『ないわんねー』『せいれいだからわんね?』
「なるほどなー。でも少女の姿の精霊とかいるよね?」
ティルが言うには人と恋した精霊のお話なんかもあるらしい。
『ふしぎだわんねー』『そうだわんねー』
コボルトたちもよくわかっていないようだった。
「精霊たちはなぞだらけだね?」
「わふわふ」
お皿を運んで手伝ってくれていたガルガルも不思議だと言っていた。
後片付けが終わって、しばらくがたって、母様たちが風呂から出てきた。
「どうだった?」
『どうだったわん?』『きにいったわんか?』
ティルと、お風呂に入っていないコボルトたちがリラに尋ねると、
「ええ、とてもいいお風呂だったわ。ありがとう」
『やったわんやったわん!』
コボルトたちは大喜びだ。
『のえる、においをかいでほしいわんね?』
コボルトが自慢げに体を押しつけてきた。
「どれどれ。くんくんくん」
『ふひふひ、くすぐったいわんね~』
「うん、いい匂いだな?」
『やったわん!』
元気に尻尾を振るコボルトを僕は撫でまくった。
「ノエル、お風呂入るよ」
「うん! すぐいく!」
ティルに言われて僕は風呂に向かう。
一緒に入るのはティルと父様、ガルガル。
あとは、ペロ、ペリオス、ペリーナと男の子たちとコボルトの半分だ。
「モラクスとモニファス、コカトリスたちは?」
ティルがそう尋ねると、
『どろあびでいい』
『砂浴びが』『いい』「ぴよよ」
「そっか。モラクスは?」
「も~……『はいる』」
少し迷った後、モラクスは一緒に入るといって付いてきた。
「無理はしなくていいからね。子猫たちは?」
「な?」「みゃ?」「にゃ?」
アオたちは「入るわけないだろ」と少し怒り気味だ。
「そっか、猫だものな。じゃあ、子猫たちは留守番していてくれ」
「るすばんたのむな?」
「わふわふ」
僕はアオたちを置いて脱衣所に入った。
服を脱ぎ始めて、ふと気づくとアオたちが足元にいた。
「む? 一緒に入る?」
「な?」「みゃ?」「にゃ?」
アオたちは「入るわけないだろ」と怒り気味に言う。
「そっか」
きっとさみしいのだろう。
「じゃあ、みててな?」
「な」「みゃ」「にゃ」
その間もティルは子供たちに脱衣所の説明をしている。
「まずはみんな服を脱ぎます」
「おおー」
「脱いだ服はかごにいれましょう」
「わかった!」
エルフの子たちはお風呂に入ったことがないので、説明しないといけないのだ。
お風呂場に入ってからも説明は続く。
「まずは体を洗ってからはいるんだよー」
「わかった!」
「石鹸をつかって……」
ティルと父様が、子供たちに体の洗い方を教えていく。
「せっけんは、ぬらしてからこするといいな?」
「ノエルくわしいね?」
「ちいさいころに……はいったことがあるからな?」
僕もみんなに体の洗い方を教えていく。
父様とティルが子供たちの体を洗ってあげているので、僕は自分で自分の体を洗う。
『きれいにするわんねー』
『かゆいところはありませんかわんねー』
「ぁぅぁぅ」「わふわふわふ」「も~~」
ガルガルとペロ、モラクスはコボルトたちに洗ってもらって気持ちよさそうにしている。
『のえるのあたまもあらってあげるわんねー』
「おおー、ありがとな?」
コボルトたちの手つきや優しくて、とても気持ちがよかった。
頭と背中を洗ってもらった後、
「次はノエルがあらってあげるな?」
『うれしいわん!』
コボルトのことを僕が洗う。
石鹸を付けて泡立てると、毛の根っこまで指を通して洗っていく。
「かゆいとこある?」
『そのあたりがきもちいいわん……』
「そっかそっか」
体を洗い終えると、ついに湯船だ。
ドボンと入ると、ちょうどいい温度で、全身が気持ちよかった。
「……気持ちが良いなぁ。ノエルはどうだ?」
湯船に入ってきた父様に聞かれた。
「うん。きもちがいいな? ……とてもいい」
「ゎぅ~」「ぁぅ~」「もぅ~」
ガルガルとペロもモラクスも気持ちが良さそうだ。
お風呂を堪能していると、
「なぁ?」「みゃあ?」「にゃあ?」
アオたちが湯船の近くまで来て「正気か?」と言ってくる。
「すごくきもちいのな? アオ、クロ、シロもはいる?」
「な」「みゃ」「にゃ」
アオたちは同時に「入るわけないだろ」と言う。
「そっか。気持ちいいのにな?」
「ふえー。きもちいいねー」
「そだねー」「なんか疲れがとれる」
初めてお風呂に入るエルフの子たちも気持ちいいと言っている。
「そうだ! 露天風呂もあったんだったな?」
「ぁぅぁぅ」
嬉しそうに「いこういこう」と言うガルガルと一緒に露天風呂に向かう。
すると、「あ、露天風呂あったんだった」とか言いながら皆がついてくる。
気持ちよすぎて忘れていたに違いない。
僕も忘れるところだった。
露天風呂もとても良かった。
夜の空に星と月が浮かんでおり、月明かりに照らされた、死の山が綺麗だった。
「景色が良いなぁ」
涼しい風が吹いている。
「きもちいいなー。しのやまがあっちでー、とうさまのいえはどっち?」
「あっちだよ」
父様はそう言って、抱っこして遠くを見せてくれた。
「おおー、とうさまの家はあっちかー」
人の住む街もあっちにあるのだろう。
「ノエル。そろそろ、人族に慣れたかな?」
「なれたかも?」
人族というか、エルフのみんなやティルたちにはだいぶ慣れたと思う。
「……そっか、一度、俺たちの家に来る?」
「そだな? じいさまとにいさまにもあいたいしなー」
「そっか、そろそろ一度戻ろうか」
「アオたちもいるから、ながいじかんはむりだけどな?」
「そうだね」
いつでも戻ってこられるから安心だ。
人族の街は少し怖いけど、楽しみでもあった。




