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転生幼子は生きのびたい  作者: えぞぎんぎつね


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42 魔法の免許

 露天風呂エリアに入ると、コボルトたちは嬉しそうに言う。


『ふゆ、さむいから、とびらをつけておいたわんね』

「おお、ありがとう。床は洗い場と同じかな?」

『そうだわん。ゆぶねもおなじだわんねー』

『でも、いわっぽさをのこしておいたわんね』


 露天風呂も広かった。ガルガルもよゆうで入れそうだ。


「いいね! ここに腰掛けてもいい感じだな」

『そうだわん!』


 ティルが湯船の縁に腰掛けて、外の景色を眺めている。

 僕も隣に座って眺めてみた。コボルトたちも嬉しそうに隣に座る。


「独特の景色だよなぁ」


 ティルがしみじみという。


「くさいけど、みてるだけならきれいだなー」

「本当にな」


 僕にとっては、腐界の景色は赤ちゃんの頃から見慣れている。

 でも、高い山の上から見下ろす腐界とはまた違った良さがあった。


 瘴気は臭いが見るだけなら綺麗なのだ。


「……あのやまが、しのやま?」


 僕は遠くの高い山を指さして尋ねた。


『そうだわん!』

「そっかー。ありがと」


 もうママは死の山にある巣に到着しているかもしれない。

 もしかしたら、こっちを見ているのかも。


 そんなことを考えていると、コボルトが言う。

『のえる、あっちにいるみんのむすめもみえるわんねー』

「いるみんのむすめたちは、きれいだな?」

『きれいだわんねー』


 瘴気を纏った腐界の魔樹も独特の雰囲気がある。

 遠くから見るだけなら綺麗にみえなくもない。


 だけど、それ以上に聖樹はなんとも言えないすごさがある。

 もしかしたら、そのすごさは神々しさとか言うものかもしれない。


「りっぱにそだつんだぞー、いるみんのむすめ」

『きっと育つわんね』

『そのうち、はたけとかもつくるわん』

「どんどん景色が良くなりそうだね。ありがとう」


 ティルがそういうと、コボルトたちは尻尾を振った。


『えへへへー。あ、せいれいのまほうのこうかもみてほしいわん!』

「あ、そっか。きょてんのそとからみたかんじにするのだものな?」

『そうだわん!』


 僕たちはコボルトたちに案内されて、露天風呂から外に出る。

 そして外から露天風呂の方を眺めてみた。


「おお、全く覗けないな。安心だ」

『そうだわん』


 コボルトたちは誇らしげだ。


 露天風呂の周囲にはコボルトたちが草木を植えてくれている。

 まだ植えたばかりなので、苗とか芽でしかなく、数センチしかない。


 だけど、外からみたら、見通せないほどびっしりと生えた森に見える。

 これでは覗くことはできない。


「でも、しょうきが、出てないようにみえるのな?」


 拠点の外から中を見たときは、魔樹や魔草が瘴気を出しているように見えていた。


『みためだけでも、くさそうだからわんねー』

「そうだな、臭そうだもんな」


 そういって、ティルはうんうんと頷くと、コボルトたちを撫でる。

 僕も撫でておいた。


「そだなー。でてなくても、くさそうだものな?」

「ああ、見た目だけでも臭そうだからな」


 そのとき、外から露天風呂の見え方をしっかり確認していた母様が言う。


「中からだと視線が素通しだから、覗こうとしてこっそり近づくこともできませんね」


 母様は「外からは全く見えませんし。完璧です」とうんうんと頷いている。


『さくもつくっておいたわんね』

『さくがあったら、森とまちがえてはいっちゃうこともないわんねー』

「えらいえらい。がんばったわね」


 自慢げなコボルトたちをリラと母様が撫でてあげている。


『やったわん!』


 撫でられるのが大好きなコボルトたちは尻尾を振って大喜びだ。


『はやくおゆをためてほしいわん』

「うん、任せて」


 一旦、みんなでお風呂場の中へと戻る。

 そして、ティルが湯船に魔法でお湯を注ぎ始めた。


「おお~、てぃる、はやいな? あったかい。みずまほうとひまほう?」


 やはりティルの魔法は凄い。

 魔法を二つ同時に使って、丁度良い温度のお湯を大量に出している。

 攻撃魔法で炎をぶつけたり、水をぶつけたりするよりずっと難しい。


「そうだよ。同時行使って奴だ。ノエルもやる? 練習になるよ」

「やる! ろてんぶろのほう、のえるがやるな?」


 僕は露天風呂の方へと走っていく。


「お願い。猫魔法なら簡単だろうけど、練習のために人族の魔法でやるといいよ。聖樹の枝も使わずにね」

「わかった!」


 聖樹の枝を使わずに、人族の魔法だけを使って露天風呂へお湯を注ぐ。


 ティルの魔法をよくよく観察して、水魔法と火魔法を同時に使ってお湯を出していった。


「おお、さすがノエル。一発で成功させるか」

「てぃるのをみたからな?」


 それでも、ティルよりはずっと遅い。


「いや、見ただけでは普通はできないよ。カトリーヌもそう思うだろう?」

「ええ、普通はできませんね。見ただけでできたら苦労はしません。凄いわ、ノエル」

「ノエルは凄いな! 才能にあふれている!」

「えへへへ」


 ティルと母様、それに父様にも褒められて、とても嬉しかった。


 嬉しくて照れてしまっても、油断しないように慎重にお湯を注ぎ続ける。

 少し油断するとぬるくなったり熱くなったりしてしまう。


 やっぱり難しい。たくさんお湯を出さないとだし、微調整も必要だ。


 魔法に集中しながら、ティルに尋ねた。


「……あのな? てぃる。きになったことがあるのな?」

「なに?」

「これってせいかつ魔法な? だからえいしょうしなくていいのな?」

「そうだね」


 猫魔法でもそうだ。

 生活魔法ではいちいち詠唱したりしない。


「ねこ魔法でもそうなのだけど……なんでせいかつ魔法はえいしょうしなくていいの?」

「……え、なんでだ? わからん。考えたことがなかった」


 ティルにもわからないことがあるらしい。意外だ。


「なあなあ、かあさまは?」

「私は詠唱するわ。普通は生活魔法でも詠唱するものよ」

「なー。ぶつりほうそくに反しているしなー? えいしょういるよね?」


 今まで聞いた理屈のとおりなら、母様の方が普通に思える。

 僕やティルの方が、普通じゃないのだと思う。


 ティルは知らなかったけど、もしかしたらリラなら知っているかもしれない。


 詠唱とは世界に許可を取るために必要なものだ。

 そして、世界とは何かというのは神とは何かに似ている気がする。


 神様に関することはリラが詳しいのだ。

 そう思ってリラをみると、ティルもリラを見ていた。


 考えることは一緒らしい。少し嬉しかった。


「りら、おしえてな?」「リラ、どうしてなんだ?」


 僕とティルが同時に尋ねると、リラはにこりと微笑んだ。


「二人とも、いい質問ね。だいぶ省略して簡単に説明するわね」

「うん。かんたんなのがいいな?」


 難しかったらどうせわからない気がする。


「まず、世界に許可を取って発動している点は戦闘魔法も生活魔法変わりないの」

「ほほう? じゃあどうして?」

「弱い魔法、つまり生活魔法は、最初にまとめて許可を取っておくことができるの」

「まとめて許可……ってどういうことだ?」

「まあ、免許みたいな物かしら。それを持っていれば使い放題」

「ほほう。つかいほうだい……」

「勅許魔法は、免許を取った上で申請、つまり詠唱して改めて許可を取る必要がある。でも戦闘魔法は免許があれば報告するだけでいい。人によっては一言だけの詠唱でもいい場合もある」


 どうやら戦闘魔法の上に勅許魔法というものがあるらしい。

 あとで、ティルに詳しく聞いてみよう。


「その免許ってどうやってとるんだ? とった覚えないんだが」

「のえるもないな?」

「ノエルは簡単。聖獣、いえ正確には聖者でもあるからね?」

「む?」


 たしかに、僕は半分聖獣なのだ。ママのお乳を飲んで育ったからね。


「聖獣も神獣も聖者も聖女も、生まれついての免許もち」


 逆にいえば、免許を持って生まれてくるものが、聖獣や聖者なのだという。

 生まれた後に聖獣や聖者になるものもいる。


 その場合は、何もしなくても神から聖獣用・聖者用免許をもらえるという。

 神から免許をもらった時に聖獣や聖者になるともいえるらしい。


 つまり、聖女のリラも免許をもっているようだ。


「じゃあ、俺は? 聖者じゃないんだけど……」

「師匠がさりげなくとらせたんでしょう。あの人ならそのぐらいやるわ」


 ティルに向かってリラは笑顔で言う。

 ティルの師匠は母様の師匠でもある。どうやら凄い人らしい。


「それにティルにもエルフの血が入っているし? エルフは特別な存在だから」

「なるほど~べんきょうになったな? ありがとう、リラ」

「そうだね。リラ、教えてくれてありがとう」


 僕とティルはお礼を言う。

 難しいから何となくしかわからなかった。


 でも、免許とかそういうものがあるって知れたのはよかった。

 魔法というのは奥が深い。


「気にしないで。私に答えられることなら、何でも聞いてね」


 そういうと、夜ご飯を作ると言ってリラは去って行った。


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