36 神代語のお勉強
次の日、朝ご飯の後、僕は聖樹のお世話をした。
それから、モニファスが授業をしてくれるというので、参加することにした。
モニファスの授業に参加するのはエルフの子供たちとガルガルとアオたちだ。
ミアも参加するらしい。
それに。授業に参加する僕を父様と母様が見守ってくれる。
『今日は文字を教える』
そういってモニファスが地面に蹄で字を書いていく。
「え? 神代語?」
なにやら母様が驚いている。
「しんだいご?」
「大昔に使われていた言葉ね。魔導師でも一部しか知らない言葉なの」
「ほえー。むずかしそうだな?」
すると、モニファスが言う。
『難しくはない。それに神代語を理解したら古代語も現代語も楽にわかるようになる』
「それは、そうですけど」
「かあさまも、しんだいご、よめない?」
「…………ノエルを見つける魔導具を作ったときに、師匠から習ったけど、まだ勉強中なの」
「ほえー」
つまり、神代語は魔導具作りにも役立つらしい。
「ノエル! しんだいごべんきょうしたい!」
『うん。ノエルならすぐにみにつく。みんなも』
「ミーシャもべんきょうする」「わたしも!」「がう」「なぁ」「みゃ」「にゃ」
ミーシャやガルガル、アオたちを含めた子供たちがやる気になった。
「あの、モニファス。大人ですが私も参加しても良いですか?」
『もちろん。カトリーヌも参加していくといい』
「私も」
『フィロも参加するといい』
そうして、モニファスの授業が始まった。
モニファスの説明はわかりやすくて面白かった。
『ノエル、難しい?』
「うん、むずかしい。でも昨日、ティルにおしえてもらった魔法陣とにているな?」
似ているというか共通するものがある気がする。
『するどい。神代語は神が使う言葉の簡略版、魔法陣にも通じる』
「ほえー」
『神代語を理解すると、計算もできるようになる』
「ほほう?」
『方程式は魔法陣にも通じる。そして魔法陣は魔導具にも通じるし魔法にも通じる』
「……なるほど?」
とにかく、いろんなことに役立つようだ。
勉強のやる気がどんどんでてきた。
「がんばるぞー」
『その意気』
僕たちが一生懸命勉強している間、
『パンの木をうえるわん』
『こっちにはごはんの木だわんねー』
コボルトたちが楽しそうに畑仕事をしている。
ティルはペロとモラクスと一緒に昨日の続きで魔法陣を描いている。
ティルの魔法陣を描くスピードは異常に速い。
あっという間に拠点内を魔法陣で埋め尽くしそうだった。
お昼頃になり、授業の途中でママが拠点へとやってきた。
今日もママは、見回りしていたジルカとペリオス、ペリーナと一緒だ。
いつも、途中で合流するようだ。
ママに駆け寄りたいが、まだ授業中なのでそうも行かない。
「な――」
「アオ、じゅぎょうちゅう」
兄として、走り出そうとしたアオを止める。
すると、追加でママの後ろから拠点内に誰かが入ってきた。知らない奴けど、悪い奴じゃない。
「き、気になる」
僕が思わず呟いたのと同時に、
「ぐぅぅぅぅ」
ミーシャのお腹が盛大になった。
「おなかすいちゃった。えへへ」
『…………今日はここまで』
モニファスは子供たち全員が集中できないと判断したらしい。
僕とガルガルアオたちは、ママと新入りが気になって仕方がない。
エルフの子たちはお腹が空いて勉強どころではない。
「「「「ありがとうございました!」」」」
「がうがう!」「な」「みゃ」「にゃ!」
みんなでお礼を言うと、僕とガルガルとアオたちは、ママのところに向かって走る。
エルフの子供たちはミアの指揮の下、お昼ご飯を作るようだ。
「ママ! おはよ! おお! にわとりがおる! しっぽがあるな?」
「がう? がうがう~」「なぁ」「みゃあ」「にゃ」
新しい奴は、二羽のにわとりと一羽のひよこにみえた。
でも、竜みたいな尻尾がある。
「みなおはよう。この者たちはコカトリスという聖獣なのだ」
「おおー、こかとりす。かっこいい。しっぽがかっこいいな?」
どうやらにわとりではなく、コカトリスらしい。
「ノエル! よろしくな?」
「がうがう」「ななぁ」「みゃみゃぁ」「にゃにゃぁ」
僕が挨拶すると、ガルガルたちも挨拶する。
『よろしく』『たのむ』「ぴよぴよ」
親のコカトリスははっきりと言葉を話した。
だけど、ひよこはガルガルみたいな感じで、何となく言いたいことが伝わってくる。
「ノエルの母カトリーヌです。よろしくおねがいします。コカトリスさん」
「ノエルの父のフィロだ。今後ともよろしく頼む」
『こちらこそ、我が子ともども』『よろしくたのむ』「ぴぃぴぃ」
挨拶を済ませるとママが言う。
「ノエル、勉強していたのではないのか? こちらに来て良いのか?」
「べんきょうはおわった! おひるだからな?」
「そうか。ならばよい。そなたたちはどんなことを教わったのだ?」
「わふわふ」「なぁなぁなぁ」「みゃあ~」「にゃにゃにゃ」
ガルガルと子猫たちは、教えてもらったことを一生懸命アピールしている。
「のえる、はやくも、すうじともじをますたーしたのな?」
「それは凄い。さすがノエルだ」
「がうがう!」「なぁ」「みゃ」「にゃ~」
ガルガルたちも負けじとマスターしたとアピールした。
「そうかそうか。じゃあ、これはなんと読む?」
するとママは爪で地面にノエル、ガルガル、アオ、クロ、シロと書いていく。
「シルヴァ、字がうまいな」
ママの字を見たティルが感心している。
「まあな。太古の昔に習ったのだ」
「習ったって誰に? 人族」
「どちらかというと……神族に近いであろうなぁ」
ママは遠い目をしていた。昔のことを思い出しているのだろう。
「神族? シルヴァは神族に師事したことがあるのか?」
「まあ、そんなことはどうでもよい。ガルガル、読めるか」
「がぅがぅ」
「おお、正解だ。アオは?」
「なぁなぁ」
そういって、ママは順番に読ませていく。
「おお、アオもクロもシロもちゃんと読めているではないか」
「なぁなぁ」「みゃあ~」「にゃっ」
「うむ。これほど習得が早いならば、我が教えてやるべきであったかも知れぬな」
ママはモニファスに礼を言わねばとぼそっと呟いた。
「なぁなぁ、ママはどうだった? まものふえた?」「わふわふ」「な~」「みゃ」「にゃ」
「落ち着くのだ。一斉に尋ねるでない。そうだな」
そして僕たちはママに昨日、ママの巣で起こったことを尋ねていく。
「魔物は落ち着いているぞ。安心するといい」
「いるみんのむすめたちは?」
「健康そのものだ。今朝も元気に魔物を捕まえて食べていたぞ」
「おお、たのもしい」
僕たちが話している間に、ティルはコカトリスを連れてミアたちのところに行った。
みんなに紹介するのだろう。
「なぁなぁ、コカトリスはこの拠点でくらすの?」
聞いてなかったので聞いておく。
「そうらしいぞ。元々魔王種との戦いで――」
コカトリス夫妻は、ジルカやペリオスペリーナ、モニファスと共に魔王種と戦っていたらしい。
コカトリス夫妻は、とても強い聖獣とのことだ。
魔王種を倒した後、産んでいた卵を保護するため、ジルカたちと別行動していたという。
「ここは瘴気がないゆえ、子供を育てるには最適なのだ」
「そっか、くさくないもんね」
「がうがう」
ガルガルも臭くないと言っている。
「そっかー。一緒にくらせるのかー」
コカトリス夫妻はふわふわだ。ひよこもとても綺麗だし、コカトリスよりもふわふわにみえる。
新しい仲間が増えて、ますます楽しくなりそうな気がした。




