表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無愛想な旦那様は、私の『耳』を溺愛しているようです 〜機密情報を囁くだけで、甘いお菓子と安全なベッドが手に入りました〜  作者: 河合ゆうじ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

227/230

第227話 山脈への切符

 折り畳んだ地図を革表紙の間に挟み直す。

 表紙を閉じ、金属の留め金を噛み合わせた。

 鞄の口を開き、その中にファイルを滑り込ませる。


 レオニスは布で拭き終えた銃の部品を組み立て直している。

 金属の溝が噛み合い、シリンダーがフレームに収まる音が鳴る。

 彼は立ち上がり、テーブルの上のトランクから紙幣の束を掴み出した。

 「調達に向かう」

 彼が扉の取っ手を押し下げ、廊下の空気が流れ込む。

 私も鞄を肩に掛け、彼の背中に続く。


 絨毯の敷かれた廊下を歩き、昇降機の箱に乗り込む。

 降下時の床からの振動を足の裏で受け止める。

 扉が開き、建物の外へ出る。

 海風が顔に当たり、コートの裾を揺らした。


 路面を歩く人々の靴音を背に、私たちは商店の並ぶ区画へ進む。

 衣服が吊るされた店舗の前に立つ。

 レオニスが店先の分厚い毛皮のコートを手に取る。

 生地の厚みと重量を確かめるように、指の腹で布地を擦る。

 「山脈の気候に耐える防寒具が必要だ」

 彼は自分の体格に合うものを選び、さらに私の方へ視線を向ける。

 私は毛足の長い外套の袖に腕を通した。

 布地の重みが肩にのしかかる。

 レオニスが店主に紙幣の束を渡す。

 紙が指で数えられる摩擦音が鳴る。


 次に私たちは駅の構内へ足を踏み入れた。

 ドーム状の屋根の下、蒸気機関の排気音が絶え間なく響いている。

 窓口のガラスの前に立つ。

 レオニスが紙幣を台の上に置き、山脈方面の路線の切符を要求する。

 駅員が紙幣を受け取り、硬い紙片を差し出した。

 レオニスがそれを受け取り、コートのポケットに入れる。


 私たちは改札を抜け、停車している客車へ向かう。

 指定された個室の扉を引き開ける。

 木製のパネルで囲まれた室内に、向かい合わせの長椅子が配置されている。

 レオニスが購入した防寒具の包みを長椅子の上に置き、私を促す。

 私は窓際の席に腰を下ろした。


 車輪が鉄のレールを擦る音が鳴り始め、車体が前後に揺れる。

 窓の外の景色が後方へと流れ出し、水上都市のコンクリートの壁が遠ざかっていく。


 私は鞄から再びファイルを取り出した。

 留め金を外し、ページをめくる。

 地図の描かれた紙の隣に綴じられた、輸送記録のページ。

 紙の表面に指を当て、目を閉じる。

 車輪の走行音を耳から排除し、紙の繊維に染み付いた音の断片を拾う。


 『次の輸送分だ。年齢の満たない個体を集めろ。山脈の施設からの要求だ』

 大人の男の声が低い反響音とともに再生される。

 『泣き声が漏れないように荷馬車の底に防音の布を張れ』

 布が引き裂かれる音、木箱が地面に置かれる音。


 私は目を開け、レオニスに視線を向ける。

 彼は長椅子に背中を預け、窓枠に視線を落としていた。

 「山脈の施設へ向けて、継続的に人間が運ばれているわ」

 私はファイルのページを指で弾く。

 「幼い人間ばかりを。輸送用の木箱の中に閉じ込めて」


 レオニスが視線を窓から外し、私の手元のファイルを見る。

 「目的地の拠点は、単なる研究施設ではないということか」

 「稼働中の労働施設か、あるいはそれ以上の規模の消費が行われている場所よ」

 私はファイルを閉じ、鞄に戻した。

 「請求先の黒幕は、私が過去にいた頃から変わらずに他人の資産と時間を奪い続けているわ。利子を上乗せする理由が増えた」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ