08 kissではない、キッスである。それは昭和のラッキー助平の巻
ごめんなさい。一年以上、放置してしまいました。
不定期になるけど、ちゃんと最後まで書きたいと思ってますm(_ _)m
稼いだお金は神官様に預けるの、その金額はちゃんと記録されていて、神殿を出る時の支度金の一部にしてくれるらしいわ。
「失礼します」
神官様のお部屋に行くと、笑顔で迎えてくれたわ。とっても優しい方なのよ。だけど、リリィはなんだか変なの。このまま、お金を渡すのが落ち着かない。
「あの、お金をお渡ししたいのですが」
「はい、お疲れ様でした」
「でも、その、あの……」
自分の気持ちが分からないなんて、初めてよ、どうしちゃったのかしら。
「ええと、これは、リリィが貰ったんですけど。リリィは、リリィは、その……途中で疲れて寝てしまって、リリィが寝ている間はジェニファーが頑張ってくれて、それで、だから、だから……」
だから、何なの?
うーんと、うーんと……ハッ!分かったわ!
「このお金の半分はジェニファーのお金です!」
ジェニファーが半分よけいにお仕事をしてくれたんだから、半分はリリィのお金ではないわ、ジェニファーのぶんよ。やっと、分かったわ。
「そうですか、わかりました。では、半分はジェニファーの給金として記録しておきますね」
「はい!」
リリィ、スッキリ!少しだけモヤモヤが晴れたおかげか、お仕事も捗る気がするわ!
それにしても、お仕事をする時って、髪の毛は邪魔ね。パパ譲りの金髪は大好きだけど、フワフワたれ下がってきて困っちゃう。
家を出る時に髪留めを持ってくれば良かったわ。お気に入りがいくつもあったのに。
困ったわ……なんて考えてたら、すぐに寝ちゃって、もう朝よ。解決策も思い浮かばない。
「あら」
隣のベットに綺麗な刺繍の入ったリボンが結ばれていたの。丁度良いわ。キュッと結んだら素敵なポニーテールの出来上がりよ。
リボンのおかげで髪が邪魔にならずにお仕事が出来るわ!
けれど、その日の夜、寝る前にジェニファーが自分のベッドの下に這いつくばっていたわ。何をしてるのかしら?
「ねぇ、ベットに結んであった私のリボン知らない?」
リボン?リボンなんて……あ、いけない、リリィが付けていたんだわ。でも、髪はいつも通りふんわり垂れ下がってる。
「おかしいわね、どこにいったのかしら?」
「リリィ、なんで、あなた、髪の毛をぐちゃぐちゃにしてるのよ?」
「だって、今朝、結んだはずなのよ」
「は?」
「え?」
ジェニファーに探してもらおうかしら。頭をひょいっとジェニファーに向けたの、そしたらね。
「人のものを無断で使うなんて信じられない!」
おっきな声で怒鳴られちゃったの。もう、耳がキーンってなっちゃったわ。文句を言おうとしたんだけど、ジェニファーは部屋から飛び出してしまったの。
「もう、なんなの!」
リリィ、ぷん!
「リリィちゃん、人のもの、かってにつかったら、ダメなんだよー」
だけど、一番小さい、4歳のメルが変なことを言い出したの。
「でも、他に髪を結べるものがなかったのよ」
「リリィちゃんだって、だれかがかってに、じぶんのものつかったらイヤでしょ?」
「リリィは自分の物なんてないわよ?」
小さい子って説明が上手じゃないから、よく分からないわ。困ってしまったら、ばあちゃんが、ゆっくりと立ち上がって、お隣の部屋に連れていかれたの。
「リリィちゃん、あのリボンはねぇ。ジェニファーのお父さんとお母さんが贈ってくれたものなのよ」
ジェニファーは神殿で暮らしているけど、孤児ではないの。パパとママは商人で長く行商の旅に出てるのですって。ジェニファーは成人前だから、旅には一緒に行かずにお留守番。
「中々会えなくてね、本当は寂しいのに、親のいない子もいるからって、みんなには見せないようにしてるのよ」
「じゃあ、会った時にまた買ってもらえるわね!」
そう言うと、おばあちゃんは困った顔をするの。
「リリィちゃんは、もし、ご両親からの贈り物が手元にあって、誰かが何も言わずに持って行ってしまって、失くしてしまっても平気かしら?」
「それは……」
今はパパやママとリリィを繋ぐものは何もない、でも、もし、ボタン1つでもあったら?それはリリィの宝物だわ!
「大変っ!」
リリィったら、ジェニファーの宝物を持ち出して、失くしてしまったのよ!
「見付けなきゃ!」
「リリィちゃん、お待ちなさいな。今はおよしなさい、リリィちゃん!」
おばあちゃんが呼び止めようとしていたけど、立ち止まってはいられないわ。
真っ暗な道をリリィは走ったわ。何にもみえない畑も森も真っ暗よ。
「ああん、これじゃあ、リボンを探せないわ……あら?」
回りを見回していると、ぼんやり光ってるものが見えるの。何かしら? 不思議に思って歩いていくと、光がこちらに近付いてくるわ。
「ドゥ」
「きぃやあぁぁーー!」
間近に現れたのは、ニヤニヤした小さなオジサンの顔。ドゥッキー・ドットよ!
「丁度良いわ! 手を貸して!」
「ドゥ!?」
良いことを思い付いたの。さっそく、ドゥッキー・ドットの頭を掴んだわ、逃げられないようにね。
発光するオジサンの顔は、とっても気持ち悪くて、思わず叫んでしまったけど、暗闇の中でリボンを探すのにとっても便利にちがいないわ。
小脇に抱えたら変な顔を見ないで済むしね。
「ドゥ! ドゥ! ドゥ!」
「もう、暴れないでちょうだいな」
ジタバタするから、ギュッと首を絞めて抑え付けちゃう。最近、一生懸命、お仕事してたから、リリィってば力持ちになったの。逃がさないんだから、ふふっ。
「リボン、リボン、リボンはどこかしら?」
「ドゥナドゥナドゥ〜ナドゥウ〜ナァ……」
何故か切ない声で鳴くドゥッキー・ドットを連れて、森をテクテク歩いていたら、小花ちゃん達がやってきたわ。
「ドゥッキー・ドットはどこだー?」
「さがせ、さがせー」
「あ、あそで光ってるよ!」
「リリィだ、リリィが捕まえてくれた!」
小花ちゃん達は逃げたドゥッキー・ドットを探していたみたい。だけど、事情を話したら、リボンが見つかるまで松明がわりにしていいって!
「みんなで、リボンを、見つけるぞー」
「おー!」
それに、探し物のお手伝いもしてくれるって、良い子達ばっかりだわ。
「ないわねぇ」
「リリィ、あそこにあるよ!」
一輪の小花ちゃんが葉を向けたのは高い木の枝に引っかかってるリボン。あんな高いところにあるなんて。
「うーんしょ、うーんしょ」
小花ちゃん達が引っ張っても、枝に絡みついて、中々取れないみたい。よぉし、こうなったら!
「リリィが登るわ」
「ええ!?」
「危ないよぉ」
「大丈夫なの?」
小花ちゃん達が心配してくれたけど、実はリリィは木登り得意なんだから。けど、ドゥッキー・ドットを捕まえたままじゃ登れないわ。かと言って、ポイと捨てちゃったら真っ暗になっちゃう。
「リリィ、コレを使いなよ!」
そう言って小花ちゃん達が持ってきてくれたのは、長い蔦よ。
リリィはそれを使ってドゥッキー・ドットを背中にくくり付けたの。もちろん、おんぶみたいにせずに、背中と背中を合わせたわ。
「ドゥしてこんな目に……」
振り向いたら光るオジサンの顔があるなんて、気持ち悪いものね!
「えいっ」
勢いよく木の幹にしがみつく。
それから滑るように手足を動かして、素早く登るのがリリィ流よ。
幼馴染のジミーも小さい頃「なんか、カサカサしてゴキブリみてぇ……いや、すげーよ、リリィ」って、褒めてくれてたわ。
「良かった! リボンは汚れていないわ……あら?」
木の枝でリボンを確認していたら、誰かが話す声が聞こえたわ。
「何故、王子たる私が夜中に見回りなんぞ、せねばならぬのだ」
「夜行性の獣が畑を荒らしちまうからだろ。自分が芋畑の支配者だっていうなら、責任を持てよ……ありゃ、リリィじゃないか。何やってるんだ、そんな所で」
お花さんと葉っぱのエリック様だわ。
「コレを探していたのー……あっ」
手に持っていたリボンを掲げて、ふりふりして見せたらバランスを崩しちゃったわ。リリィは必死に木の枝にしがみついたけど、リボンを持ってるから上手く支えられないの。
「やーん、落ちちゃう!」
「受け止めるんだ、エリック!」
「断る、私は王子だ。危険行為は下々に任せ、賞賛のみ受ける。それが麗しき王子エリック・フェアリンだああああ!」
「キャーッ!」
リリィは手を滑らせて真っ逆さま!
「きゃん!」
「うげっ!」
「ドゥッ!」
ゴンッ!て大きな音がしたわ。
だけど、不思議ね、地面に背中が叩きつけられたはずなのに、ちっとも痛くないの。
「キレイなお月様だわ」
それに目の前には、木々の隙間から美しい夜空が見えて、満月がリリィを見下ろしているの。なんてロマンティック。
「あーお嬢ちゃん」
「あら、お花さん」
お月見気分に浸ってたら、お花さんがリリィの顔を覗き込んできたの。何かしら、一緒にお月見したいのかしら。
「悪いがどいてやってくれないか?」
「あら、やだ。もしかして、リリィったら、お花さんを下敷きにしちゃってるのかしら?」
どうりで、木から落ちても痛くないはずだわ。
「いや、オイラは平気だけど、エリックとドゥッキー・ドットが無事じゃないんだ」
いっけなーい。ドゥッキー・ドットを背負ってることを忘れちゃってたわ。という事は、リリィはドゥッキー・ドットとエリック様をクッション代わりにしちゃったのね。
リリィってば、おっちょこちょいなんだから。
「てへっ」
ちょっぴり舌をだして、片目をつぶって、拳で頭をコッツン。
「……なるべく早めに退いてやってくれ」
起き上がると、地面に寝てるのエリック様は白目を剥いているわ。よほど、ビックリしたゃったのね。
「わた、私の私の唇が、オオ、オッサンに、オッサンに、オッサンに、オッサンに奪わ、うばうば」
でも、ちゃんとお話し出来るみたいだから、大丈夫ね。何言ってるか、よく分からないけど。
松明として頑張ってくれたドゥッキー・ドットも解いてあげましょ。
「ドゥべべべ、ドゥべべべ。ひドゥい目にあったニャァ」
大きな舌をベロンと出して、おかしな顔をしているわ。ぷぷぷ。もぉ、こんな時にまで笑わせようとするなんて、本当にドゥッキー・ドットは悪戯が好きなのね!
「やあね、二人とも様子が変よ! いったいぜんたい、どうしたの?」
「聞かないでやってくれ、リリィ。オイラも見なかった事にするから」
「えー? いいわ! じゃ、リリィ、急いで帰らなきゃいけないから。おやすみなさーい!」
早くジェニファーにリボンを返さなきゃ。急げ急げ〜!
夜空から落ちてきた妖精と王子様がキッスなんて、ロマンティックがつまってると思わないかね?令和の若者よ、昭和少女漫画のメルヘンを喰らうがいい。




