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05 素敵な王子様、可愛い妖精。そんなのただの固定観念さ!の巻

再び、リリィの一人称。


【ご注意】

念のため言っておきます。

少女漫画の世界ですよ!

「キャア!」


リリィは1人で馬に乗ったのは初めてだったの。ジョニーは一生懸命に走ってくれたけど、途中で振り落とされちゃった。


「いたぁい」


薄暗い森の中に取り残されてしまったの。とっても心細いわ。すると、突然暗闇の中から笑い声が聞こえたの!


「どぅひ、どぅひひひ、どぅひどぅひ」

「誰なの!」

「ドゥさ」

「ドゥさん!?って誰!?隠れてないで出てきなさい!」


人が馬に振り落とされたのを、こっそり笑ってるなんて失礼だわ。姿を現したのはリリィの膝くらいの背丈の人。つぎはぎだらけの服にトンガリ帽子。帽子の先にはボンボンが付いてる。子供かと思ったけど、顔はオジサン。


「ドゥはドゥッキー・ドット。おみゃあの味方さ」

「ドゥッキー・ドット!?」


驚いたわ、災いの妖精よ!

はっ!気が付いたわ。これまでの不幸の数々。きっと、この妖精のせいなんだってね!


「あなたね!リリィを酷い目に合わせているのは」


でも、ドゥッキー・ドットはリリィが、ぴっと指をさしても動じる事なく笑ってるの。


とっても嫌な感じ!

笑い方も変!


「おみゃあに起きた事はぜーんぶ、おみゃあのせいだろう。ドゥは見てたぜ、おみゃあが混乱をまきおこしてるのをにゃあ」


「ニャア」なんて言ってる。オジサンなの?猫なの?


「それに、ドゥはおみゃあの味方さ。親父とお袋と別れた後、あっという間に故郷に着いただろう?そりゃあ、ドゥの魔法さぁ」

「な、なんですって?」

「本当はにゃあ、おみゃあに祝福を与えてやりたかったんだけどにゃあ。邪魔が入ってしまったんだにゃあ」


ドゥッキー・ドットの祝福!?そんなの貰ったら悪い事が起きてしまいそう。


「絶対にいらないわ」

「そんなこと言うにゃよぉ。おみゃあはドゥの力を知ったらそんなこと言えなくなるよぉ。手始めにオージの所に連れてってやるよぉ……ほれ!」

「キャア!」


ドゥッキー・ドットがそう言うと、彼の周りから濁った煙が広がってリリィを包み込む。その煙はとっても……


「く、くっさ」


あまりの臭さにリリィは気を失ってしまったの。


「……う、ん?」


何だか眩しくて目が覚めたわ。空にはお日様が登り始めてる。夜明けね。


「なんて、キレイな太陽……」


キラキラ輝いていてとても素敵。まるでエリック様みたい。


「はぁ、貴方はどこにいるの?」


貴方のリリィはここにいるのよ。


リリィったら、畑の中で寝ちゃったんだわ。やっぱりドゥッキー・ドットは意地悪よ。こんな所にエリック様がいるはずないもの。


するとね、ザクッザクッて音が聞こえてきたの。振り向くと、リリィに背を向けた野良着を着た男の人がクワを振り上げて土を耕してたわ。


「まったく!何故、私がこんな事をせねばならぬのだ」


農夫の男の人はぶつぶつ言いながらも、せっせと畑を耕してる。ただ不思議なのは、男性なのに花の髪飾りを付けてるのよ。しかも、それは、とっても変わったデザインで、まるでニョキっと頭から花が生えてるみたいなの。


「ヘイヘイ、サボってるとまた飯抜きにされるぞ」

「貴様が黙ってれば済む事であろう!」

「お花は嘘付かないんだせ」

「貴様、それでも私の守護妖精か!」

「違うって言ってるだろ。オイラはお前のお目付役さぁ今日も一曲いってみようかあ!アユレディー!」

「頭の上で歌うなぁーーっ!」


ビックリだわ。その人は頭の上のお花と話しているの。


「あ、あの!」


思わず声をかけちゃった。気になるんですもの。


「頭にお花が咲いてますよ」

「……知っている」


こちらを向いた泥まみれの男の人は金髪の美しい顔立ちで……この人はっ!


「エリック様!」


リリィの王子様だわ!思わず彼の胸に飛び込もうとすると……


「きゃん!」


酷いの。エリック様は避けるように横に飛び退いたから、リリィは土の中にめり込んじゃう。お口の中に土が入っちゃった。ペペペ。


「ああん、どうして受け止めてくれないの?」

「知るか、不法侵入者め。恐れ多くも、ここは私の……ではなく、辺境伯家の管轄の芋畑であるぞ」

「エリック様!アタシです!リリィです!」

「私にはこの芋畑を耕すという責務がある。それ即ち、私がこの芋畑の支配者といっても過言ではない」

「もう一度、お会いしたかったの。だって、だってリリィは!リリィは!」


エリック様の頭のお花さんがゴホンと咳払いをしたの。何かしら。


「OKベイベー。話が噛み合ってないから、整理しようか」


お花さんはとっても聞き上手で、これまであった事をぜーんぶ話したわ。途中、エリック様が何か言いかけていたけど「人の話はちゃんと聞きなさい」って注意していたの。ふふ、2人は仲良しなのね。


「それで、お嬢ちゃんは王様に追放を取り消してもらうようエリックからも頼んでもらいたくて、ここに来たという訳か」

「そうなの!さあ、エリック様。リリィと一緒に行きましょう」

「断る。何故、私が貴様のために慈悲を請わねばならないのだ」

「うそよ!エリック様はカッコよくて素敵な王子様だから、そんな意地悪は言わないわ!」

「私は大陸一カッコよく素敵な王子である事は間違い!故に誰のためにも頭は下げぬ!それが王子だからだ!」


エリック様はフンとふんぞりかえる。


「大体、神事である“精霊の舞”を穢す輩など追放では手緩い。処刑が妥当だ」

「そう言えば、しょけーって何です?」

「斬首だ。首を斬るのだ」

「うそよ!エリック様はカッコよくて素敵な王子様だから、そんな意地悪は言わないわ!」

「あ、お嬢ちゃん、そんな事言うと話が巻き戻りそうだから止めような」


お花さんに止められてしまったわ。そうしたら、エリック様が持っていたクワを振り上げた。


「そもそも、私がこんな所に追いやられたのは貴様のせいではないか!この聖(クワ)エクスカリバーで天誅を……オギャ!」


お花さんの葉っぱが大きく広がってエリック様のホッペを叩いたわ。とても痛そう。


「お前がここに来たのは自分の行為のせいだ。それにエリック、お前にはお嬢ちゃんに罰を下す権限はないだろう」

「そう言えば、エリック様はどうしてここに?」


てっきりお城で優雅に暮らしていると思っていたわ。


「舞踏会の精霊の舞に王女も出演していただろ?こいつは王女の衣装を破ってダメにしたり、舞用の靴にマチ針を仕込んで、嫌がらせをしたのさ」


それは精霊王様に捧げる神事のぼーがい、つまり邪魔をする事につながるという事で、王様とお妃様から辺境で反省をしてくるよう言われてここに来たらしいわ。


それと、エリック様は反省するまで「王子権限(おーじけんげ)」をぜーんぶなしになってしまったから、誰かに命令したり、罰を与えることはできないらしいのだけど。


それでもエリック様が悪さをしないか心配した王女様が、精霊王様に頼んでエリック様を見張るためにお花さんを遣わしてもらったんですって。


「王女様って精霊王様とお友達なの?」

「王女は精霊王様から加護を与えられてるんだよ」

「まあー」


それにしてもショックだわ。王女様ってエリック様の妹でしょう。妹にそんな意地悪をするなんて。


「ヒドイわ!騙したのね!カッコよくて素敵な王子様だと思っていたのにっ」

「戯言を!私こそ、世界一カッコよくて素敵な王子であるぞ!」

「おい、エリック。肩にミミズがくっ付いてるぞ」


さっきクワを振り上げた時に付いていたミミズが落ちたのね。お花さんに指摘されたエリック様の顔はみるみる青くなって。


「ぎょああああ!」


野太い悲鳴を上げたわ。


「今すぐ取り除け!」

「でも、エリック様が動くから野良着の中に入り込んでしまいましたよ?」

「ぶぎぃいいいい!」


エリック様は慌てて上着を脱いだんだけど、ミミズは今度はズボンの中に入り込んでしまったの。


「びょぁああああ!」


そしてエリック様は下着まで全て脱いでしまったのよ。リリィはビックリして叫んでしまったわ。


「誰かーーっ!」


遠くの方から農夫の人達がトコトコとやってくる。


「お願い助けてーーっ!エリック様が大変で、変態なの!」

「ありゃあ。まーた、王子さん、ミミズに驚いたんかいな?」

「かわいそうに、お嬢ちゃん、ビックリしたなぁ」

「えーん、とってもバッチいの!」


農夫の人達に体にくっ付いたミミズを取ってもらったエリック様は「ふん、大儀であった」と言ってたわ。でも脱ぎ散らかした野良着が破けてしまって着れなくなってしまったの。


「たく、世話が焼けるな」


そしたら、お花さんが大きくした葉っぱを一枚もらっていたわ。


「ほら、使え」

「うむ」

「返さなくていいからな」


王子様って、リリィが思っていたのと全然違う!

もう一度言います。

少女漫画の世界ですよ!

一応、ファンタジック・ラブストーリーが原作だからジャンルを異世界恋愛に変更するか迷い中。


【ちょっと解説】

語尾に「にゃあ」と付ける小さいオッサン登場。おまけに一人称は「ドゥ」。このオッサンが出てくる前にフェアリープリンセス・リリィは打ち切りに合ったので、昭和少女達の前には現れていないので安心して下さい。


ちなみにメロディ先生は編集さんから猫型妖精にするように言われていましたが、断固拒否した結果。「にゃあ」と言うオッサンが誕生。

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掲載が続いていた場合 【お詫び】 ドゥッキー·ドットの喋り方はメロディ先生が猫語に近い表現にしただけです 決して名古屋弁を揶揄したものではなく、先生ご自身は名古屋が大好きです 何卒ご理解をお願いいたし…
漫画! あくまで漫画! だから! とはいえ···これは···なんともはや··· 絵が良かったのなら、ボツった理由はまさに読んで絵(字)の如し。 唯一の救いは、このオッサン出てくる前に打ち切りになっ…
聖鍬、妙に語感がよくてはまりそうです!クヮッ そして、葉っぱ一枚あればいい
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