第六話 冒険開始とふたりのファン
「リトルタウン」を出てから30分が経過した。
僕はシスターのことを忘れないよう、心に刻む。
「茶化されてたわけじゃなかったのか………」
「ん?何か言ったか?勇者よ。」
「……いや、こっちの話。
なんでもないから。」
「?
……そうか。」
おれだって、こっちでの初恋はシスターだ。
だからこそ、小さい頃から告白されたら茶化されてると思うだろフツー……
よし!帰ったら、想いを告げて結婚しよう!
そして、子供を産んでもらって、
師匠と一緒に可愛がって、3歳くらいで剣術を習わせるのもいいな。
『やー。』
『おいおい、パパに攻撃するなよー。』
『ふふっ……
やんちゃですね!昔の神童さんにそっくり。』
なんてな。ふふふふ………
「ぐふふふ………」にやにや
「おい勇者、顔が淫らになってるぞ。」
「なっ……
ブエルさん、そういう目で見てたんすか?きもっ!」
「いや、見ていないが。
私は女性しか愛さん。
………さっきからニヤニヤして、どうかしたのか?」
「いや、シスターにはずっと茶化されてると思ってたので。
だから、帰ったら僕も想いを告げて結婚しようと思って。
ああは言ったけど、やっぱり初恋ですし!こっちでの!」
「フッ、そうか。
告げられるといいな。その想い。」
「はい!あざっす!」
「勇者よ。
それは死亡フラグではないのか?
……と、われは思った。」
「いや、そんなわけない……よな?」くるっ…
「いや、私に訊かれても………
それよりどこへ向かっている?」
「とりあえず、師匠にもらった地図で………」びろっ
「ほう。地図があるのか。」
「ふむ。地図か。」
「これは市販のと違って、魔界エリアとかの方も載ってんだよな。
2人は覚えてるんすか?」
「「もちろん。」」
「われはこっちでお師匠により帝王学を習ったのでな。」
「私はこっちが生まれだからな。
「堕天使」の勇者やデーモンさまとは違って、子どもの頃から見てる。」
「じゃあ、残り2つはどーすっかなー……」
「「いや渡せよ!!」」
「いや、なんか渡すチャンスなくて……
サーセン!はいっ!」ぶんっ……ぶんっ!
「うおっ。」ひょい
「おっと。」ひょい
「翼くん、渡し方雑だな。」
「ごめんごめん。
師匠に似たのかな?」
「で、どこに向かう?」
「とりあえず「サイコー」に向かおうかな。」
「そんなところはないが……」
「あっ、サーセン。
「サイドコーナー」です。」
「いや略すの早いだろ。」
「……たしかに。
ちょっとうかれてるな勇者よ。」
「ごめんって。
いまからちゃんとするよ。
僕もベルフェゴールは倒したいし。そして結婚………
………はっ!」
「「来る!」」
「ん?どうかしたのか?」
「ブエルさん!上だ!」
「すまぬ、ブエル!
お前しか遠距離での戦闘術持ちがいないのでな!
撃ち落とせ!!」
「承りました!」シュン!……シュシュシュシュシュン!!
ヒュオオオオオ……………
「「「速い……!」」」
「すまない勇者。
申し訳ございません、デーモンさま。
着陸させるのが手一杯です……!」
「それでいい!
ひれ伏せさせろ!」
「やってみます!!
はああああ!!魔力弾!」シュッ!シュン!
どっ
どてっ
「よし!ありがとうございます!
あのー、僕峰打ちできないから、大地くん頼むわ。」
「了解した!」
シュン……!
「『魔力で強化』を脚だけにして高速移動か。」
「さすがです。元魔王さま。」
くるっ
「速い……!
さすがだ……」
「えっ?」
「勇者よ、戦闘中は常に目を魔力で強化しろ!
さっきそれをしないで動きが見えたのは、
無意識のうちにやってるからだ!多分な!」
「そうか!
あの漫画の「凝」みたいなもんか。」ググっ…
「本気を出すのはひとときのみだ。」
ドォン!!
「ぐべぇ!!」
「すげぇ威力だ……!」
「だが、絶命しないレベルで身体も砕け散っていないのは、
デーモンさまによる精密な魔力コントロールの賜物だ。
やはりデーモンさまは、魔王の器のお方……!」
「やい!魔物のお兄さんよ!
あんた、魔の方出身だろ?」
「おい勇者。
……よく考えてみたら、ただ優雅に飛んでただけのやつを
ただボコったみたいな可能性がないか?われら。」
((否定できない………!))
「それにわれもこやつの顔は覚えてないぞ?」
「うーん………
よし!ここは………」
「ここは?」
「謝ってみます。」
「……そうか。」
「すんません。
あのー、何してたんすか?あなた。」
「なんか職質する警官みたいになっているな……」
「ショクシツ?」
「……おれは、魔王になりたくて故郷を出たんです。
憧れの先代魔王さま、「デーモン」さんみたいになりたくて。」
「えっと………
デーモン、きみのファンだ。」
「でっ、デーモンさん!?」
「う、うむ。
殴ってしまいすまない。」
「いえ!逢えて光栄です!!
仲間になってもいいっすか?」
「仲間になりたがっている!
………いいかな?」
「勇者、貴様が決めろ。」
「わかった。
歓迎します!敵や悪者だと思ってすんませんした!」
「いえ!よろしくお願いします!」
「空中から探索できる要員が手に入ったのはラッキーだな。
お兄さん、飛び慣れてるんすか?」
「親父に習いました。
強さはすごい弱くて、自慢の親父です。」
「そうか。
まだ慣れていないけど、こっちだと弱いのが『誇り』なんだ……!」
「?
………どうかしましたか?」
「目はどれくらいいいんですか?」
「視力は5.0です。
まぁ、普通ですよね。」
「普通……!?」
「魔族からしたら、視力は6.0が並なんだ。」
「へー。」
「もっとも、動体視力は別だがな。」
「名前は?」
「『バット』です。」
「バットさんですか。」
「まんまだな。」
「ではバットの兄ちゃん、
飛行して敵が見えたら教えてください。」
「そんな大役を……!?
わかりました!勇者さん!」
「ああ。」
「それにあの速度、なかなかに手強かった。
私に本気を出させたのだからな。
誇って良いぞ。」
「ありがとうございます!ブエルさん!」
ヒュオオオオオッ…………
「あと歩いて10分くらいの距離に町発見!」
「了解!
やっぱり、空飛ぶのって気持ちいいんすか?」
「最初は寒いけど、慣れたら心地いい風、空気……
そして景色が広がってて綺麗なんです。
最初は怖かったけど、やっぱ好きなんですよ。飛ぶの。」
「そうなのか。
あんたは善人だな。」
「そうすか?
あっ!冒険者だ!数は1人!」
「冒険者?こんなところで?」
「2分も経たないうちに出会うでしょう。
とりあえず、おれは誰にも見えない距離まで飛びます!」
「ああ。すまない。」
「いえ!町で会いましょう!勇者さんご一行!」
「了解です!」
テクテク………
1分と少し経ったころ────
「あっ!あなたが勇者ですか?」
「ええ、そうです。」
「弱さには自信があるんです。
いまは1人ですが、いずれ勇者さんの強さになりたいと………
前任の魔王!?じゃあ本物!?」
「勇者よ、今度は貴様のファンのようだ。」
「えっと………
とりあえず、弟子になる?
技術を途絶えさせるなって、師匠に言われてるから。」
「あの預言者さまに!?
よろこんで弟子になります!頑張ります!」
「名前は?」
「非力です。」
「そんなに自分を大層に語るな。」
「いえ!名前ですよ!
キラキラネームなんで、恥ずかしいんですけど。」
「そうか?
きみは強くなれるぞ。僕が保証する!
魔法は?」
「魔力を他人に「10分の1」渡す、『シェア』が魔法です。
一応異質です。」
「ほう。
なかなか面白い魔法だな。」
「ですよね!
補助にぴったりだ。
そして僕の技術を覚えさせれば、かなり強い弱者になれるな!」
「そうですか!?
頑張ります!!」
「じゃあ、きみは何タイプ?」
「魔導士を志しています。」
「なら師匠はブエルさんだな!
そういや、「剣術」、「拳術」、「魔術」。
3つのタイプのエキスパートが揃っているなぁ。
遠中距離担当が増えてよかった!」
「ありがとうございます!
よろしくお願いします!
ブエル師匠!」
「師匠か……
いい響きだ。
私は厳しいぞ?」
「頑張ります!」
「コツは「一瞬だけ本気を出す」ことだ。」
「本気を……一瞬だけ?」
「まぁ、簡単に言えばそうだな。
それから─────……」
「ふふっ………」
「どうした?翼くん。」
「いや、仲間が増えるのっていい気分だなーってね。
ブエルさんもうれしそうだし。」
「だな。」
「絶対にベルフェゴールを倒そうね!」
「もちろん。」
「頑張れよ、非力。
修行はもう始まっているぞ。
…………なんてね。」
こうして、勇者ご一行は仲間を2人手に入れた!
町に着くのが楽しみだ!
(ブエルさんにだけど、)弟子も出来たし、気分は上々だ。
そして、最初の街「サイドコーナー」を目指す僕らだった。
異名:神の子→勇者 大林翼→神童 19(転生前)→9→17歳 男→男
最初に落ちてきた場所:リトルタウンの教会の目の前
所持魔法→予知 属性→異質
異世界転生者。魔法剣士。
「本気を出すのは一瞬だけだ。」というのが口癖。
数々の予知をする。(戦闘中も日常も予知するが、未だに使いこなせていない)
すべての攻撃を弱くした修行の結果、速さ以外は最弱になった。
魔力量は指導の4倍だが、常に魔法を使っているために実質は半分くらい(並)の量。
シスターはこっちでの初恋の相手だが、茶化されてると思って相手にしてなかった。
シスターに最後の告白を受けて、本気で愛されてると気づく。
故郷を出てから、シスター一筋になる。
一人称は「おれ」→「僕」(、たまに「おれ」)
所持魔法:2つ(現状)
予言→日常で常に発動。未来が視える。遠くの未来を視る。
予知→戦闘中に常に発動する。未来が視える。近い未来を視る。
魔力で強化→一瞬だけすべての魔力を使用すると決めて使う居合い斬り。
概念も気づかないほど一瞬だけ足と腕力を魔力で強化する凄技。
現状最速の技。師匠直伝の口癖とともに居合い斬りをする。
バット 19歳 男
所持魔法:獣化 属性→異質
記念すべき最初の仲間。
魔王「デーモン」のファンで、地図とは逆方向にある魔の世界出身の魔族。
弱いので、獣化できる時間は20時間くらい。(再使用のためのインターバルは5分くらい)
コウモリ化が一番好き。
名前は「飛べるように」という意を込めて親からつけられた。
主な仕事は空中での監視。
概念に対しての理解はあまりないという一般的な魔族。
一人称は「おれ」
所持魔法:2つ(現状)
コウモリ化→一番使っている。使い慣れている。
最高飛行速度は時速95キロ
ブエルでも撃ち落とせないほどに速い。
ライオン化→生きててあまり使っていない。
魔力を込めた爪は強力だが、
魔力で強化し過ぎてて弱体化してる。
(戦闘要因でないのでいいのか?)
非力 16歳 男
所持魔法:シェア 属性→異質
記念すべき2人目の仲間。
勇者「神童」のファンで、わざと負けて弟子になろうとしていたが、
神童からスカウトされたので、受け入れる。
だけど師匠はブエル。ブエル師匠と呼んでいる。
主な仕事は遠距離からの攻撃とサポート。
ただ、予知は魔力の消耗が少ないので、手持ち無沙汰になっている。
概念のことは噂で聞いた程度。
「魔力をしぼる」を覚えるとかなりの戦力になることが予想できる。
一人称は「ぼく」
所持魔法:3つ(現状)
シェア→10分の1から5分の1までの
自身の魔力を対象に分け与える。
与えすぎると魔力の影響で不調にできるが、
それをするには2分の1クラスの量を分けなければならない。
現段階では必要とする者はいない。
ロブ→シェアとは逆に魔力を吸う。
ただし、血管から吸う。(皮膚が裂けて吸収する。グロい。)
これは敵に使うのがいいが、逆に敵の魔力の精度が上がる為、
あまり使えない。
模倣→奪った魔力から魔法を解析し、コピーする。
ただし、魔力量は非力に依存しているため、
そこそこ強い程度。
仲間の能力や概念系とは相性がいいが、予知出来るのが仲間に2人いる為、
現段階ではコピーの対象がいない。