第五話 冒険のはじまりと告白
「よし。
おめぇらふたりの実力はほぼ同じだ。」
「……ってことは、どっちも最強クラスってこと?」
「ああ。」
「そうなのか。
まぁ、われは拳で勇者は剣。
リーチに分があるゆえ、勇者の方が一歩リードか。」
「デーモン……」
「ま、たいして変わんねぇけどな。
ふたりとブエルの3人で冒険しろ。
そしていずれは女の仲間を作れ。」
「えっ?女性を仲間にしてもいいんですか?」
「ああ。
ただし、ちゃんと節度はわきまえろよ。」
「うーん……
けどそれだと僕だけ彼女連れじゃないですか。」
「あ、たしかに。
………って、勇者の彼女なのか?
魔王にも恋人くらい、いてもよくないか?」
「ご安心下さい、デーモンさま。
恋人ならこの町でお作りになさればいいでしょう。
それに、女性を戦いに巻き込むのは私の主義じゃありません。」
「ブエルさんって、モテそうだな。」コソッ
「あいつはああ見えてめっちゃモテるぞ。」
「えー!ズルい!」
「だよなぁ!ひとりくらいわれに差し出……されても、
合意がないとなんかやる気にならないな。うん…………」
「へぇ、大地くんって意外とピュアなんだね。」
「話聞けバカども!!
つーか女の話じゃなくて、せめて冒険の話しやがれ!」
「「はいっ!」」
「とにかく!
冒険に出て仲間を増やしてもらう!」
「恋人は作ってもいいでしょうか?」
「いいぞ。
……でもお前、シスターと仲いいだろ。」
「?
………それがどうかしましたか?」
「翼くんは昔から鈍感だもんな。」
「え?シスターはお姉さんでしょ?
付き合ったら宗教上、僕も同じ宗教に……」
「バカ!この世界に宗教はねぇよ!」
「そうなんですか!?
でも、付き合ったらシスターじゃなくて
ただのお姉さんになるじゃないですか。
いま25くらいだし。」
「25………われと同じ歳だな。
だが、親友を好きな人を寝とるのは主義じゃないなぁ。」
「ご立派です。デーモンさま。」
「とにかく!
恋人は作りたきゃ作れ!!
ただし、悲しむ人は作るな!」
「「はいっ!」」
「承りました。」
「それと、技術的にはお前ら3人はこの世界でトップ。
特にバカ2人は最強だ。
並の相手には負けないだろう。だが……」
「『力をそう易々と見せるな。』ですね。」
「おおっ!
なんか格言みたいでかっこいいな!」
「そうだ。
だが、元魔王軍にならいいぞ。
倒して改心させるもよし。
ただし、悪いことをすると言うなら監視しろ。」
「とりあえず仲間にしろってことですか?」
「そうとも捉えられるな。」
「だが、われらの力を知っている者が
そう簡単にわれらを襲ってくると思えんな。」
「かもな。
でもおめぇらは予知できる。
常に気を引き締めておけ。」
「「はいっ!」」
「私はなにを?」
「……ブエルは改心させたやつらや悪い心のやつらを監視する係だ。
そして、最寄りの町に住まわせろ。」
「つまり、部下を改めて作れってことですね。」
「…………そうだな。」
「かしこまりました。」
「で、僕らは?」
「バカやる係……ってのは冗談で、
できるだけ悪者を倒して平和にしろ。
できるだけ人を助けるんだ。わかったな?」
「つまり、弱きをくじき!」
「強きを守れ!」
「「ってことですね!」」
「違う、逆だ。
………おめぇら息ぴったりだな。」
「「ええ。マブダチですから!」」ぐっ
「まぁ、なんでもいい。
人を助ければ、助けた数だけ人に好かれる。
その中から、戦いたいと思ってる連中をピックアップしろ。」
「でも、われらは予知ができる。
仲間はむしろ弱体化を産むのでは?」
「じゃあ弟子にしろ。」
「弟子ですか!?」
「われは1人弟子がいます。
まぁ、ブエルですが。」
「…………へっ。
強くなるというのはそういうことだ。」
「というと?」
「要するに、強さの秘訣を分けあたえろってこった。
弟子を作るのはそう悪りぃことばかりじゃねぇぞ。」
「まぁ、師匠もそういう時代があったんでしょうね。」
「ああ。
たくさんの弟子を作ってきた。
死んだやつも何人かいるがな。」
「師匠……!
やっぱり僕は、弟子なんていりません。」
「……なぜだ?」
「仲間が死ぬところを見るのはごめんだ。
僕は仲間の死ぬところなんて、見たくない。」
「なら仲間を死なせるやつになるな!」
「!」
「勇者よ、決断しろ。」
「デーモン……
でも、僕はいずれ仲間を失うということになりたくない。
師匠も、デーモンも、ブエルさんも死なせたくない。」
「大丈夫だ。
わたしには神童、お前がいる。
それにわたしも元勇者だしな。」
「そうだぞ。
それとわれら2人は魔族。
寿命はないし、魔力が回復すればキズも癒える。」
「そのとおり。
われらはあの魔の環境で育ち、人間から魔族へと変貌したのだ。」
「そうなんだ。魔族って凄いんだな……」
「はっきりと言うが、生命はいずれ尽きる。
早いか遅いかの違いだけだ。
この世に来た者なら、出来る限り2度目の人生を謳歌しろ。」
「ははは。
こっちで死んだら、むこうに転生しちゃったりして。」
「翼くん、そういうケースはありうるぞ。」
「マジで?」
「マジだ勇者よ。
私の部下にも転生者がいた。
38度転生し、仙人と呼ばれる者も世界にはいる。」
「その人はいま何を?」
「われの拾い主で、いまはご隠居中だ。
ま、魔の世界の指導どのだな。」
「すっげぇ。
よく生きていられるなぁ。」
「どうも、「生きること」より「生かすこと」に興味が……
というか、それが趣味らしい。」
「………まぁ、そういうことだ。
この世の天国はあっちで、あっちの天国はこっち。
そう言ってくる者も、わたしの弟子にはいたな。」
「じゃあ、リアルなろう系ってことですね。」
「知識だけだがな。
身体の感覚もリセットされるから、
大抵の場合は再現できないだろうよ。」
「ふーん。
……なんにせよ、死んでも安心ってことですね。」
「すげぇ痛いけどな。」
「よし!作ります、弟子!
そして、いつか生まれ変わったら、
弟子の弟子になります!
弟子のメビウスの輪状態も悪くなさそうだ。」
「ふっ、おもしれぇ。やってみろ。」
「はい!」
「じゃあ決意も出来たところで、そろそろ出発しろ。」
「はい!行ってきます。」
「神童さん!
いってらっしゃい!」
「シスター!
長旅になりますが、行ってきますね!」
「あの、帰ってきたら………その、お話が……」
「いまじゃダメですか?」
「へ?」
「いまでもいいんじゃ………」
ゴン!
「バカ!
ムードがねぇだろ!」
「ムード?関係ないですよ、そんなの。」
「翼くん。
われもいまのはデリカシーが欠けてると思う。」
「……じゃあ言います。
神童さん、好きです。
付き合ってください。」
「おおーっ!」
「勇者に言いましたね。」
「いや、わたしには結果が見えてる………
なんてバカ弟子だ……」
「ははは!
その冗談、半年に一度は言いますよね!
もう慣れちゃいました。」
ズコッ
「おいおい翼く……」
「しっ!まだ勇者のターンです。」
「………でも、いいかもな。」
「えっ?」
「シスターがもしおばあさんになっても気持ちが変わらなかったなら、
こっちの来世で逢いに行きます。」
「ふふっ、来世で……ですか。」
「はい!
なのでシスターは、うんと長生きしなくっちゃ!」
「ですね!
おばあちゃんになって、待ってます!」
「ふっ、漢になりやがって………」
「勇者よ、それは結婚するなということじゃ………」
「そうだよ?」
「そうだよって……」
「なんか無いの?
若返りの魔法とか薬とか!
あ!そうか!
ならシスターも、こっちの来世で会いましょう!」
「ふふっ。
神童さんなら、いいですよ。」
「………こっちで死んであっちでも死んで、
僕がおじいちゃんになって、シスターが女の子になって
逢いに来るのもいいですね!」
「そうね。」
「なんにせよ、逢いに行きます。何度でも。」
「はい。なら待ってます。何日も、幾度も。」
パチパチパチパチパチパチ…………
「………じゃあ、行ってきます!
きっと恋人は作りますけど、僕はシスターのことは忘れません!」
「ええ。
わたしは結婚しません。
心は神童さんのものです。」
「ははは!
さようなら、シスター!
また会いましょう!」
「はい!ご達者で!」
「なんて純愛なんだ。
デーモンさまもそう思うでしょう?」
「そうか?翼くん最低じゃないか?」
「ま、本人たちが満足してるならいいんじゃねぇか?」
「ではみなさん!行ってきます!」
「元気にやれよ!勇者ども!」
「はい、行ってきます!師匠!」
こうして、勇者一行の3人旅がいまはじまる。
異名:シスター 光 17→25歳 女
最初に生まれた場所:リトルタウン
所持魔法→回復 属性→補助
世界の平和を願うという仕事の「シスター」の家系に生まれた女の子。
神童が10歳の頃に恋して以来、半年に一度告白する羽目になる。
神童が好きだが、神童には恋人ができてもいいと思ってる。純情。
神童と「おばあさんになるまで生きてろ」と言われ、約束を守ることを決意する。
シスターの家系は皆結婚してもシスターとして扱われる。
一人称は「わたし」
所持魔法:1つ
治療→治癒する力を活性化させ倍増。
どんな疲れやキズも癒す。
ただし、治療を使いすぎると壊死する。実はこわい魔法?