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第四話 これからの世界と手合わせ

あれから数日が経過して、

町の人や元魔王軍の人たちも落ち着いてきた。



リトルタウン────


「……魔王さま。

そろそろ良いのではありませんか?」


「うむ。わかった。

それとわれはもう魔王ではない。

………今ごろ幹部と幹部候補たちが争っているようだ。」


「それより聞かせてください。

何がわかったの?大……デーモン!」


「うむ。

以前話したが、われの予知は声も聞こえるのだ。

そして視えてしまった。」


「そうなのか。

わたしの予言も声は聞こえねぇから、多分魔力量の違いだな。」


「そうだ。

われは「勇者」の3倍ある。

といっても、矮小なのに代わりないがな。」


「技は?

使用魔法を教えてよ!ダイモン!」


「訛ってるぞ。

それよりデーモンさま!」


「おっと、すまない。

視えた未来ではこうだ。

「ベルフェゴールさまが魔王に選ばれたぞ!」とな。」


「「ベルフェゴール?」」


「一体どんなやつなんだ?デーモン!」


「あぁ。

魔法は異質で、人の感情を操作する。」


「それだけ?」


「うむ。」


「バーカ、よく考えろ神童。

感情の操作ってことは、

過度なストレスを与えて自殺や自暴自棄を誘発させたり、

逆に心を折って屈服させられるってこったろ。」


「お察しの通りだ。指導どの。

やつは幹部だが、やる気がないのが特徴的だった。

だが、本気を出せばわれをも凌駕する。」


「デーモンはどうやって倒した?

もし拳を交えるならどう戦う?」


「うむ。

だがやつの魔法は、タイマンだと何の意味も持たぬ。」


「どういうことですか?デーモン。」


「やつの魔法は数が多いほど効力を増す。

一人なら本来の1倍。つまり、ニュートラルってわけだ。

だが、2人なら2倍!3人なら3倍!!

……と、人数毎に増えていく。」


「魔力量は?」


「われの2倍だ。」


「強さは?」


「魔法のチカラにのみ溺れた弱者だ。

武力はない。

だが、故に魔法は強力だ。」


「ふむ………

まぁ、僕ならコントロールされる前に倒せるか。」


「そうだ。

私も勇者に戦いを挑み敗れたが、肝はそこだ。

やつの魔法の弱点は、数と効果の表れる時間だ。」


「えっ!?なら効果は永続ですか?」


「いや、多分そうじゃねぇ。

それに魔法は魔力が尽きたら自動で効果が切れるからな。

神の魔法や予知といった概念系は除くが。」


「……そうなんだ。」


「効果が表れるのは、1体のみだと丸一日。

2体同時だと23時間半だ。

以降は30分ずつ短くなり………」


「要するに、猶予はねぇってことだろ?

1000体に使ってれば、考える間もなく一瞬なんだし。」


「いや、最短で10分だ。」


「10分!なら余裕じゃないか!」


「それに魔法に意識を割かねばならぬからな。

無防備になりやすいのだ。」


「なら楽勝じゃないの?」


「大方、幹部たちが時間稼ぎするんだろ。」


「そうです。

そして睡眠欲を増幅されたら終わりです。」


「え?全員に同じ魔法をかけるんじゃないのか!?」


「一番厄介なのはそこだ。

あやつは対象の魔法を使い分ける器用なやつでな。」


「すごい………」


「そうだ。

あいつはこの世界で最強の、最弱な魔王になるつもりだ。」


「そんなやつが何故魔王に!?

だって、普段だらけてたやつなんだろ!?」


「そこはわからなかった。

だが、やつの効果範囲は10キロだ。」


「は?無理ゲーじゃん。」


「効果範囲はな。

効果をかけるときは、半径2メートル。

つまり、神童に分がある。」


「やった。楽勝じゃん。」


「というか、この前始末しておけよ。」


「やつのテリトリーに入りたくなかった。

やつは魔法とは別に、バリアを出せる体質なんだ。」


「はぁ?やっぱり無理ゲ………」


「だから速度が大事だと言っているだろう!

…………貼るのに3分かかるらしい。

そして、魔法とは併用できない。」


「ふーん。

最弱でバリア持ち。

事実上の洗脳魔法、近づいたら10分後に負けか。

………五分五分だな。」


「われもそう見てる。

なんせ、勇者の技術は存じておらぬのでな。

予知でも攻撃タイミングが見えぬし……」


「じゃあ、手合わせしよう。」


「よいぞ。」



リトルタウン、闘技の場─────


「よし。

ここならいいだろう。」


「なんだなんだ?」

「勇者と元魔王が手合わせするってよ!」

「見たい見たい!」

「こっちだ!」


「ふむ。

いつの世も、人とは戦闘に興味を持つものなのだな。」


「そうだね、ダイ…モン!」


「だから、訛っておるぞ。」


「お願いします。」

「お願いします。」


シ─────ン………


「なんだぁ?」

「お互い、ただ突っ立ってるな………」

「パパ!あれなにしてるの?」


「……元魔王さまはどんな魔法を使う?」


「それは存じられておるだろう。予知だ。

だが、いつも魔王さまは言っておられた。」


「なにをだ?」


「『本気は一瞬だけ出せば良い』とな。」


「ってことは……」


「察しの通りだ。

あの方は技術のみで魔王になられた。」


「………驚いた。わたしの出した結論と同じとはな。」


「魔王さ………デーモンさま!

そろそろ民衆も飽き始めております!」


「わかった。

いくぞ!翼くん!!」


「あぁ!大地くん!!」


スチャッ……


ぐっ………


「互いに構えた!」


「ご覧あれ!かつて魔王だったお方の実力を!

そして拳技けんぎを!!」


「剣技じゃなくて、「拳」技!?」


「そうだ。

勇者も居合いの使い手。

勝負は一瞬だろう。」


ピクッ…


「動いた!」


スタスタスタ………


「本気を出すのは一瞬だけだ。」

「本気を出すのはひとときのみだ。」


「あれは!魔王さまの決め台詞!!」


「神童の決め台詞もだ!!

勝負は決したようだな。」


バタン


「いっっってぇ~~!!」


「こっちの台詞だ。

つーっ……おぉ~~!!!」


「決着!

共倒れだ!!」ビシッ


うおおおおおおおおおお!!!


「どっちも見えなかった!」

「すげぇ闘いだった!!」


「ねぇパパ、なんでふたりともうずくまってるの?」

「あれはね、どっちも攻撃を防げなかったんだ。

速すぎてね。」

「ふーん。」


「やるなぁ、大地くん。

まあ、僕は腕の魔力を抑え気味にしたけど。」


「お前もな。翼くん。

まあ、われも腰の魔力を抑えたが。」


「「むっ!」」


「じゃ、じゃあ僕は、ボロい剣を使ってるし!

僕の勝ちね!」


「いいや!われは腕力を鍛えてなかった。

われの勝ちだ。」


「だったら僕はね、朝ごはん食べてないんだ!

はい、僕の勝ち!」


「だったらわれだって、この仮面とかで呼吸しづらいし!

はい、われの勝ちな!」


「「ぐぬぬ………」」


「じゃあわかった!

僕は拳!大地くんはこの剣で戦ってみなよ!」


「いいだろう!!」


「……いい加減にしとけ、ふたりとも。

張り合うなんてかっこ悪りぃぞ。」


「デーモンさまもです。

失礼ながら、同感でございます。」


「ふん、命拾いしたな。勇者よ。」


「それはこっちの台詞だね。」


「「むっ……!」」


「その仮面叩っ斬るぞ!!?」


「こっちこそ、その鞘砕くぞ!」


「鞘と仮面は価値が違くない!?」


「いいや、同じだ!」


「やめろっての!」ゴンゴンっ


「いってぇ…!」

「ぐおお~!」


「しっかし、あんなに張り合う神童は初めて見たぜ。」


「私もでございます。

どうやら、元親友ですし……

似た者同士ってことですかね。」


「また今度やろうね!」


「ああ。そのときはしっかりと決着をつけよう。」


がしっ!ぎゅっ


うおおおおおおおおおおお!!!


「握手だ!」

「いい闘いだった!」

「魔王さーん!」

「勇者さまー!」


「ところで勇者よ。

あっちとこっちで恋人は作れたのか?」


「いいや。

デーモンは?」


「あんな環境でできるわけなかろう!」


「あ、たしかに。」


「あははは!!」

「ふはははは!!」


「じゃあ翼くんも、いつか彼女作ろうな!

おれも作るから!」ぐっ


「おれもだ!

大地くんより先に作ってやんよ!」ぐっ


拳を握り、互いの胸の前に突き出すおれたち。


それは、友情と決意の表れであり、

男同士の、ひさしぶりの対話を意味しているのかもしれない。



こうして僕らは、元魔王の実力を知り、

頼もしく思うのだった。

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