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異形の檻  作者: koenig
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目覚め

肌寒さを覚え、目を覚ます。

全身に倦怠感(けんたいかん)と痛みを覚え、身を起こす。

ここは一体どこだろうか?ひどく暗い部屋だ。

ろくに周りも見えやしない…


周囲を見渡している途中、違和感を覚える。これまでにない感覚。

そう、感覚。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


お尻…尾骶骨(びていこつ)あたりから感覚が伸びている。

それだけではない。

頭、耳、足までもが何かおかしい。

足など、立ち上がろうと(こころ)みてもうまく動かず立ち上がれない。


それに


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

脱ごうと試みても、肌に痛みが走るだけ。


……痛み?毛皮を引っ張って?

それに何だろう。この毛皮に触れているときの()()()()()()()()()()()


………うそだ

…………ありえない


この毛皮は自分自身から生えている。

実にばかばかしい話だ。

それなのに息遣いがどんどん荒くなる。

焦燥感にかられながら石畳(いしだたみ)でできた地面を這って進む。

ここはどこか部屋の一室なのだろうか?


やがて壁に行き当たる。

壁に沿い這いずると、光が少し漏れている個所を発見する。

扉だ。

なんでもいいこの状況を把握する術がほしい。

自分の馬鹿な妄想を払拭するための根拠がほしい。


願いにもにた焦りから、あわてて光りを反射させる雨漏(あまも)(たま)りへと視線をうつす。

そこに映っていたのは…

頭に羊のような巻角を生やし、獣の耳をつけた

異形となった自身の姿だった。

挿絵(By みてみん)

「いや…いやいやいやいや嫌!!」


顔だけではない。

腕は猿のように変貌し、脚は犬のような逆関節に、獅子の尾のようなものが視界の端で揺らめき、その感覚は自身の尾骶骨(びていこつ)へとつながっている。そして何より全身に生えた剛毛。

まさしく怪物。

この城塞都市の外にいるであろう怪物たちが人の形を模したならばまさしく今の自分のようではないのだろうか?


「なんでぇ…どうぢてぇ……」


涙交じりのか細い声が自分から漏れる。

間違いなく自身の口から、()()()()()()()()()()()


動揺していると、目が暗闇に慣れてきたのか、はたまたこの眼が夜目に効いているのかわからないが、部屋の全貌が明らかになってきた。


そこには


ルカと同じくらいの若い女性たちが自身と同じような獣の姿で横たわっているではないか。


「ひぃっ」


小さく悲鳴を上げたが、反応がない。

何か知っているかもしれない。そう思いいたり、起こそうと肩を揺さぶろうとするが…


「……冷たい」


どうやら死体のようだ。

どれも一応に同じ姿はなく、ほぼ犬と見分けのつかないものもいたが、共通して皆死んでいるのだ。


「ここ…もしかして死体処理場なの…?」


嫌な考えが浮かぶ。自分は死体と間違えられてここに放り込まれたのだろうか?


「うぅ…早くここを出よう…」


こんな身体になっていると気づいたせいか、急に腐臭を感じ、気持ち悪くなった。自身の犬のような足を使い、よたよたと立ち上がる。見ながら動かさないとすぐに転んでしまいそうだ。


壁に寄りかかり、廊下を歩いていると、ふと話し声が聞こえてきた。

どうやら目の前にある階段から聞こえてきているらしい。


「嘘…!」


とっさに身を隠す。

しばらくするとローブの男が独り言をブツブツとつぶやきながら降りてきた。

聞こえてきてからずいぶん時間がかかって降りてきたように感じる。どうやらこの身体は耳もいいようだ。


「どいつもこいつも失敗作ばかりだ。合成しても大半は死ぬし、運よく生きていても知性のまるでない獣にしかならん。」


ずいぶんと小声だが、十分に聞こえる。

挿絵(By みてみん)

「人口的な怪物発生の過程自体は間違っていないはず…クソッ警備の眼も厳しくなってきているというに!!」


話の内容からしてこの廊下の人物が自分をこんな姿に変えた元凶であろう

……許せない。

やっと夢にまでみた公務員となれ、これからやっと故郷の村へ…家族へ仕送りをして恩返しができるはずだったのに……それがこんなやつせいで…

殺してやりたい…

早く殺さないと……

早くあの(はらわた)を引きずりだしてアレの血と肉をすすらないと………



………一体何を考えた?

私は………今何を…?

まさか()()()()()()()()()()()()

そんなはずない!

がぶりを振る。

私は…自分はまだ人間のはず……

そう!ここがあの男のねぐらだというのならもしかしたら元に戻る方法もあるかもしれない!

いや、あるはず!あるにきまってる!

光明が見えたルカ・オルテガは男が下りてきた階段を駆け上がった。

人は窮地に陥り、焦るほど、自身の都合のいいように思考するものである。

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