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13・妹と感動の再会? ぶち壊します

 さらっと追放に応じた私に、王女は驚いて口を開けていた。


「もっと悔しがりなさい! 泣いて頭を下げ、これまでの非礼を詫びれば、今後の扱いを考慮してあげたっていいんですのよ!」

「なんで私がそんなことしなければいけないんですか? 普通に出て行きますよ」

「な……そ……、はっ! わかりましたわ、あなた、ここを出て、どこかの領地を乗っ取るつもりなのでしょう! そんなの許しませんわ! 追放先まで、私が指定して差し上げます! 偽聖女、あなたはこれから、魔獣の巣窟であるノアウィールの森で暮らすのよ!」

「はい、わかりました」


 あっさり了承すると、王女は「なあっ!?」と悔しそうだった。


 この王女には明かしていないが、聖女の力は、魔獣が入ってこないように結界を張るとか、人や動植物に加護を与え能力向上(ステータスアップ)させることもできるのだと、取説っぽいアレに書いてあった。


 私の聖女の力を使えば、生きていけるだろう。だとすれば、王宮でタダ飯食らいのような扱いを受けて(王都の人達を癒しまくったんだから、タダ飯食らいどころかめちゃくちゃ働いているはずだが)嫌な思いをするより、とっととここを離れて気楽に暮らした方がいい。


「偽聖女、あなたは無知だから何もわかっていないのね! ノアウィールの森は、我が国の最北、国境近くにある瘴気の発生源ですわ! 凶悪な魔獣がうじゃうじゃいますの! あなたなんかが行けば、すぐ魔獣の群れに食い殺されてしまうことでしょう。うふふ!」


「はい。別にそのノアウィールの森とやらで問題ないです」


(魔獣は倒せばいいし。昨日の街で傷も病も呪いも毒も溜まりまくったから、もうほぼ無敵よね、私。それに聖女の力で、瘴気の浄化もできるし結界も張れるし……全然オッケーでしょ)


 まあ、強制的に召喚されたのになんで追放されなきゃならないんだとは思うけど。でもこの王女は鬱陶しすぎるし、ずっとここにいて文句を言われ続けるくらいなら、喜んで出て行く。


 私が全く泣かないことも、怯えたり謝罪したりしないことも、どうやら王女にはかなり気に食わない様子だ。ぷるぷると身体を震わせ、顔を引きつらせている。


「ふ、ふん! 泣き叫んで許しを乞えばいいものを、強がって……! 本当に可愛げのない偽聖女ですわ。まあいいです。あなたの無残な死にざまを拝んでやるのが楽しみですわ!」

「まあ、勝手に楽しみにしていればいいですが。でも、聖女である私を追放してしまって、本当にいいんですね?」


(どう考えても、困るのは圧倒的にそっちだと思うんだけど)


 しかし王女は、「何て愚かなことを言っているのでしょう」みたいな感じでふんぞり返った。


「ふん。あなたは聖女ではなく、『偽聖女』でしょう? 聞いて驚きなさい……私は、あなたみたいに無礼なだけの役立たずじゃなく、真の聖女を召喚することに成功しましたの!」


 周囲の人々が、ザワッとどよめきの声を上げる。王子でさえ、大きく目を見開いていた。どうやら王女は、私を糾弾する場で初めて「真の聖女」とやらをお披露目したかったらしく、周りに隠していたらしい。


「さあ、出ていらっしゃい。私が召喚した、真の聖女!」


 すると――カツン、とヒールの音がして、広間の扉から、一人の女性が入ってきた。

 彼女は、とても豪勢なドレスを纏っている。ファンタジー風の姿だったので一瞬気付くのが遅れたけれど、その顔には、あまりにも見覚えがあった。


(アリサ……)


 美しく着飾ったアリサを見て、周囲の人々はザワザワとどよめいていた。私が召喚されたときよりも、目が輝いているように見える。


「あれが、真の聖女様……? なるほど確かに、偽聖女より美しいな」

「偽聖女は、召喚されたときから、王子殿下と王女殿下に口ごたえして、本当に反抗的だったからな。それに比べて真の聖女様は、とても淑やかそうに見えるが……」


(完全に、見た目に騙されている……)


 にこやかな微笑を浮かべるアリサに、皆が見惚れている。まだ力も使っていないのに、既に皆、アリサの方が真の聖女だと信じているようだ。


 唯一、王子だけが、何故か怪訝な顔で王女を見つめていた。


「イジャリーン、どういうことだ。聖女召喚の儀式は、そう簡単にできるものではないだろう」

「そう言われていましたわね。でも、やったらできたんですの! まあ、私だってフェンゼルの王女なのだから当然ですわよね。すごいでしょう? 私の手柄ですわ!」


 アリサは王子の姿を見て、ぱあっと顔を輝かせていた。

 王子、見た目だけならイケメンだからな。きっとアリサは、王子にロックオンして、王妃になって贅沢三昧の暮らしをしようとか考えているんだろう。


「王子様ですか? はじめまして、私、イジャリーン様に召喚していただいた、聖女のアリサと申します」

「は、はあ……」

「突然召喚されて驚きましたが、王子様のような方に出会えるなんて……運命かもしれませんね。ふふっ」

「は……? い、いや……」


 王子は困惑している様子で、なぜか私の方に視線を向けてくる。いやこっち見るな。


 するとその視線に気付いて、アリサも私の顔を見た。


「お姉ちゃん……」


 その言葉に、また周囲がざわめく。

 王女だけが、事前に私達の関係を知っていたようで、驚いた顔をしなかった。予想だけど、あの王女が「偽聖女のミアって奴がいるんですの」とか言ってアリサが「まあ! それは私の酷いお姉ちゃんです」とか言ったんだろう。


「お姉ちゃん……? 真の聖女様は、偽聖女の妹ということか?」

「姉妹だというのに、身も心も、アリサ様の方がお美しいな」


 周囲のそんな声を聞いて、アリサは満足そうにニコニコと笑い、無邪気を装って私に声をかけてくる。


「お姉ちゃん、突然消えちゃったから心配したんだよ……。まさか、異世界に来ていたなんて……無事でよかったぁ!」


 ……元の世界で、ずっと私を召使いみたいな扱いして、あまつさえ人の恋人を寝取って、私が突然倒れても、クスクスと笑うだけだったのに。


 人前ではこうして美しい聖女のような顔をして、「姉思いな妹」を演じるなんて。――本当に、相変わらずだこと。


「そうね、私も心配していたわ。アリサ、家事なんてできなくてずっと全部私に押しつけていたから、私がいなくなった後、どうせゴミ屋敷みたいな家で暮らしていたんでしょう。大丈夫だった?」

読んでくださってありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
感動の再会……な訳はないww
『我が国の最北』なら国内のままだから、よその国に 行った方がいいと思いますけどね。結果、プラスになっ たら嫌ですし。 王子は周囲の影響でダメ王子になっちゃったから、まだ 救いはあるような気がしますが、…
本音で話すようになった遠慮しない姉vs見た目だけのゴミクズ妹 バトル開始ィィィィィイ!!!
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