第40話 運命を変える出会い
前書きなし!
:第四十話:
運命を変える出会い
会議から二週間が経ったある日、私はいつものように外をぶらぶらしていた。
今日は特に仕事もないし久しぶりに暇を持て余しているのだ。
ここ二週間は剣術の指導や騎士団に関する仕事を毎日やっていたのでかなり疲れていたのだ。
今日という今日は羽根を伸ばそうと思い真新しい店
でも探しているその時だった。
「ユウキ様、ご報告があります」
私の名前を呼ぶ声が聞こえた。声の主の方に目を向ける、声の主はルキスだった。
何があったのだろうか、そう思い「どうしたの? ルキス」と応えた。
「騎士団の事について新たなご報告がございます」
ルキスはここ最近、騎士団の仕事を手伝ってくれている。修行と仕事を両立している彼女を見ていると素直に尊敬の念を抱く。
ユウマもルキスの仕事ぶりを高く評価していた。
「騎士団志願者総数の資料がこちらです。そしてこっちは騎士団に充てられる費用の合計表です」
細かく教えてくれるルキス、対する私は情報が頭にまったく入ってこない…。後で確認しておこっと…。
半ば理解を諦めた、その時だった。
背筋に氷の剣を刺したかの錯覚を覚えた。冷や汗が吹き出てきて、緊張が走った。
私の《冷気感知》に反応があったのだ。何かマズい事が起きていることだけは分かった。
反応があった場所は拠点の木材を取っていた頃、お世話になった森の奥だ。
私は反応の正体を探るため感知範囲を広げる。
片手でルキスの報告を遮り、集中する。ルキスも何かを察したようで私の事を静かに見ている。
「見つけた」
感知したのは戦闘だった。
二人の少女が"水結晶蟷螂"と戦っているのが感知できた。だが、状況がマズい。
少女の内一人は"水結晶蟷螂"の鋭い鎌に腹部と足を斬られており動けない状態でいる。
もう一人は戦えなくなった少女を必死に守るよう戦っていた。
このままじゃ二人共殺されてしまう、そうなる前に助けに行かなくてはならない。
「ルキス、怪我人が居るのを感知した、私は飛んで行く、ルキスは――――」
「怪我人の受け入れ準備をしときますね」
「任せたよ!」
翼を広げ、地面を蹴り、空へと舞った。
練習を重ねるに連れ、私は誰よりも翼を扱うのが上手くなっていた。
飛ぶことは走るよりも速く、一分もしないうちに目的地の上空に到達した。
下を見下ろせば"水結晶蟷螂"と一人の金髪の少女が戦っているのが目視できる。
さて、普通に登場するのは面白くないし、天空からカッコよく登場しちゃいますか!
そう思い私は"水結晶蟷螂"と"金髪の少女"の間に割って着地した。
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剣が地面を穿ち、砂埃が立つ。金髪の少女を守る形で私は"水結晶蟷螂"の前に立ちはだかる。
助けが来たことに安堵したのか金髪の少女は疲労と怪我の出血のせいか気を失ってしまった。
頭を打ってはいけない、と思い少女を支えるように抱く。とりあえず安全な所に寝かそう。
そう思い、動き出そうとした瞬間。
「グギュルガァァァア!!」
"水結晶蟷螂"の金属音に似た鳴き声が私の耳に響いた。
「うるさい」
私は地面から氷柱を生成し、それを"水結晶蟷螂"の腹部に直撃させた。
水結晶蟷螂は体勢を崩し、後ろに倒れた。
今のうちに安全な位置に少女を寝かせる。
私が来るまで戦っていた金髪の少女は右目に深い傷を負い、全身に切り傷が刻まれていた。
出血が酷かったので氷で傷口を凍結し止血した。
「さて、君の相手は私だよ」
鞘から抜き取った剣を水結晶蟷螂に向け宣言した。
水結晶蟷螂が私の首を狙い鎌を振るった。
それを華麗に避け、水結晶蟷螂の腕を斬り飛ばす。
水結晶蟷螂の悲鳴が響き渡る。私はそれに構わずさらなる連撃を叩き込む。
水結晶蟷螂の身体は鉄よりも硬く、そこらの剣では折れてしまうほどに硬い。
それでも私の剣《星空の剣》は水結晶蟷螂の硬い身体を豆腐の様に斬ることができる、このことからいかにコロンの鍛造技術が凄まじいか分かるだろう。
水結晶蟷螂は、昔ナツキと共に樹海を冒険していた際に出会った"巨大蟷螂"の上位種だ。
行動パターンはどちらも同じなので簡単に対処することができた。
私の横薙ぎの一撃が水結晶蟷螂の腹部に入る。悲痛の叫びを上げる水結晶蟷螂の頭部に狙いを定めて上から下へと叩き斬った。
頭部と体が分裂する、いくら上位種であっても生物である限り頭部を切断すれば生命活動は不可能になる。
剣を収め、振り返ろうとした時だった。私の《冷気感知》に反応があった。
またかよ…って思ってしまった。でも私に焦りは無い。
何故なら私の後を追ってきたルキスが《冷気感知》に反応した正体に攻撃していたからだ。
水結晶蟷螂はもう一匹いたのだ。もう一匹の水結晶蟷螂は怪我を負った二人の少女を殺そうとした。
それを私の後を付いて来たルキスが水結晶蟷螂の攻撃を防いだのだった。
「―――――《空晴流》"奥義:蒼空残影斬り"」
ルキスの奥義が華麗に炸裂し、水結晶蟷螂は悲鳴を発する事なく死んでいった。
斬り口に無駄な部分が無い。筋の通った素晴らしい一撃だった。
「凄いねルキス、《空晴流》もかなり様になってきたんじゃない?」
と先程の一撃を褒める。
「ありがとうございます。これも全てユウキ様の修行のお陰で御座います」
ルキスはここ最近、私とカナトの指導の元で《空晴流》の取得に勤しんでいた。
彼女の主な流派は《星剣流》だったが、《空晴流》もここ数日でかなり上達してきた。
ルキスの上達速度は異常なまでに速い。コウキやジンをも凌ぐ程だ。
「さて…この二人を街まで運ぼう」
「了解致しました」
目の前に血を流しながら横たわる二人をそれぞれ一人ずつ担いだ。
私は右目に傷を負った少女を担ぎ、ルキスは守られていた少女を担ぎ街へと戻った。
「ユウキ様!怪我人はこちらへ!」
私の名前を呼んだ者はこの街の医療担当のナタだ。
ナタの隣にはアリスが居た。どうやら、怪我人と聞いて駆けつけてくれたようだった。
二人の血を綺麗に拭き取り、清潔なベットに寝かせる。
包帯で止血したが切り傷からは未だに血が流れ続けていた。
「………"呪い"ですね…。しかもかなり強力…もしかして上位種の魔物による傷ですか?」
アリスがそう呟いていた。確かに"水結晶蟷螂"は上位の魔物だったから「そうだよ」と答えた。
その言葉を聞いたアリスの表情が曇った。
「不味いですね。この傷に掛かってある"呪い"がある限り、傷は塞がりません…。それに、頼みの綱だった回復ポーションも効果を出さないでしょう…」
「そ、そんな……」
悲痛の言葉を発したのはナタだった。私もアリスが居るから大丈夫、と思っていた。
そんなアリスが、お手上げと言えばお手上げなのだ。
「上位種の魔物は意思が強いです…死に際に負の"呪い"を掛けることが稀にあります…今回は…それです」
その言葉を聞いて私は、なんでもっと早く気づかなかったのだろう、と思った。
戦闘はもっと前から始まっていたはずだ。それに気づいて、もっと早く助けに入っていたら……。
「なんとか…助ける方法はないのか?」
私のせいでもある、そんな考えを心に置きながらアリスに問うた。
「呪いに対抗できる強い魔力か、"対魔法"の知識がある人くらい…」
「………この街に"対魔法"を使える人は…居ません」
ナタの無情な言葉が部屋に響き渡った。
「"対魔法"が使える人は事前に調査しています…対魔法は治療にも役に立ちますから……。対魔法は才能が大部分を占める魔法…この街に扱える人は…」
要するに居ない、と言うことだった。まだ人が少なく"回復魔法"も"対魔法"も扱えるような人が居ない。
このままじゃ目の前の少女二人は死んでしまう。
なんとか救えないか、方法を必死に探す。
そしてある一つの可能性を導き出した。
「…"召魔の宝玉"……あれで助かるかも…」
私の言葉に反応したのはアリスだった。
「ユウキさん!それをすれば下手すれば…人間じゃ無くなるかもなんですよっ?!」
アリスが珍しく声を荒げて私を問い詰めた。私も"私の意思"、で二人に"召魔の宝玉"で悪魔を宿そうなど考えていない。
まずは聞かなくちゃいけない、本人の意思を。
「……」
今にでも息絶えそうな少女に向けて助かるかも知れない方法を教える。
「意識はあるね、聞いて。君達の状態はかなり危ない、私達としては死んでほしくない…。でも確実に助ける方法がないの……"確実"を捨てるならまだ最終手段が…ある」
「……教え…て、その方法…を」
「私が持ってる"召魔の宝玉"を使い、君達二人の体に
"悪魔"を宿す。体の主導権が切り替わるかもしれない、
意思が悪魔の意思に上書きされるかもしれない……。
それでも確実に体の傷は癒えると思うよ」
「じ、自分じゃ…なくなる…かもって…ことね」
「うん、なんとか延命措置を施すから、ゆっくり―――」
「やる」
……え? ゆっくり決めてねって言おうとしたのに…、即答…。
無事な左目からは、固い意思が宿った瞳が私を見ていた。
「最…悪…私は、死んでもいい…でも、ヒロだけは……お願い…助けて…」
「どっちも助ける、だから安心して」
私はアリスから"召魔の宝玉"を貰い、二人に飲み込ませた。
ヒロと呼ばれた子は意識が無かったので、ちょっと強引に押し込んだ。
私と喋っていた子は抵抗する事なく宝玉を飲み込んだ。
次の瞬間、紫色の霧が彼女らの身体を包んだ。黒い何かが彼女達の体に入っていくのが見えた。
「……成功…したの?」
アリスがそう呟いた。ナタも心配そうな瞳で二人を見つめていた。
「…どうやら成功したようだね」
私がボソっと呟いた途端、二人の傷は見る見るうちに快癒していった。
邪悪な呪いが、悪魔の魔力で浄化されていった。血も止まり、二人は怪我をする前の状態に戻っていた。
「……ナタ、今日は私がこの二人を見ておくよ、ナタは帰って休んでおいていいよ」
「え…あ、でも…」
「何が起こるかわからない」
私のその一言でナタは顔を青褪めさせ「わかりました」と言った。
この二人に宿った悪魔が暴れ出したら、ナタは真っ先に殺されるであろう。そうならないように避難させたのだ。
「それじゃ、解散するとしますか!」
私の一言でルキスやナタは一礼し退室していった。
アリスだけが残っていた。アリスは私にこう言った。
「悪魔が顕現したら直ぐにクルセルナさんやカナトさんに連絡するようにしてくださいね? 戻って二人にも伝えておきますから」
その言葉を聞いた私は「肝に銘じておくよ、おつかれさん」と返した。
こうして医療室には私と悪魔が宿った少女二人が残ったのであった。
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…日が沈みかけ、一日が終わろうとしていた。
私もだんだんと眠たくなってきた……今にでもうたた寝しそう。
「うぅ…やっぱり座りながら寝るのは厳しいかな…ふかふかのベットで寝るべきだったかな――――…ん?」
独り言を呟いたその時、私はあることに気付いた。
金髪の少女の手が震えていることに。
「あれ…意識はないよね……なんで手が震えているんだろう…夢でも見てるのかな」
それが悪夢でないことを祈る。
悪魔を宿して精神状態が不安定だろう…。ゆっくり、安らかに眠れるようにと、彼女の手を握る。手はとても冷たかった。
「安心して、ゆっくり…おやすみ」
小さな子供を諭すように、優しく語り掛けた。目の前の少女が無事でありますように、悪夢を見ませんように、と願いながら。
程なくして震えは止まった。よかった、そう思いながら私も眠りについたのだった。
更新が遅れちゃいました…モウシワケナイ……。
気に入ってもらえたならなによりです! ^^
それではまた次回でお会いしましょう〜!
し〜ゆーあげいん!




