第23話 マンパワー
:第二十三話:
マンパワー
ジンとコウキ達が仲間になって三ヶ月が経過した。
予想通り、作業効率が大幅上昇し私達が待ち望んでいた下水道の設置が終わった。
《土魔法》が使える者たちがパイプを敷く溝を作り
パイプを通したあと埋め立て、魔法で強化。
これを重要施設建設予定地へと伸ばす、そうすることで新築した施設と下水道をすぐに繋げることができるのだ。
さてさて、ここ数ヵ月の建築の進捗はコウキ達のマンパワーにより新築物が一軒建っていた。
倉庫的な役割で果たそうかと思っていたのだが、今は
コウキやユウマ、カナト達の男組の寝所になっている
私は……拠点の中で寝ています。
はい、男の魂を持っているのに女の子たちと寝ています。
まあ、言ってしまえば拠点は女の寝所になっているのだ。
てか、男の魂で身体女って本当のオカマなんじゃ……?
いや…気にしないでおこう。
気にしたら負けだと自分に言い聞かせる
バレたら変態と罵られると思うけど、言わなければ
バレないだろう。
そう考えている内に私も、眠くなってきた……。
いつしか私は深い眠りに落ちたのだった。
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翌日、朝食を取っている時…私の《冷気感知》に反応があった。
即座に全員に指示を飛ばす。
「感知範囲に反応があった!非戦闘員は第一倉庫に避難!!レイバン、クルトは第一倉庫の警備につけ!」
私に名を呼ばれた、レイバンとクルトの二名はコウキ達のパーティーだった者達の中でもかなり腕の立つ者達だ。
今では彼らも私達と汗水垂らし一生懸命働いてくれてる。
「ユウキ!俺とジンはどうすればいい?」
「コウキ、ジンは私達三人の五名で現場に向かう。
……相手の数は三十くらい…戦いになることも想定しよう…」
「なんで戦いになることも想定するんだ?」
カナトの疑問に、私だけが知り得る情報を述べる。
「……亜人…なんだよ……」
いいたくなかった事を渋々言う私。
その一言で場が騒然となった。
「種族は?」
「分かるわけ無いでしょ……」
カナトは私を全知全能の神だと思っているのだろうか?存在は把握できるけど、種族までは流石にね?
わからんよと
「一言いうなら…」
「「「「言うなら?」」」」
「……ちょうゴツい…」
「「「「は?」」」」
筋肉の塊といっていいほどの体格。それだけは
《冷気感知》で分かる……。
は?なんて言われても……
「と、とりあえず現地に行こう…」
不安すぎる………果たして…筋肉モリモリの亜人さん達と戦って…勝てるのだろうか…?
まあ、いい…私も…フィジカルモンスターだから、きっと大丈夫だろう!
そんな不安な考えが過ぎるが、私達は全速力で亜人達の元へと向かうのであった。
現地に着いたが………私は…いや、私達はその光景に
驚き、絶句していた。
黒光りで腕が太く、私の頭をガシッと容易に摑めるであろうその手のひら…足は大根足じゃ言い表せ無いほどの太さ…勿論すべて筋肉という鎧で守られている。
至る所に筋肉が付いており、そこらへんの鎧よりも頑丈だと……思う。
体長は、三メートルほどの巨体に到っている者と二メートルの者達もいる。
だが、全員が二メートルを越しているのは確かだ。
「え〜っと…なんの用ですかね?」
そう尋ねると奥から、他とは一風変わった大男がやってきた。
腕を組み、仁王立ちになりこちらを見下すような目で見る。
「我等ッ!!誇り高き山の亜人族!お前等の主をだせぇいッ!」
山の亜人族…?なんじゃそりゃ
私が、山の亜人族という単語に聞き覚えがなく困っていると、ユウマが詳しく解説してくれた。
「山の亜人族とは、言わば亜人族の亜種だね。
元々、亜人族は再生能力があったり、魔力が人間とは比べ物にならないほど高い、そう言った者たちが亜人とみなされるんだ。
山の亜人族とは、魔力や再生能力を有しておらず
代わりに、異常なまでの筋力と体力を得た種族なんだ。」
ほほう、つまり…魔力はほぼなくて、その代わりに筋肉が以上発達した種族だとみて間違いなさそうだ。
見るからに、筋肉が刃を通さなさそうだ。
「ほほう、お前なかなかに詳しいな。そなたがここの主か?」
私のために、詳しく解説してくれたユウマが、主だと勘違いされている。
面白い。 面白いので、ここはユウマを主だとでちあげる。
「そうだ!この方がユウマ様だ!!平伏せ!」
「そうだぞ!!頭が高いぞ!」
ジンが乗っかってくれた、やりおる!
戸惑うユウマがカナトに助けを求めるが……
「ユウマ様。どうしたのでしょう?」
カナトもコッチ側だ。コウキは我関せず。
満更でもなさそうなユウマは、顔を赤くしながらも
亜人達に問いかける。
「え、えっと…なんで…こんな地に来たのですか…?
確か……亜人達の支配領域はここからかなり離れているでしょう?」
やはり、ユウマは博識だ。
亜人達の支配領域とやらまでも知っている様子。
私、頭良い人が好きなの…。
まあ、ユウマは恋愛対象じゃないけどねっ!
そういえば、私の恋愛対象はどっちだろう…?
男かな、いや…女? 女だろうな…。
元男だし…。そうなれば、いつか話さなければならないんだろうな…元男ってことを…。
……その時は、一人称を"僕"にしたほうが良いだろうか
正直、もう"私"で慣れてしまっている…
引かれないだろうか……心配だ…けど、今はそんな事を考えている暇はない。
どうやらユウマに聞き捨てならない単語が飛び交っている。
決闘だのこの地を頂くなど、到底許せるはずないんだよナァ?
まっぴらゴメンだね!!
決闘…と言っても、賭け事のようだ。
山の亜人達から三名。こちらから三名を出し
"腕相撲"をするといった、何とも不利な勝負を持ちかけられたようだ。
勝った方は、負けた方に命令できる。
「我等が勝ったら、この地を頂く!
なあに、命までは奪わんよ、命以外は頂くがな!
ガハハハ!!」
周りに亜人達の笑い声が鳴り響く。
うるさい。好き勝手に言ってくれてるが、こちらが勝った時は、どんな頼みでも引き受けてくれるのだろうか?
そう思い、聞いてみると答えは「もちろん」との事だ。
なら、迷うことはない。
「この勝負、受けて立つ」
ユウマではなく、私が宣言した。
「おい!ユウキ、何故受けるんだ!!」
コウキが叫ぶ。
「流石に、山の亜人達に腕相撲では勝てないよ……!」
無理だと言うカナト
何でも、山の亜人達は普通の人間の約数十倍の筋力を有する種族なのだそうだ。
えっと…それは、早く言ってほしかった。
数倍ってなんだよ、ヤバすぎだろ。
「こ、ここ、この話はナ―――」
ナシと言いかけた、ユウマ肩を掴む長さん。
勿論、ユウマの左肩には、絶望的なまでの力が流れ込んでいるだろう。
「そこの嬢ちゃんが受けて立つ、といっただろ?
聞こえなかったか?」
「………わかりました…受けて立ちます……」
半ば強制的に決められたこの勝負。
半分私のせいだ。
負けたら…国を興すどころか、奴隷になってしまうかもしれない。
挙句の果てには、殺されるかも…
なら、本気でやるしかないな!
そう思い、立候補しようとした瞬間。
「勝負には、俺とカナト、ユウマがでる」
と、コウキさんが宣言したのだ。
ふぁえ?ちょ、ちょいちょいちょい待ち。
え?なんて?私の名前呼ばれてないんですけど?
「え、…?私…は?」
「ユウキにこんなゴツい奴等とやらせてたまるか」
ちょっとまって、私以外が戦ったら負けるってエェッ!
そんな、心の叫びは、通じず……いつの間にか、決闘が始まっていた。
初戦 カナトVS山の亜人 ベギル
フィールドは、切り株の上。
ベギルのデカい手はカナトの手を覆い。
それでは、初め!
と、言われた途端カナトの手の甲は切り株にくっついていた。
ドカンッ! と大きな音を発しながら……
団体戦形式のようであり、ベギルは勝ち残り
こちら側からは、コウキが出た。
コウキは数秒持ちこたえたものの、カナトと同じく
すぐに切り株に手の甲がついた。
ラストは、ユウマ。
彼の筋力は、私達の中でも一番下。
舐めプしたベギルとやらの手を動かすこともできず
二人同様、甲が切り株についてしまった。
三人は、今にも泣きそうな顔をしている
顔をうつ伏せて、よく見えないが…
手も足も出ない現状に…悔しいのだろう。
ああ、終わった。
負けた。負けちゃったよ…。
いやいや!ここで諦めたら夢叶えられないんだよ!
そう思い、長に…どうしてもという気持で懇願する
「もう一度だけ!!チャンスをください!!」
「無理だ、我らの勝ちだ。今からは、我等がこの土地の支配者だ。」
「私が勝負します!」
「小娘がか?ガッハハハハッ!身の程を弁えろ!」
笑われた。なら、男の欲望を刺激するまでだ!
「私に…勝てたら…私の心も身体も…長さまのものです…。どうです?」
上目遣いで、可愛くお願いしてみる。
すこし抵抗を覚えるが……仕方無い…。
もし負けたら、性奴隷とかにされそうだけど……
その時は、その時だ!!
そう割に切り、そして大胆に発達気味のカラダを
これでもかと見せつけ、欲望を刺激する。
ピクリと、眉が動いた。
いける!身体を武器にするのは嫌だけど…いける!!
そう思い、胸をチラみせしようとし、ぺったんこだということを思い出し、赤面する。
「まあ、よかろう…土地も入り、いい妾も
手に入る。…勝負、受けて立とう!!」
よし、とりあえず…スタートラインに立った!
あとは、頑張るだけ。
「負けた時は、覚悟しろよ?せいぜい我と同胞を楽しませる女になれ。」
「じゃあ、そっちが負けたら労働力になれよ
それで許してあげる!どう?いいでしょ!
命までは取らないからさ!」
その言葉を聞いた長のこめかみにはビキビキと青筋が立っていた。
「今日は、我等が心ゆくまで堪能できそうではないかッ!!」
言葉とは裏腹に、怒りが見え隠れしている、気がする
「勝てたらね、負けたら…こっちの手駒だぜ?」
「面白い!お前の奴隷なら案外悪くないかもな!!」
あれ…?怒ってない…?もしくは、愉快なヤツと思っているのかな…?
先程まで三人相手に無双していた、ベギルの前に立つ
かなり、手が広い。
これだけで、相当なアドバンテージだとおもうね。
それでは、初め!!
と言った声が聞こえた瞬間、ものすごい力が入るのを感じだ。
が、私はそれを軽く上回りベギルとやらの腕を切り株に押し倒すことに見事成功した。
ドガアンッ! ととても大きな音が周りに響く。
唖然とする亜人たち、私の仲間もポカンと口を開けてる。
くっそおもしろい
笑いが込み上げてくるよ。
「何…を、した…?」
長が私に問いかける。
「弱っちぃな、こんなもの?大したこと…ないじゃん」
長がブチギレ「次の者ッ!!」と大音声で言放った。
次の相手は、さっきのやつよりも一回り大きい体格のヤツだ。
ちなみに、私はベギル、コイツ、そして最後のヤツを倒したら勝ちらしい。
簡単だ、一応私は転生するたびに前世の能力が引継がれているようだから。
それでは、始め!
声が聞こえると同時に物凄い、力が伝わってくる。
「おお凄い凄い」
と、言っておく。
煽りと受け取られたのかは分からんが、顔を真っ赤にして全力で倒そうとしてくる。
ビクともしないが…。
あれ、あれれ?少し傾いてきたぞ。
相当な力持ちのようで。
でも……
「勝てないよ!!」
その言葉が鳴り響くと同時に、切り株を崩しながら手の甲がめり込む。
「馬鹿なッ?!!」
「ザリフ様だぞ!!」
見た所、こいつ―――ザリフ、今先程の対戦者は副長だったようだ。
副長を倒したら、次は――――
「長、アンタ…やらないの?ビビってる?もしかして」
「次は我だ。望むところだッ!!」
切り株が崩れたから、代わりの台を私の魔法で作り出す。
「…………"始祖の術"……、お前…まさか始祖の?」
「うん、子孫らしい」
周りからは、馬鹿な、嘘だ…などの声があがっている。
家系魔法使えてんだから、信じて欲しい。
「始祖の家系であっても、剛力なことには説明がつかぬ…なぜ…我らを凌ぐ剛力なのだ…?」
転生者です、なんて言えないからここは黙っておく。
「奴隷になりたくないー」
「ハッ!…言いたくないのなら結構。…では!参るぞ!」
初め! という声と同時にお互いの力が入るのが分かる。
私も、長も譲らない。
私の仲間達と長の同胞は周りの空気を震わせるほどの
大声で応援している。
コイツの声援は置いといて、仲間が…応援してくれている……、それだけで頑張れる!!
私は、一瞬力をフッ、と抜く。
それに油断した長もほんの僅かの隙が生じる。
そこに全力の圧力をかけ、一気に押し倒す。
が、それを長は、必死の力で対抗する。
「我も…負けられぬッ!同胞の…為にもオォッ!!」
同胞……確か、亜人族の中でも、山の亜人達は差別されてきた過去があるのか。
亜人は、魔法や魔術絶対主義であり、それは海の亜人や空の亜人、森の亜人だってそうだ。
森や海は、互いに牽制しあって生きていた…が、遠い昔に絶滅したようだ。理由は、確か戦争だったはず…
空の亜人は、ながい歴史の果に、亜人から魔人へと進化したはず。
今は、魔法や魔術に長けた普通の亜人と山の亜人
それに、特殊な亜人がいるだけだ。
その中でも、魔に長けた亜人達は絶対的な力を有しており、魔法や魔術を使えない山の亜人を差別していると、聞いたことがあった。 思い出した。
空も海も魔も森も…全て、山を差別して…時には虐殺の歴史もあったハズだ。
同胞を守る…それは、差別から守るという事だろうか…?
わからない、けど…助けたい。
そんな理不尽な世界では生きていくこともできないじゃないか。そんな世界…は私は嫌いだ。
「差別の歴史が…あるんでしょ?」
「ッ?!……何故その事を?」
「歴史には詳しくてね…」
「そうか…お前も…山の亜人を…差別するか…?」
「しないよ」
「そうか…そうであるか…」
「差し出がましいが…私は、助けたい」
「嘘だな…」
言葉だけじゃない、なぜどうしたら説明できる?
あ、勝てばいいんだ。
そうと決まれば、もう迷いはない。
さっきから、長の目は…何かを必死で守る目だった。
そんな目を見た私は、少し戸惑った。
もう、迷わない……勝って…助ける。
全ての力を解き放った私は、長の腕を神速と言っても過言ではない速度で押し倒し、その衝撃で生成した氷の台は砕け散る。
長は、私を見上げ、どうして?といった顔で質問する。
「何故…最初から本気を出さなかった……。情けか?」
「違うよ」
「………なら、どうしてだッ!?」
怒りに身を任せて、私を殴ろうとする長を周りの亜人が止める。
「勝ったら、言うことを聞いてくれんだよね。」
仲間に諭され、落ち着いた長は、諦めたような目で
こちらを見る。
「好きにしろ……殺しても構わん…だが…どうか、同胞だけは―――」
「同胞も君も、私の仲間にならない?」
「――――――ッ?!」
驚き固まる長。
手を差し伸べる私。
「差別の歴史は、とっても辛いものだと思う。
私はわからないけど…、それでも…助けたい。
私達に勝負を仕掛けたのだって……仲間を守りたいからなんでしょ…?」
その言葉を聞いた長の目からは熱い涙がポタポタと溢れる。
どうして、こんな我等に…手を差し伸べてくれるのだ…
と、言いたげな表情である。
「そんな世界は…私も嫌い…。
今、世界にはいい国もあれば、悪い国もある…。
私はね、そんな…差別も貧困も争いもない国を作りたいんだ。」
「無謀だ………、無謀すぎるぞ…」
「無謀かもしれない。…でも私は進み続ける、仲間たちとともにだから、望みは、君に…いや、君達に!
仲間になって欲しい!」
長は、涙を拭き取り、こちらを見る。
とても素晴らしい表情だ。
頼もしくなっちゃうねっ!
「仲間……か…く…カカカッ……」
少し、かすれた笑い声が当たりに響いた。
「お主の名は?」
「ユウキ、よろしくね」
長は何かを決意した目で、私を見る。
その決意とは…いったい何なのだろうか。
だがこの後すぐに、判明することとなる。
「ユウキ……いや、ユウキ樣。我等一同…貴女様方に忠誠を誓う。何卒…受け取って下され……。」
決意―――長の決意、は忠誠だった。
こうして、私は…最強のマンパワーをてに入れたのであった。
誤字、感想などどんどん送っていただけると、幸いです!
もし、おかしな点や至らぬ点があれば指摘してくださると嬉しいです!!
それでは!また〜し〜ゆーあげいん!




