第13話 開放されし心
どうも、リウです!(❀´꒳`)
二度目の生完結編です!
楽しんできてください〜
:第十三話:
開放されし心
新米兵たちの視察から六ヶ月が経った。
今では、彼らも立派な騎士だ
特に、あの子…キルハ君は先輩騎士たちに一目置かれているのだそうだ。
さて、本題に移ろう…。
ここ数ヶ月で民度は全盛期と同じくらいに戻ってきた。
が、まだ全回復とは言えない。
反発してくる民達も未だいるのだ。
けれど、嬉しい出来事もあった
それは、金山の占領が無くなったことだ!
僕が現地に行って、交渉してみたところ条件付きで
開放してくれることになったのだ。
着実に、民度を戻せている以上…あとは信頼を守る事を徹底しなければ……
そう考えている内に時間は過ぎ……
もう昼になっていた。
――――すると…… コン、コン と扉から音がなった。
「どうぞ〜」僕がそう言うと、部屋に老人が入ってくる。その名は―――リーゲル。
僕に相談があるらしい…近うちにある"勲章授与式"
についての話だろう……
「すこし付いて来てくだされ……。」
と言うので、僕は頷き部屋を後にしたのだ。
僕の部屋をでて、すこし人気のない暗い廊下でリーゲルは足を止めた。
「この時を………どれ程…待ちわびたか……」
リーゲルがそう呟く。
「何を言ってるんですか?リーゲ――――」
僕の言葉は最後まで発せられなかった
何故なら、僕の左脇腹に激痛が奔ったからである。
目を向けるとそこには短刀が刺さっている…
もちろん刺したのはリーゲルだ。
「お前ら王族にッ!受けて来た仕打ち!!今でも忘れておらんぞオッ!!」
声を荒げるリーゲル……
僕は何のことか分からず、困惑する。
うっ……痛い…傷口を抑えているが……出血が止まらない…
リーゲルに目を向けてみると、とても邪悪な顔で
こちらを見ている……次の瞬間――――
ガッッ!! ゴッツ!!
僕の頭や腹を蹴ってくる。
クソッ………何なんだよ…この状況…。
腹の痛みで反撃することができない……
ふと頭を過るのは"死"だ。
このままいけば…出血死するであろう……
駄目だ…まだ…僕は…やる事が残ってる…。
"約束"だって……まだぁあ………く…クソッ!!……
せっかくの二度目の生……こんな…こんなとこで?!
死ぬ…のか……?嘘……だろ??
辺りを見回してみる、が周りに人はいない模様。
リーゲルはここぞとばかりに、僕を蹴る。
「ハァ…………、…ハァもういいであろう……ユウキ……
お主は良くやったぞ……あの状態から、よくここまで民度を回復したな……だか…ここで終わりだ…。
潔く………、ワシに王位を寄越せェエエイッ!!」
その顔が醜く歪むそれと同時に短刀が僕に迫る……
――――――その時だ。
ガキィインッ!!
甲高い音が鳴り響く。
それは鉄と鉄が弾き合う音。
(……?だ……誰…?)
その者は、黒髪で瞳の色は無色に近い色をしている。
少年――――名を、キルハと言う。
「リーゲル様…これは…いったいどう言う事でッ?!」
キルハが驚きそう尋ねると、リーゲルはキルハを睨む
それと同時に激しく激怒する。
「貴様アァ……………邪魔をしよってええぇッ!!」
そうリーゲルが吐き捨てると、怒りに身を任せ
短刀でキルハを刺そうとする。
が、それをキルハは剣でさばく、視察の時よりも
頼もしく…それでいて強くなっているのが、見て分かった。
リーゲルはキルハに腹を柄の部分で殴られうずくまり
両手を拘束された。
「クソッ…ガキがぁ………」
「な、……何故………賢明で賢く偉い貴方様が…このような……事を?」
キルハがそう尋ねると、リーゲルはキルハを睨む
キルハの質問には何も答えない様子だ。
た、助かった……キルハが来てくれなければ…死んでいた…
そうこうしている内に、王宮騎士が来る…騎士団も
集合しリーゲルを詰め所に連行していった。
一瞬、フレアがリーゲルを見て驚いていたのだが……
どうしてだったのだろう……。
リーゲルの顔は、よく見えなかったが一瞬チラリと見えた顔は、憎悪に塗れた顔であったのは確かだ。
僕の父…それに祖父が何をしたのかはわからない…
でも二度と…このような事が起こらないように…
賢臣達への対応を間違うまいと、そう心に誓った。
「キルハ…礼を言うよ…君がいなければ…僕は死んでいたからさ………ありがとう。」
そう言い、頭を下げる。
キルハ達の教官が誇らしそうにしている。
あんたの指導は、とても良いものだよ…と心の中で
言っておく。
キルハに話を聞くと、僕の部屋に向かう途中…
リーゲルに付いて行く僕が見えたのだそうだ。
跡を追うというのは失礼な行為なのだが、リーゲルの
様子がおかしかったので、失礼と思いつつも…跡を
追うことに決めたのだそうだ。
事実、その判断は間違っていなかった…
近いうちにある勲章授与式で、なにか送らないとな……。
僕の傷を見て、医療班が僕を医務室に運ぶ。
こうして、リーゲルの反乱は一人の騎士―――キルハによって防がれたのであった。
……が、まだ…王宮には、リーゲルの意思が残っている…
それは…フレアの―――"心を縛る魔法"。
この魔法が後に大きな混乱と悲しみを生むことになる
その事は、まだ…誰も知らない…。
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「い、いぃっ!!痛ったぁあい!」
そう情けない声の主は、僕だ。
傷口が、思ったよりも深くて…めちゃ痛ぁい…。
傷が勝手に治る能力とか…無いのかなぁ…
んな、便利な能力ないか…。
「王様……もうすこしの辛抱ですよッ…!」
キルハがそう宥めてくれる、心強い…
んじゃ、僕も頑張るとするか――――ってイテテテテ…
応急処置が終わり、傷口も縫い終わった。
後は、回復を待つのみ。
報告をベットで聞き、リーゲルの対応や今の状況を把握した。
一つ目、リーゲルは監獄に収容され裁判を待つ形となった。
収容前に、身体検査を行なった結果……病にかかっていることが判明。
長くても数ヶ月の命と分かった。
本人には伝えてない。
二つ目、今回の事件で僕を守ったキルハには国王を
守護する立場にある"近衛兵"の地位を与えるという
もの。
近衛兵とは、騎士団の一つ上にある上位組織だ。
騎士団は街の治安を守ったり戦時中、戦場に行き敵兵と戦う義務があるのだ。
近衛兵は違う。いつ如何なる時も、国王守護を優先
し国王の害となる者を一人残らず殲滅するのが目的となる。
キルハは今回の件で僕を守り、近衛兵に必要な存在と判断されたのだ。
近衛兵になるためには
国王を守った功績、剣の腕前、国への忠誠心。
この三つが必要だ。
キルハはこれを見事にクリアしたのだ。
騎士団から近衛兵になるというのは、とても名誉なことだ。
近頃にある、勲章授与式で近衛兵に任命をしようと思った。
この日を堺に、僕の側に侍女と近衛兵が一名
必ず付く、と言った決まりが出来たのであった。
こうして、リーゲルの反乱は一人の騎士によって、
終わりを迎えたのであった。
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「いい朝だ…」
リーゲルの反乱から一ヶ月が経ち、やっと落ち着いてきた。
勲章授与式は、リーゲルの反乱により先延ばしとなっていたのだが……今日この日、ようやく勲章授与式が
執り行えるのだ!
勲章授与式を行うのは、王宮の庭みたいな所だ。
今回は、民達の中からも勲章を授ける者がいるので
一般人も入ってくる。
気を引き締めねば……。
そう思い、僕は正装に着替えて勲章授与式の時間まで
自室で待とう、とそう思った。
「頑張らないとなぁ……」
キルハや他の者の喜ぶ顔を想像しながら
時間まであと………少し。
……………………
…………………
………………
……………
…………
………
……
…
フレアは困惑していた。
自分の…敬愛する主―――リーゲルが、自分に何も言わず
暴走したからである。
敬愛すべき、と思っているがそれはリーゲルの魔法のせいだ。
魔法の力でリーゲルに心酔させているだけなのであった。
フレアの真の心は魔法に縛られていて、リーゲルに操られている状態なのだ。
もしあの日、あの時…リーゲルに会わず魔法をかけられていなければ………真面目で優しい…そしてなんの邪心もない立派な槍兵が王のために戦っていたであろう。
が、それはもしもの話である。
リーゲルに操られていなければ王を…ユウキを暗殺しようとも思っていない、それ以前にこんなことしようとも思わないのである。
フレアは何も考えずに今日の勲章授与式でユウキを
殺そうと、そう決断する。
本当ならばもう暗殺は諦めるべき…なのだが…
リーゲルの魔法のせいで、フレアは冷静ではない。
(早く…早くっ!……王を……ユウキ様……を!!)
彼女の頭の中はそれでいっぱいだ。
リーゲルのために…。
もう彼は死にかけだというのに……。
そんな事も知らずに…。
本当のフレアの心は…"まだ"縛られている。
リーゲル陣営最強の槍兵が……
この先、とてつもない悲しみを生むことになる。
「これよりッ!!勲章授与式を執り行う!!」
司会進行の人が、高らかにそう宣言した。
僕が王座に座ると、民衆のざわめきがピタリ、と止む
さて、勲章授与式を行うか!
まずは、ここ最近頑張ってくれていた賢臣達に
新たな 位や土地、そしてお金だ。
そして、心を開いてくれた民。
民たちには謝罪と、今後ともとても良い暮らしを保証すると約束をした。
侍女達や騎士達にも給料やお礼を言った。
そして最後…キルハへのお礼とサプライズ……!
「キルハ殿!!前へ」
そう、司会進行の方に呼ばれ前へ出るキルハ
僕の目の前にキルハが立った瞬間――――
民衆の中から一人…ローブを深く被った者が
何かをこちらに向けている。
あれは……槍だ!!
どう見ても僕を狙って……って!―――いない?!
が、すぐに分かった……誰を狙っているかが。
狙われている者は、僕の横に居た、セラ。
「セラッ!!!」
そう声を上げたときにはもう槍は放たれていた、
その槍はセラ目掛けて一直線。
僕は王座から立って、セラを庇うように立った……
そして――――
グジャァリ………
肉が抉れる音と激痛が共にやって来る。
いつぞやの始祖の災厄に貫かれた時と同じ程の痛み……
結果的にセラは守れた、が僕の左胸に槍が貫通した。
左胸には、人の核…つまり心臓がある。
心臓が貫かれた人間などの命…もって数分という所であろう。
(い、いた、痛い…………しかも…熱い…?……心臓の…動きが感じられない……ッ!?)
僕は状況が理解できず、目を白黒させる…が自分の胸に刺さる槍を見て、全てを悟る。
(ああ…また…また、なのか…)
思い出すのは、前世…一度目の生の最期だ。
(せっかくの…もう一度のチャンス…棒にふるって…しまったのか……………)
何か大事な事を忘れているような……
何だったっけ…?
そう思っていると、セラとキルハが泣きながら僕の名前を叫んでいる。
「ユウキ様ッ!!………ユウキ様ッ!!!」
もう声も出せない……だけ…ど…まだ、キルハに伝えて……ない!!
そう思い、力を振り絞り…キルハに言う。
「キ、…キル…ハ……君…を…、近衛…兵…に…任命………す…る……」
「近衛……兵…?な…何故……?何故……貴方様を…守れ…守れなかった………どうして……」
そう呟いているキルハにとびっきりの笑顔を作り、
こう言う。
「リーゲ……ル…から…助け…て……、くれた、…じゃ…、な、い…か……だから、…これから先…絶対に………!王族を守ってあ…、あげて…!あげてくれ…!」
僕の事は気にするな。これから先、二度とこんな事にならないよう……よろしく頼む。
そう言い遺し…今度は、セラに顔を向ける。
「君が……次代の王だ……、セラ…君になら……任せ…ら…れる………僕がやり遺したこと……国のこ……こと…………」
よろしく頼む。
と言って、僕の意識は掠れてゆく…。
昔、セラの事をすこし調べ、実家が元太公だということが分かったのだ。
なので、セラなら任せられるとそう思ったのだ。
………跡継ぎは作る気にならなかった……
なので、あの二人なら大丈夫であろう。
いつか、立派な………くに…国に……な…なるはず…だ…からっ!!!…絶対に……
そう思ったときに僕の頬に伝わる何かが流れ落ちたのが、感じ取れた。
こうして―――――二度目の生…金の王国で、王としての
責務を全うした、僕…ユウキはその二度目の人生に
幕を閉じたのであった……………。
フレアが、槍を王に投げた瞬間…牢獄に居たリーゲルが
ユウキを殺す前、仕込んでおいた自殺魔法で…生涯を断った。
フレアの心から何かが砕け散る音が、きこえる。
そして、フレアの心を縛っていたリーゲルの魔法
《催眠魅了》が解け、フレアは術にかかる前の
純粋な心を取り戻したのだ。
が、それは時既に遅し…投げた瞬間自分が何をしたのかが分からなかった。
「え……?な、いま…なに…を?何をした…の?」
記憶はあるが、自分の意思で槍を投げたか…そう言われると
いいえ。
としか言えない。
リーゲルの支配から解き放たれるタイミングが悪すぎた……。
もし、もう少しだけ…リーゲルの死が早かったのならば………フレアは我に返って、ユウキは死なずに済んでいたであろう。
「な…なん…、て…事……しちゃった、ぁあ、あぁ……っ」
我に返って、今までの事を思い返す。
最悪だ。
と、フレアそう思う。
そして数メートルあった距離を一瞬にして詰めたキルハに、こう質問される。
「何で………君…が…そんなコト……するんだよ………。」
フレアは驚きその者の顔を見る。
キルハの顔は、リーゲルと会った時…リーゲルによって引き剥がされた…昔の親友とそっくりだ。
その瞬間思い出す。昔の記憶や…出来事…リーゲルに支配されていた記憶も全て…。
「も…もしかして……キ―――――」
言葉は最後まで言えない、数名の騎士によって拘束されてしまったからである。
(ああ……馬鹿……だ…。私……今で…ずっと……、操られてたなんて…。)
これから先、フレアはもしかすると終身刑や最悪の場合死刑になるかもしれない。
これもすべて、リーゲルと会わなかったら無かった事である。
久しぶりに会えた友達と、昔話することも出来ず…
これから先、…自分がどうなるのか…それも分からない
人々の罵声や罵倒が鳴り響く。
その場を後に…フレアは連行されて行く…。
王国最強の騎士兵……。
フレアは邪悪なリーゲルによって、生きていたはずの
人生とは違う、最悪な人生を歩まされたのであった。
この事件は後世にも語り継がれることになる……。
偉大な王と最強の槍兵
それと、一人の新米騎士の話が。
"何年も、何百年も…語り継がれる"ことに……なる。
更新が遅れてしまい申しわけ無い…。
誤字報告や感想ドンドンください!
では、また〜し〜ゆーあげいん!