第09話 クルガの町防衛戦2
○o。.:お知らせ:.。o○ 変更点
ビルディッグ→ビルディック
その他誤字など。
お知らせ終わり。
楽しんでいってください!!(❀´꒳`)
:第九話:
クルガの町防衛戦2
ユウキとアルトは魔物達の集団の中に潜んでいる、
グレートソードをもったコブリンに向かって全力で疾走する。それを追いかけるスギさん
ユウキとアルトはグレートソードをもったゴブリンの
500m前まで来た。
「―――ッ?!君達!?遊撃部隊が何故ここにいる!」
そう騎士に問われた。アルトが
「あの、グレートソードを持った奴を殺しに行くんです!!通してください!!」
「遊撃部隊の仕事は我等前線部隊が仕留め損なった
魔物を駆逐するのが役目であろうッ!」
と騎士さんが語勢を強くし言い張ったので。アルトも
「アイツらを殺すのに時間をかけてしまったら!
前線部隊は崩壊し………前滅となるんですよ…ッ!?」
「それは我々とても知っている!だからビコッツ副団長とクルガ町傭兵団団長のリン殿が三体のうち一体を足止めしておられるではないかっ!!」
それは僕にだって見えていた、僕の視界の先に
斧を持ったデカめのコブリン相手に二人三脚で相手取っているのだ。
ビコッツさんが盾で斧を弾き…リンさんがナイフで関節部分や急所を突く。
このやり方で三体のうち一体を足止めすることに成功しているのだ。がその個体には"自己再生"能力があり
三十秒もすれば傷は完治するのである……。
勝つ方法はそれすなわち―――一撃で首を斬る だ。
しかしビコッツさんが守りに徹底しているせいか、攻撃に出ることが出来なくなっている…。このままでは
敗北は必然かと思われる。
その前に―――――
「その前に…!!僕とユウキが…!あのグレートソードを持ったゴブリンを始末して、二人の加勢をするんです!!!」
とアルトは力強く、言い放った。
「き、君たちが……シルクスの町の青年剣士……
ユウキとアルトなの…か?」
騎士さんが驚いた様子で僕たちを見る。
実は、僕とアルト………結構有名なのだ。
シルクスの町で魔物を殺す内に、ドプロ町やクルガの町までその武勇が伝わっていたのだ。
「……よかろう…君達二人の加勢を受け入れる……………
が、危なくなったらすぐに退却するように…」
と騎士さんが言った…瞬間
「「ありがとうございます!!」」
と言って僕たちは、三体のうち一体の…
グレートソードをもったゴブリンに再度疾走していくのであった………………。
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「き、騎士さんっ!!……あの二人を連れ戻させてください!!」
とスギさんが勢い良く尋ねる。それを受けた騎士さんが、こう言う。
「あの二人には、危なくなったら帰ってこい、と伝えてあるので大丈夫ですよ…もし逃げれそうになかったら私が行きます。行かせた私が責任を取らなければなりませんのでね………」
と言って苦笑いする。
スギさんは「危なくなったら、自分も一緒に行くっすよ……」
と言って笑い返す…………。
騎士さんは―――危なくなることがない事を、祈っておきます…
と呟いた。
戦場に漂う血の匂いはどんどん濃くなりつつあるのであった…………
………………………
…………………
……………
………
ヒュゴー、ヒュゴー……と荒い息を吐きながら、
目の前からやってくる二人を見る……。
その"見る"という行動が、ゴブリンの最期の行動だったのだ…………
「死ね」
真っ先に動いたのはアルトだ。
ゴブリンの下側に入り込み、アキレス腱を斬った。
今の攻撃でグレートソードをもったゴブリンは立つことができなくなり、膝を屈する…
アルトが右横腹から、左肩まで斬り、ユウキが首を斬った。
時間にしてわずか数秒、まさに神業…それを十八の歳で成功させて見せたのだ。
遠目に見ていた、スギさんと騎士さんはユウキとアルトの剣技を見て 素晴らしいな………
と魅入っていた……。
「あいつら…ここ数年で強くなりすぎだろっ…!」
とスギさんが言うと騎士さんが
「あの子たちなら、………騎士団団長レベルに匹敵するのでは……?」
と冗談には聞こえない真面目な顔で告げた
「でもあと二体…手強いのがいるぞ……」
スギさんがそう呟くと、騎士さんが
「あの二人なら大丈夫でしょう…なんにせよ今の神業を魅せられたら……あの二人に勝つ魔物はいないと思いますから…」
と笑う。
スギさんも結局のところあと二体はすぐ討伐されるだろうと思っていた。
それは果たして…凶とでるか吉とでるか……
それはまだ、…わからない。
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「ビコッツさん!リンさん!!加勢に来ました…!」
僕たちがそう言うと、二人は――――何故ここにいるんだ
的な表情で見つめてきた。
アルトが「僕たちがなぜここにいるかはまた後で!」
と言って、斧を持ったゴブリンに剣を向ける。
僕は冷静に観察する。
二人が得意な戦い方を…
ビコッツさんはとても堅い守備…それとフィジカルだ
対人戦ではとても厄介な相手だ。
リンさんはスピードと急所を突く性能に極ぶりしていてどちらも対人戦ではとても強い部類だと思われる。
斧をもったコブリンの動きは遅く読めやすいのだが…
力が半端ではない……胸に一撃でも食らったら即退場だと思われる
それを今までガードし続けていたビコッツさんがどれだけ凄いのか分かることであろう。
ここに僕たち二人が加われば、斧を持ったゴブリンの"自己再生"を突破出来ると予想した。
それは見事に的中し、どんどんこっち側有利となって行く……
ビコッツさんが盾で斧を弾き僕がその斧を地面に叩きつける。それに合わせ、リンさんが四肢の関節を切る
アルトが、地面に刺さっている斧を踏み台としてジャンプし、ゴブリンの肩に乗る……手に持っている剣を
脳天から突き刺し、ゴブリンは動きが止まる。
"自己再生"が発動しており、まだ生きているのだ
頭からは真紅の血が吹き出しており地面を彩っている
ユウキがとどめを刺そうと、アルトと同じように、ジャンプしゴブリンの首を斬り飛ばす。
これにて二体目の討伐が完了したのであった。
「ふぅ、…つかれた…」
アルトがそう呟くと
ビコッツさんとリンさんが
「どうして……ここにいるのかな…?」
ととってもいい笑顔で訪ねてくるではないですか…!
いやね、正直ねその笑顔…めちゃ怖かった…
やっぱり大人って怖いんだなと再認識させられたよ…
アルトが先程までの事を、簡潔にわかりやすく説明していた。
それを見ていて僕は、やっぱりアルトってすごいわ
と思い直した。
いやだってとっても怖い大人相手にビクともせず話しているんだから。……尊敬もんすっね……
アルトが話し終え、ビコッツさんとリンさんが
納得したようにうなずき合いこちらに向かってきた。
「ありがとう…君たちが居なかったら…俺達死んでたよ…」リンさんがお礼の言葉を言ってくださったので
よかったよかった……お説教コースは免れたようだ…。
ビコッツさんも同じようにお礼の言葉を言ってくれた
ん〜……あれ?なんか一人〜………忘れてるような…、
そこまで僕が考えた瞬間…"それ"は起こった
ビコッツさんの左手が地面に落ちたのだ…
手からは真っ赤な血が吹きでる。
リンさんはそれを見て、ナイフを抜く。
アルトは何が、起こったのか分からないのか……
唖然としている。僕には"視え"ていたゴブリンが ビコッツさんの背後に一瞬で距離を詰め、その手に持っている大剣で腕を斬り飛ばしたのだ。
…数百メートルあった距離を数秒で詰めるという、身体能力が考えられない……
いや……もしかすると………
"ある"考えが頭を過ぎった瞬間…………
そして隣から腕が飛んでくる――― 血とともに…
見てみると、リンさんの腕がない…
そう一瞬で二人の腕が斬られたのだ。
僕は、アルトが危険だと思い剣を抜き、賭けをする。
アルトの背後にゴブリンが"出現"すると予想し、
アルトの背後に回る。
すると案の定、ゴブリンは"出現"し大剣を受け止めることが出来た。
これは………やっぱり……
ユウキはその現象に見覚えがあった。
その見覚えとは…魔法だ。
昔、シルクスの町がまだ村だった頃。
"四方都市"から、遠征に来た者たちが使っていた
"転移魔法"と同じ感じだったのだ。
「はっ…やっぱり"転移魔法"だったか……賭けだったけど…成功してよかったぜ……」
"転移魔法"を発動させるためには、呪文を唱えなければならないが、ゴブリンは呪文を唱えずに転移していた。それすなわち―――
「……"事前組込式転移魔法"…か…」
とユウキは呟く。
"事前組込式転移魔法"とはあらかじめ、魔法を詠唱しておいて、好きなタイミングで発動出来る、と言った反則級の魔法なのだ。
そこらへんの魔物がこれほど高度の魔法を使えるはずがない……ユウキはそうお思い大剣をもったゴブリンを
観察する…。
ユウキが言った"事前組込式転移魔法"は相当高度な魔法なのだ。魔法使いが、数十年鍛錬し、やっと出来るようになる魔法なのだ。
しかもそれを三回発動していたとなると……
"事前組込式転移魔法"を三回唱えていた事になる。
それこそ…どれだけの魔法技術を要するか分からない…
するとここでまたも不可解なことがおこる。
「ワレの術式ヲ…簡単ニミヤブるとハ……」
大剣をもったゴブリンがそう呟いたのだ。
これにはユウキもアルトもビコッツさんもリンさんも
全員驚きを隠せない…。
(喋った、…?!嘘だろ………喋る魔物なんて……見たことも聞いたこともない!!…)
ユウキは焦る。
―――もしかすると、今…目の前にいる魔物は自分より強いかもしれない……
先程の攻撃で、ビコッツさんとリンさんは虫の息になっており今戦えるのはユウキとアルトだけになっていた。
「くっ……ユ…ユウキ殿……アルト殿…ここは…退け…」
とビコッツさんが苦し紛れにそう言うので僕は
「ビコッツさん達のほうが重症じゃないか……ここは僕たちが足止めをさせてもらうよ…」
だから早く行けと目で合図を送った。果たして…気付くかどうか…その合図は―――
「面目…無い……すまない……ここは任せた…。」
と僕の合図に気付いてくれ、前線から引いたのであった
それを見ていたゴブリンは追いかける様子は見せない
その視線は、アルトとユウキに固定される。
「追わなくていいのか?もし追わないんなら、少しお話しようぜ」
とまずは相手の出方を探る。すると意外な返事が返ってきた。
「ヒサしぶりナノだ……。コノ…ワレとタタカえるモサとアイマミエルのハ……」
と、マジでちゃんと理解してる様子だ。
「んじゃ、僕たちの…夢のための踏み台とさせてもらうよ!!」
そう僕が宣言するなり、最後の闘いが……始まった……。
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やばいよやばいよマジヤバだよっ!!
踏み台にする? 数分前の自分を殴りたい気持ちになってます。
一撃、一撃が、、…メチャ重い…腕がもう悲鳴をあげてる…。
アルトに攻撃役を任せているが、正直代わって欲しい
思いなのだ。
今、僕がゴブリンの攻撃に耐えられている理由としては二つある、と思う。
一つ目は、僕の筋力が成人男性の数倍と言う事。
二つ目は、剣の性能が高い事。
だと思われる。
剣の性能が高いと言ってもビコッツさんに貰った拵えの騎士剣ではなく、ビルディッグさんが鍛えた剣を使っているのである。
騎士剣は始まってすぐ、ヒビが入り使い物にならなくなったからだ。
それに対して、ビルディックさんの剣は丈夫で振りやすく、動きの邪魔にもならない。
ここ数年でメキメキと腕を上げたのだと
剣を鍛えたことのない僕にでも分かる
戦いが進むに連れて、コブリンの動きが機敏になってきたように感じる。
ここまでは小手調べだったのだろう。
―――それは、こっちもだぜ。
僕とアルトは相手の癖を見つけるために僕が守備に徹し、アルトが癖読みと攻撃をやってくれていたのだ。
それもここで終わり。
僕とアルトはゴブリンから距離を取り、情報を共有し合う。
「あいつ、足元の攻撃を警戒してやがる…。あと…剣を思いっきり地面に叩きつける攻撃の後、全力で後隙を消しにいく…そこが狙い目かも…!」
「防御は、とりあえず全力!!!」
「イエッサ!って、はぁぁあ??!!」
と隙や癖、戦い方などを十秒程で共有しあって
不満も何もない状態で最終局面となった。
なんか、防御に対する不満が出てたような出てなかったような…いや出てないここで迷ったらいかん
よっしゃっ!
「 ―――――ラストスパートだぜ…!」
「ああ、行くよっ!ユウキッ!!」
そう言うと同時にユウキとアルトは走り出す。
四年間二人は、対人戦だけではなく人の戦術、作戦立案術、コンビネーションなど色々な練習をしてきたのだ。歳にして十八…だが、その能力は騎士団団長クラスに匹敵する。
そして、この二人のコンビネーションに勝てる魔物なしと、そう自慢出来るほどに、凄いのである。
ユウキは姿勢を低くし、それでいて速く地を滑るようになめらかに走る。
それに対してアルトは空中にジャンプしてゴブリンの頭部を狙う。
ゴブリンは感動していた。自分と殺り合える程の猛者が…二人も、…二人もいるのだ。
先程の二人は、"転移魔法"に気づくことなく、あっけなく退場してしまった。 だがどうだ? 今目の前にいる青年二人は…
一人はいち早く気づき、もう一人は分かっていない様子であったが、迅速に対応してみせた。
それに感激する………。
自分と同格の物など今まで会ったことが無い故に、とても気分が高揚する。
「コノ…オレヲォ!!モッとタノシませロッオォ!!!」
そのとてつもなくでかい声は、アルトたちの行動を数秒鈍らせることに成功した。
その数秒の遅延はとてつもなくでかい の、だが
何事も無かったのかのように、大剣持ちのコブリンに突っ込む。
ユウキが走りこみ斬りつける。
それを難なく受け止めたゴブリンは、上空にいたはずのアルトがいないことに気づき、周囲を見回す。
その時にはもう"形"は完成していた。
アルトはゴブリンの後ろ側を取り、ゴブリンのアキレス腱を斬った。
それにユウキが合わせ、膝を斬る。
ゴブリンは何とか、体勢を維持していたのだが……
次の攻撃で、膝を屈する事になる
腹と背中からどんどん傷が増えていく。
この、足元を斬り体勢を崩しそのまま勝つ戦法はデカイが取り柄の魔物によく利くのだ。
先程、グレートソードをもったゴブリンに仕掛けた連携もこれと同じようなものだ。
(行ける…!このまま、反撃のスキを見せなければ!…)
ユウキがそう考えた瞬間――――ゴブリンが動いた。
" 転移魔法"を発動させたのだ。
「ッ!?」
まだ残していたのか…!とユウキが考える―――そして
次の出現ポイントを予測する。
(アルトか……?いや…多分僕だ…、。)
確かに、今現時点で一番厄介なのはユウキだ。
ならば当然、ユウキを殺してからアルトを殺すだろうと、周囲に全神経を集中させる…。
「オレのネライはオマエだ。」
そう声が聞こえた瞬間、アルトの前にゴブリンが出現する。
「ッ!?アルト!!」
アルトは考える、この状況の打開策を。
今目の前にいるゴブリンの攻撃を何とか耐えたとしても、続く連撃でアルトの命は刈り取られるであろう。
なので一撃耐えて、ユウキに賭けると言った親友を信じた賭けに出た。
だが、ここでアルトとユウキの読みは大ハズレする……。
その読み違いは…この先…
とてつもない悲しみを
生むことになる…。
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僕は考えるより先に全力で距離を詰めることに意識して、アルトのカバーに入ろうとした。
が、それは…自分の命を危険に晒す行為だったのだと、直ぐ分かった…。
「こいよ、ゴブリンッ!!」
アルトがそう言い、ユウキに一瞬視線を飛ばす。
これで気づいてくれ―――と願いを込めて。
「チガウ…オマエじゃ、ナイ………」
とゴブリンが言った途端、急に僕の方へと体を向けてきたのだ。
全速力を出していた僕はその急な振り向きに、直ぐには立ち止まれず、ゴブリンの目の前でとてつもなくデカイスキを曝け出してしまったのである。
その直後――――ゴブリンがユウキの腹めがけて剣を入れ込む。
それに僕はガードしてみせたが…肋骨から鈍い音が聞こえ、数10m飛ばされてしまったのだ。
「グハッア!!」
吐血し、その場にうずくまる。
力を振り絞り、アルトのほうに視線を向けてみると
怒りに身を任せた、アルトが突っ込み、腹に蹴りを入れられふっ飛ばされたのが見えた。
―――マズい…!このままじゃ…アルトは……ッ!!
一瞬最悪の事態が脳裏をよぎる。
アルトは立ち上がれずにいる…。
岩に背中をぶつけ、動けないでいる。
ゴブリンが近づき……その大剣を、アルトに向けた瞬間。
僕はある言葉を発していた…。
「アル……アルト……あ、アルトぉおッ!!」
くそっ…!動け!!動け!!!動けよぉ…、
僕の…足ぃ……このままじゃ………このままじゃ……… あ…
ある…アルトは、………………クソっ………ち…ちくしょぉおっ!………
苦し紛れにそう叫んだ声はゴブリンには届かない。
もう終わらせるつもりなのだ。
このまま、…このま…ま……誓った約束……あの日…見た…景色…見ようって…約束したのに…アルトが死んじゃうのか…、?…いや…嫌だっ……イヤッ!
だが現実はそう甘くない。
ゴブリンの持つ大剣がアルトに振り降ろされる……
…………
………
……
…
グジユッウウウッ…肉が斬れる…音だ。
今、裂かれているのは…人……
―――アルトではない。
スギさんだ。
スギさんが、間一髪のところに駆け付けアルトを庇い
斬られたのである。
「グハッ…………うっ……イ、イてぇえ……、」
「ッ?!す、スギさん??!スギさあんッ!!!」
アルトがそう叫ぶ、今の一撃でスギさんの胸は斬られ
血が出ており、今にも上半身と下半身が千切れそうなほど、傷が深い。
それを見た、ユウキは…今…自分がなにを感じているのか…。分からない。
スギさんが斬られた。魔物に……ゴブリンに…
「スギさぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!」
ユウキが数10mあった距離を一瞬にして詰め
成人の数倍――――約6倍の身体能力と筋力に物を言わせ
ゴブリンをぶっ飛ばす。先程のコブリンの攻撃力と同じ程の威力が出たのである。
「グフぅッ?!」
ゴブリンが数mふっ飛ばされ、アルトとスギさんから
離れる。
「ゆ…ゆう…ユウキ……す、スギさんが…スギさんがァァ………」
アルトが泣きながらそう僕に言ってくる。
「アルトはスギさんを見ててくれ…僕は」
――――あいつを、ぶっ殺す!
その一言だけを言ったあと、ユウキは全力で走る。
そして一瞬にしてゴブリンと距離を詰め、華麗な連撃を決める。
ゴブリンの左足、右足を同時に斬りつけ
それに驚いたのか、ゴブリンが後ろに下がる、
がそれを見逃すユウキではない…
腹に突き攻撃を入れた後、剣を引き抜き4連撃を御見舞する。
「オマえ…!先ホドマデトは…別ジ―――」
言葉は最後まで言わせねぇ。
その首置いてけ。
テメエは絶対に許さない。
ユウキは
ゴブリンの右腕を斬り飛ばし
地面に着地し
そのまま回転しながら両足を斬る。
体勢が崩れたゴブリンはもはやただの"的"で…
ゴブリンの肩にユウキが乗り飛翔する。 そして…ゴブリンの首を
ザシュッ
―――――斬ったのだ。
首を。先程までの死闘を嘲笑うかのように。
華麗に。
決着は着いた。 ユウキの、勝ちだ。
……かった。勝った。勝ったのだ…。
でも……スギ…さんが……
そう思い、僕はアルトのほうに行く。
スギさんの大量の血が…地面を彩っている。
肉が裂け、骨が見えている。
心臓の動きが明確に視える。
まだ戦場には魔物がいて、ここは危ない。
そう思いスギさんの胸を抑え止血し後方まで
戻ってきた。
「重症だ!!すぐに医者を!!」
後方支援部隊の人が医者を呼ぶがその医者から
もう、長くない。
と言われた。
"回復魔法"を扱える物が居ないのだ。
僕とアルトは唖然となる。
三体の魔物を倒し、戦局は連合軍有利となった。
しかももうすぐ"四方都市"の一角、エルデラ都市から
援軍が来るとの情報が入った。
勝ちだ。
あとは"魔法大砲"でゴブリンの数を減らしながら、
防衛に徹すれば援軍が到着し、勝てる。
「ごめん…なさい…スギさん……僕が…あの三体を倒そう、って言ったばかりに……………巻き込んで…しまって」
アルトが自分のせいだと思い、謝罪の言葉を口にしている。
それに対してスギさんは笑顔だ。
「ハッ…気…にす、る…なよ…、アル…ト…ユウ、キ……俺は、ァ…ここで…死ぬ……悔いは……ウッ、……ねぇさ…」
―――まあ、あるとす…、ればオ、メェらの…夢の果が見れねぇのと、最後……に、最…愛の妹の顔……が見れねぇの……だ…な…
と微笑んだ。
その顔は一点の曇もなく。ただただ。凛々しい。
「実はよぉ…俺も…密かに、剣を習ってたんだ…
今のオメェらを…見てるとよぉ…なんか、かっこいい…なと思っちまえて……」
「かっこいいのは…スギさんのほうだよ……本当に…」
そう言い、僕の瞳から涙が溢れる。
となりのアルトも…泣いている。
「い、今まで…ありが…とうな…、…それと……絶対に…お前たちの…夢、叶えるんだぞ…、約束…だぜ…。」
そう言い遺し……スギさんは…逝った。
僕たちの……とても…とても大切な…たいせ…大切な…、人が。
「僕が…アイツの罠なんかに…引っ掛からなければ…
スギさんは…」
最近は、読みがとても当たっていて調子に乗っていた。
僕さえ…僕が…僕が……
「違うよ……ユウキ…僕のせいだ。僕が…僕が……でしゃばったせいで……」
悲しんでいる僕たちに…二人の人物が声を掛ける。
「ユウキ殿…アルト殿……スギ殿を守れなくて…申し訳ない。」
「これはぁ、俺たちの責任だ…。本当に…すまない。」
ビコッツさんとリンさんだ。
どちらも、手当を終えてある。
「……スギ殿は…死んでしまったが…君たちは…、誇れる事をした。それは――――」
「君たちのお陰で、前線部隊が全滅せずに済んだ
もし…君たちが、あの三体を放置していたら…俺たちだって死んでいたし、前線部隊は全滅、もしかするとここも危なかったかもしれない…。」
「君たちは、人を救ったのだ。私を私達を。それだけは、忘れないでほしい。」
その言葉が、僕とアルトを少しだけ…ほんの少し…
救ってくれたのであった。
そして、"四方都市"エルデラ都市からの援軍が到着し
連合軍と協力し、魔物達を全滅させるのにそう
時間は要さなかった…。
こうして、クルガの町防衛戦は人間の勝利
によって幕を閉じたのであった。
…………………
……………
…………
………
……
数日が経ち。ユウキとアルトはシルクスの町に帰って来た。
生き残りは、ユウキとアルトだけであり、スギさんを含む、大人達は全員戦死したのである。
「マツ…さん………スギさんを…みんなを……守れません……でした…。」
そう言い…僕とアルトは防衛戦の全てを話す…。
話し終わったあと、マツさんは。
僕達のことを抱きしめた。何も言わずに…
傭兵さん達の家族も何も言わず、僕達を抱きしめた。
僕達は…泣いた。
何にも守れなかった僕たち…己の弱さを噛み締めて。
今回の戦争で生き残れた…が…失ったものは…とてつもなく、でかい…
僕とアルトは…スギさんが紡いでくれた。この命。
決して、無駄にはしないと。心に誓った。
大いなる犠牲を生み出した戦争、…。
大切な…人を失ってしまった…悲しみ。
ユウキとアルトは
この悲しみを乗り越え
強くなる。
スギさんとの"約束"を、果たすため
そして、いつか"夢"で見た
景色をもう一度…、
見るために。
まだ、冒険は始まってすらいない…。
今回はめちゃ長いので、誤字とか齟齬があるかもしれません。
もし見つけたらコメントで指摘してくれるととても助かります!
次回は、ユウキの運命が大きく変わる出会いがあります!
楽しみにしていてね!
それではまた〜し〜ゆーあげいん!