地球にポルノビデオを忘れた宇宙人【1000文字未満】
遥か古代。地球には来訪者がいた。彼らは各地に知恵を伝え、文明の発展を願い、そして去った。今では神として語り継がれている彼らは、今日も今日とて文明発展のため尽力する。
個人用の宇宙船で飛ぶ一体の生命がいた。オス個体だ。彼は整理をしていると、あるものをなくしていたことに気付く。
「しまった!」秘蔵のメモリーを地球に忘れてしまったのだ。
そのメモリーは最新式。もし地球の人に見つかったら発展に悪影響があるかもしれない……というのは建前で、メモリーの中には大量の官能動画が入っているのだ。もしもあれが見つかり、中が開かれ、動画が再生されたら。地球を滅ぼしても恥は消えまい。
未だ動画での体験に拘る彼は、すぐに地球へ引き返した。あの青い星が見え、望遠鏡で地表を見る。「あぁ!」遅かった。
彼の残したメモリーはパスワードさえ解読され各地で視聴されていた。見る者は皆、白衣であったりスーツであったり。まるで学術であるかのような態度だ。中には宗教の服で臨む者さえいる。
人類に擬態して宇宙船から降り、視聴者に混ざる。恐る恐る、彼らに聞いた。
「ねぇ君、これはどういう動画だと思う?」
「これかい?」研究者らしい者は答えた。「これは未知の生命が性交をしている、と思われる映像だ。宇宙にはこんなものがいるのだなぁ。いや神秘を感じるよ」
自分達の生殖に神秘を感じられても。汗を流して曖昧に相槌を打つ。だが研究者の一言で戸惑いは殺意に変わる。
「それに、その、ね。このやられているほうの子。メスかな? その、エッチだよね……」
怒髪天。そいつは可愛らしいオスだ。愚かしい人類め。彼の良さが解らないとは。滅ぼしてやろうか。
だが臆病故に怒っただけで終わった。メモリーの回収のため研究所に潜ったが、すでにあちこちにコピーされているため無駄だった。宇宙生命体は半泣きで地球から逃げてしまった。
後日、宇宙から来訪者が現れる。彼らは侵略に来たのではない。大量生産された宇宙生命体ポルノビデオを見るためにやってきたのだ。