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彼女の「腹ドン」がエッチすぎるので、俺たちの高校生活はカオスになります。  作者: 阿井川シャワイエ
1章 霧島優羽

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10話 みんなと、ふがふが

「うっわ、ホントに美味しい!」


「ユキさんが作ったんだから当然だよ」


「なぜナオが自慢気なんだ」


 喫茶ふがふがでクラスメイトと優雅にランチ。

 夢のような時間だ。


 4人掛けのテーブルと2人掛けのテーブルを合体させた特別席に俺たちは座っていた。

 俺とマコトが木製の椅子を使い、女性陣は壁際にある大きなソファに並んで腰掛けている。


 ちなみに全員きちんと家で着替えてきたので、私服姿だ。


 女性陣は少しずつ服の方向性が違った。

 優羽さんはTシャツにジーンズ。

 九条さんはシンプルな黒いワンピース。

 ヒヤヤッコは長袖のブラウスに、ロングスカート。


 印象を言うのなら優羽さんはカッコイイ感じで、九条さんはカワイイ感じ。

 ヒヤヤッコは肌を出すのが恥ずかしいんだろうなあという感じだ。


 そんなヒヤヤッコは美少女2人に挟まれながら、例のふわとろオムレツを食べている。

 その美味しさに彼女が感激するのも当然だろう。

 ちなみに俺とマコトはハンバーガーで、九条さんと優羽さんはサンドイッチを注文していた。


「ふふふ、俺が鼻高々なのにはちゃんとした理由があるんだ。このオムレツはもともとユキさんが家で作ってた家庭料理なんだけど、俺からの評判が凄く良かったからお店でのメニューにも入ったんだよ。凄くない、これ」


「確かに凄いが、やはりナオが自慢するのは筋違いだと思うぞ」


「はー、おいしいー」


 俺とマコトのやり取りをよそに、ヒヤヤッコはほっぺたを押さえ、うっとりとしている。


「たしかに美味しそうです、そのオムレツ」


「うん、すごーく美味しいよ。ヒメルちゃんも一口食べる?」


「いいんですか?」


「もちろんだよ。ほら、あーん」


 ヒヤヤッコはデレデレしながら、九条さんの小さく開いた口にスプーンを運んでいる。


 昔から可愛いもの好きだったが、美少女もその範疇に入るとは知らなかった。

 小学生の頃は女の子の友達がほとんどいなかったはずなので、その反動かもしれない。


 九条さんはモグモグと上品に咀嚼しゴクンと呑み込むと、口に手を当て驚いたような表情を浮かべていた。


「本当に美味しいです……! それに玲香さんに食べさせてもらったお陰でしょうか、心までホンワカしてきました」


「えー、もー、やだなあ、ヒメルちゃんは。それはユキさんの料理が美味しいからだよー」


 2人のほのぼのとしたやり取りを見て、優羽さんの目がキラリと光るのが分かった。


「あ、玲香さん。私もいただきたいです」


「えっ、優羽ちゃんも? もー、しょうがないなー」


 優羽さんはからかっているだけに思えたが、ヒヤヤッコはやはりデレデレしながら食べさせてあげていた。


 ……ん?

 もしかして、これ俺も乗っかったほうが良い?

 よし何事も挑戦だ。


「ねえ、ヒヤヤッコ。俺も食べたい」


「はい!」


 言うと同時に目の前にスプーンが出てきたので驚く。

 行動が読まれていたようだ。

 少し悔しい。


「ありふぁふぉう」


 食べさせてもらいながらお礼を言う。

 やはりユキさんのオムレツは世界一だ。


 ヒヤヤッコは俺に餌付けをしたあと、スプーンをぼんやりと眺めていた。

 間接キスを気にしているのだろうか。

 そういうことをされるとこちらも照れてしまうので、やめて欲しい。

 ……というかサラッと、優羽さんと間接キスしてしまった。


 そんなことを思っていると、視線を感じることに気付く。

 出所は九条さんのようだ。

 目が合った瞬間彼女はハッとした様子で俺から目を離し、隣にいるヒヤヤッコに顔を向けていた。


「あ、あの、なんで玲香さんはナオさん達からヒヤヤッコって呼ばれてるんですか?」


「ああ、小学生の頃のあだ名なんだよね。そう呼んでくるのはこの2人しかいないけど」


 ヒヤヤッコは俺とマコトを上目づかいで見てきた。

 その視線を受けマコトが口を開く。


「ナオが付けたんだよな、そのあだ名」


「え、俺? そうだっけ?」


 俺の記憶だと、誰かが付けてたような?


「いやまあ、ナオがっていうと正確には違うが。確か小学校の調理実習のときだったかな。なんかトラブルがあって、女子同士で揉めはじめたんだよ。んで女子の誰かが、怒ったわけ。ヒヤヤッコに向かって『名前のとおり冷たい奴ね!』みたいなことを言って。すげえピリついた雰囲気になったんだよ。俺はうへえとか思って遠巻きに見てたんだけど、そうしたら……」


 そこでマコトは変に口を歪めながら、俺のほうを見てきた。

 笑うのを我慢しているようだ。


「そしたらナオがさ、豆腐片手に女子の中に割り込んでいって、『冷たい奴。つまり冷奴(ヒヤヤッコ)ってことですか!』って大声上げて」


 ん?

 なにそれ?

 いくら俺でもそんなワケの分からないこと……するはずが……ない……?


 …………はっ!?


「ぐうううう! 思い出した! 地獄みたいな空気になったやつだ……!」


 言われてみれば、確かにそんなことがあった。

 思いついた瞬間はこのボケは面白いぞと感じたのだ。

 そのうえ目の前に豆腐まであったのだから運命とすら思ったのに。


 ……なのに俺を待ち受けていたのは、みんなの冷たい視線。

 今思い出してもうめき声をあげてしまうのだから、忘却の彼方へと送り出していたのは当然だろう。

 憶えていないのにはそれなりに理由があるものだ。


「しかも、もう一回言ってたよね。静まり返った空気の中で『ヒヤヤッコってことですか!』って。豆腐を乗せた右手を前に突き出しながら」


「あそこで、さらにはっきり言うのがナオのすごいところだよな」


 できればヒヤヤッコとマコトにも忘れてもらいたかったが、2人とも覚えていたようだ。

 諦めて言い訳をすることにした。


「あれ? 伝わってないのかな? って思ったんだよ。ボケ自体には自信があったから……。まあ、空気がさらに冷えただけだったけど」


「ナオはワケの分からん空気に持ち込むことにかけては天才的だからな」


「その評価、嬉しくないなあ……」


 要するに面白くないということだ。

 あんまりな言い草に、思わずがっくりと肩を落としてしまう。


「そうか? わりと褒めてるぞ。ナオは面白そうなことがあると、無視できないタイプだろ。天然ボケのナオが意識的にボケていくからカオスになりやすいんだよな」


 そんなことはないと言おうとしたが、特に否定できないことに気付いた。

 実際あのときの空気はカオスと言われても仕方がないものだったのだ。


「だが誇るがいい。ナオが犠牲になったおかげで、ヒヤヤッコも難を逃れたのだよ」


「うん、そうだね。ナオ君にはホントに感謝してるよ。ホントの、ホントだからね。まあそのかわり、2人からヒヤヤッコって謎の愛称で呼ばれるようになったんだけど。それも悪くないよ」


 俺を見て優しく微笑んでくるヒヤヤッコ。

 なんとなく目を逸らしてしまう。


「あの、気になったんですけど。名前のとおりって言ってましたけど玲香さんの名前、冷たいって字じゃないですよね?」


 九条さんは首をヒネっていた。


「まあ、そうなんだが、小学生の頃だからな。音の響きしか考えてなかったんだろ」


「響きだけでボケると失敗するよね。俺みたいに」


「別にボケで言ったわけじゃないだろうけどな。ナオと違って」


「……こいつめー、こいつめー!」


「おい、ナオ! 髪をめちゃくちゃにするな! 結構セットが大変なんだぞ!」


「ふふふ、盛り上がってるみたいね」


 意地悪なことを言ってくるマコトとじゃれていると、上機嫌なユキさんが真後ろに立っていた。


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