作戦会議
[1ヶ月後]
「クロム、ただいまー」
「魔王城はお前の家じゃないぞ、アーク。」
「似たようなもんだ」
「それもそうか」
1年戦い、遊び、グータラした魔王城最上階の魔王の部屋は
勇者アークの私物が大量に持ち込まれ、
威厳のある謁見の間から完全なる生活空間へと変貌していた。これでは我が家と言われても否定できない。
「これ、お土産の最新巻。大切に読めよ」
「ありがとう、こっちも例のボードゲームが手に入ったぞ!なんと1ゲーム8時間の超大作だ!これやりながら調査の報告と作戦会議をしよう」
「相棒の手は他のボドゲで知り尽くした、今度こそ完勝してくれる!」
「それはこちらも同じこと、相手が相棒でも容赦はしないぞ!」
重ね重ね言うと、こいつらは馬鹿である。そして仲良しである。気づけば会議そっちのけでボドゲ大会。1ゲームでは飽き足らず3ゲーム遊び通し、途中で我に帰った。
「やはりどちらの軍にも侵略の記録は無かったか…。国王様も大層驚かれていた。今では魔族領との協力も視野に入れ、王国で暗躍する裏切り者探しに協力してくださるそうだ。」
「ということは黒幕の暗躍というイレギュラーがない限り、
人と魔族、そして勇者と魔王の戦いは無くなるのだな」
クロムは心底嬉しそうに笑った。彼も馬鹿だが、魔王として
多くの魔族に慕われ、敬われるだけの器と民を思う心があった。余計な犠牲が出ないことを心から喜んでいるようだった。
「しばらくは黒幕探しに集中できそうだな」
「ひとまずは国境付近の被害にあった村を周って聞き込みから始めるか。」
「クロムは城を空けて大丈夫なのか?お前魔族達の王だろ。統治とかいいのか?」
「もともと軍事以外の統治は各部族の長と城の執事のルシウスに任せてある。でないと相棒とあんなに遊んでばかりいられるわけないだろ」
「無職を自慢気に話すなよ」
「無職言うなし」
長らく戦っていない勇者アークも実質無職であるため、完全なブーメランだ。
「明日から捜査開始だな」
「それまでゲームの続きだ!」
「今どっちのターンだっけ?」
「話しているうちに忘れた…やり直し?」
「Oh…」
結局深夜まで遊び倒し翌日は寝坊。昼過ぎからの捜査開始となる。なんとも締まらない2人だが、ようやく黒幕探しに向けアークとクロムは動き出したのだった。