夏だ、海だ、ギャルだ
俺の夏休みは筋トレとランニングの日々で過ぎていく、篠原とは2日に一回くらいのペースで一緒に走っている。
自分の話はあまりせず、彼女の話しに耳を傾けてきちんと質問を返していくことによって
彼女との距離はかなり縮んでいる気がする。
あと師匠からデートする時のために
バイクの免許を取るように言われ、自動車学校にも通うようになった。
流石に15万近くかかるので、親に相談したところ父が青春を楽しめと免許代を出してくれた。
「バイクはいいぞ、後ろに乗せることができれば吊橋効果が期待できる」
吊橋効果とは吊り橋を渡る時のドキドキを恋のドキドキと勘違いすることにより、近くにいた異性を好きになってしまうことだ。
このように、人の脳は意外と曖昧な判断をしており好きな人にドキドキするのではなく
ドキドキさせた者を好きになるという現象が起こる。
イケメンが恋愛で有利なのもこのドキドキを顔面だけで起こすことができるからだし、デートの定番にお化け屋敷や、肝試しなどがあるのも正にこの効果が狙えるだ。
いかにドキドキさせるかが恋愛においては鍵となる。
「まぁ、今日はこんなとこだな。あと明日は海に行くから水着用意してこいよ」
翌日、いつものように師匠の自宅に集合すると白いトヨタの車、ランドクルーザープラドに乗って海へと向かった。
メンバーは俺と師匠の他に3人の師匠のガールフレンド達だ。
ちなみにこの3人はおなじアパレルショップで勤務していて、その店にフラッと立ち寄った師匠にマルっとナンパされお持ち帰りされたらしい…人間技じゃない…
車で1時間弱、全国でも割と綺麗で有名な海水浴場だ。
3人のテンションの高いギャル達がいるだけで車の中も盛り上がり、あっという間に到着
。
「レンレンどうー?感想は??」
ニヤニヤしながら、そのスレンダーで健康的に焼けた肌に似合う黒いビキニの金髪ギャルの美砂さん。
「美砂さんよりあたしだよねー?」
そう言って張り合ってくる、同じく黒のビキニに上はパーカーを羽織っている清楚系ギャルの愛佳さん。
「早く行こぉーよぉ〜」
ピンクと白の花柄のフリル付きビキニの色白おっとり系巨乳のマミさん。
浮き輪も持って準備万端のようだ。
「いや、あの皆さんお綺麗です」
「「レンレン褒め上手ぅ〜」」
正直、以前の俺ならこう言った人達はひとくくりに苦手なタイプとして関わらなかっただろう。
だけどこうして会話を交わし、仲良くなると彼女たちのそこにいるだけでどんな事も楽しい出来事に変えてしまうような空気がとても好きになった。
「どうだ、楽しいだろ」
そう言ってサングラスで髪をオールバックにしている半裸のマッチョ…もとい我が師匠。
「まだ泳いでもないのにめちゃくちゃ楽しいです」
そうだ、メインはこれからなのにもう既に楽しくてたまらない。
ビーチに着き、海の家で荷物を預ける。
ギャル3人に裸足のまま砂浜に引っ張られ、砂の熱さに足の裏が焼かれる。
耐えかねた俺はギャル達の手を振りほどき海へ走った。
海に足をつけると、先程の熱さが嘘だったかのようにヒンヤリと冷たいと足の指の間に濡れた柔らかい土が侵食してくる感覚を味わいつつ、広く美しい青の光景に目を向ける。
海から上がってくる人物と目が合う。
ここ最近、仲良くなったランニング仲間の彼女、その名前を呼ぼうとした瞬間
「「レンレンあっつーい!!」」
「むりぃ〜!」
と3人のギャル達が俺の後ろから自分達もサンダルを脱いで走ってぶつかってきた。
「うぉっ!!」
衝撃で海へと突っ伏す。
背中に感じるほとんど生の柔らかい感触に感動しつつ顔を上げると
「伊藤…??」
篠原と目が合った。