モテとは健康
「はぁっ…くっ…はぁっ…ふっ…」
自然と声が出る。
全身にのし掛かる重さを、太ももの筋肉で持ち上げる。
80kgのバーベルの無機質な重さが両肩に食い込む。
太ももの筋繊維が一本一本独立したかのようにビクビクと震え限界を知らせるが、
最後の一回を気合いで持ち上げる。
上半身の筋肉も大事だが、テストステロンつまりは男性ホルモンをより活発にし、男としての機能を上げてくれるスクワットは欠かせない大事なトレーニングだ。
「はぁっ…はぁっ…」
いつも通り全ての行程を終わらせ、水分補給を兼ねて牛乳に溶かしたプロテインを一気に飲み干す。
牛乳のねっとりとした感触が喉に絡みつくが、この少しの不快感も慣れたものだ。
立ち上がり、服を脱ぐ。
大きな一枚鏡の前で自身の肉体を観察する。
去年よりも成長し
現在、170cm 63kg 身長は一年で4cm伸び
体重はなんと13kg増である。
トレーニング後にパンプアップした筋肉達は逞しく、ここ一年の努力の成果を実感する。
たった1年でもここまで変われる。
やればできる。
本気で取り組めば、増えないと思っていた体重だって増えるし、可愛い彼女3人に囲まれることもできる。
前向きな精神と、実行することの大切さをしみじみと感じながら筋トレ後の高揚した気分を落ち着かせる。
「ところで、虎太郎。お前と同じクラスに桃ちゃん、染井さんって子いるだろ?」
「ぬぅぐぐぐぅ!…しゅっ!席番号…ぬぅう!…11番っ、身長145cmっ!体重…39kgのっ…はぁっ、、染井桃殿ですなっ!」
先程までの俺と同じく、バーベルを担ぎスクワットを行っている虎太郎に話しかける。
その重量は110k、虎太郎のポテンシャルは凄い。
「…そこまでは聞いてない。」
なんで身長体重まで知っているんだ?
とは思ったがこの前、徹夜で学校全ての女子の情報を師匠に叩き込まれていたな、、
虎太郎も頑張り屋だ
「ふぅ〜、スクワットは効きますなぁ。
すみません、兄上。お師匠様にクラスの女子全員の情報を記憶せよとの教えがついつい…ところで、あのロリっ子がどうされましたか?」
「ロリっ子て…ゲーム仲間でな、クラスに馴染めてるか不安で。
まあ、少し気にかけといてくれ。」
「兄上のお仲間でしたか。そういう事ならお任せください!授業中のあくびの数からトイレに行った回数まで、細かく記録致すでござります」
「そうじゃない」
そんなこんなで週末の筋トレを終え、帰宅する。
筋肉の肥大に大きく影響するテストステロンは大事だ。
筋トレを行うことによって分泌されるが、元の材料も欠かせない。
そのため良質な油を摂る為にゆで卵と、アボカドのサラダを食べ
動物性タンパク質の摂りすぎによる、体臭発生の防止のためリンゴ酢を混ぜた水を飲む。
最近つくづく思うが、モテとはすなわち健康。
以前までの自分では考えられない食生活だ。
茜には健康オタクとまで言われているが、、
あゆは仕事柄、割とここらへんの話は合う。
このリンゴ酢もあゆからのオススメだ。
そうしていると家のインターホンが鳴る。
茜は部活の試合、あゆは撮影があるということで
今日は氷乃先輩と勉強会なのだ。
ガチャリとドアを開ける。
アニメのキャラクターに例えるなら所謂ジト目。
パッと眩い印象は無いかもしれないが、日に犯されてない肌は白くきめ細かく
目の下の泣きぼくろが彼女のミステリアスな印象を引き立てる。
春らしい、薄桃色のセーターにアイボリーのマーメイドスカート。
ゆったりとしたシルエットのセーターからでもハッキリとわかるほど主張の強いシルエット。
「こん…にちわ…、おじゃま…します」
筋トレ後で昂っている狼の自宅に、可愛い赤ずきんがやってきた。




