侵入
いつもは本の香りと、少し埃っぽいような空気の図書室が、今は息がむせかえる程に甘くしっとりと熱を持っている。
私はただ、今日こそは彼と話すことが出来るかもしれないと思って、放課後図書室に来ただけだ。
彼が図書室に来るまで棚の裏で本を読みながら待っていたのがいけなかった。
彼は一人じゃなく、噂の少女二人と一緒だった。
私は彼女達の輝きが眩しくて、綺麗な二人と並んで見られるのが嫌で本棚の影に隠れた。
その結果、彼女らの赤裸々な性体験を聞き、更に出るに出られなくなったところで行為が始まった。
見ては行けないと思いつつも、先程までの猥談で私も少し興奮してしまっていた。
あんなに綺麗な少女達が夢中になる程の物なのかと。
本でもよく、そう言った男女の交わりの描写はあるが、実際に経験している人が目の前に居るのだと思うと変な気分になった。
本棚の隙間から彼らの様子を伺う。
「あっ…」
綺麗な黒髪の彼女、確か名前は川本さんだったはず…彼女が伊藤君とキスをする。
海外ドラマでしか見ないような濃厚なキス。
ズキンと胸が痛む、だけれど目が離せない。
私が未知な世界が目の前で繰り広げられようとしているという好奇心と、今読んでいる恋愛小説の内容と、生理前ということもあって悶々と自身の欲求を持て余しているからだろうか。
そしてその隣で羨ましそうに二人の様子を眺めているショートカットの女の子、彼女は篠原さんだったかな。
そんな彼女の内腿からゆっくりとくすぐるかのように指を這わせていく彼。
女の子のような綺麗な指先がスカートの中へと侵入する。
彼の指の動きを再現するかのように私も、自身の指を内腿から這わせ、スカートの中、そしてショーツの上から感度の高い部分を優しくさする。
「んっ…はぁ…」
こんなことしちゃダメだ。
そう思いつつも一度快感を得た体は完全にスイッチが入り、指の動きを止められない。
彼らもより激しく、より濃密に絡み合う。
そして川本さんが彼に尽くしていると、彼は彼女の頭を押さえ付けた。
「んんぅっー!うぇっぷふぁ…はぁはぁ」
口から糸を引く唾液を垂らし、涙目という姿であっても彼女は官能的で、美しくさえあった。
「伊藤君ああいうのが好きなんだ…」
彼の嗜虐的な一面に、より一層ドキドキしてしまう。
そして川本さんが、彼の上にゆっくりと跨る。
美しい顔を歪め、快楽に溺れる彼女を見て、私も自分が同じようにしている所を想像し、果てる。
「いっ…あっ…はぁっはぁっ」
一度外で果ててもまだ身体の火照りは収まらず、余計に欲しくなる。
バレていないだろうか…先程からついつい声が漏れてしまう。
あんなに気持ち良さそうな声で鳴く彼女を見て、私は今まで、自身でも侵入した事がない部位へと興味を寄せる。
このように擦る程度の行為はたまにする。
深夜にえっちな小説を読んでいる時はついつい指が体をなぞってしまう。
だが、それ以上は自分でも少し怖くて、触れたことはない。
今までに無いくらいに興奮している私は、彼女らが得ている快感と、少しでも近いものを味わいたい。
そう思ってしまった。
そして自身で触れると、水音が聞こえてしまうのではないかと思うほどの量にビックリする。
「こんなに…」
そして、指先に絡む水達が驚くほどスムーズに案内してくれる。
「あぁぅっ…はいっちゃった…」
一瞬目の前が白くなり、倒れるかと思った。
一度果てた体は思った以上に刺激に敏感になっているようだ。
先ほどまでとは違う快楽に夢中になる。
バレたって構わない、この声も、音も彼に聴かれてしまうかも知れないという、恐怖よりも、興奮が勝る。
川本さんが達した後、机手をついた篠原さんを後ろから激しく彼が攻める。
自分の細い指をゆっくり動かすだけでもコレ程なのに、逞しい彼からあんなにも激しくされたら壊れてしまいそうだ。
同じようにされていることを想像していると、今までとは違う、波のような感覚が襲ってくる。
「茜…俺っそろそろ」
「あっ…ん、いいっ…よっ、私もっ」
そう言ってより一層激しさを増す彼の動きに合わせるように私も自身を激しく責め立てる。
「あっううっ…うっあっ…」
彼が果てたと同じタイミングで私も達する。
頭は真っ白になり、押し寄せる快楽の波に膝は笑い、内股が痙攣する。
そのまま床にへたり込み、視界が元に戻るまでしばらくかかった。
時が経ち、落ち着いてくると、気にならなかったショーツの下の不快感や、自身がしたことの背徳感が一気に訪れる。
そして彼らに気づかれていないかという恐怖で、彼らが図書室を出て行くまで一歩も動けなかった。
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