ツンデレは女子も好き
2025.8.30 あゆちゃん挿絵 Aiで書いてみました
「おはよう、蓮」
「おはよ、蓮くん」
教室に入ると2人の美少女が俺を待っていた。
地毛にしては明るめの茶色い髪のショートヘア。少し気の強そうなハッキリとした目元に、綺麗な鼻筋。
血色の良い紅い唇に制服の上からでもハッキリと主張する体のラインは、どんな男も彼女を女として認識してせざるを得ない魔力を秘めている。
その隣にはまた雰囲気の違う少女。
少しウェーブを描いた長い黒髪を緩く束ね、肩の前を通している。
その綺麗な黒髪が彼女の肌の白さをより一層際立たせる。
綺麗な二重まぶたはハーフのような印象で、スラリと背も高く顔も小さい。
誰もが彼女のことをモデルのようだと言う。
実際、モデルとしての道も歩み始めているのだが…
そんな2人の美少女は、何を隠そう2人とも俺の彼女なのだ。
齢16にして俺は世の男の夢と言うものを叶えてしまったのではないか。
そう思えるほど、彼女達自分の事を好いてくれていることが誇らしく、嬉しい。
ほら、今もクラス中の男子達が俺を殺さんとせんばかりの視線で睨みつけている…
ほんと殺されたりしないよね…またナイフ持った人に襲われたりしないよね?
なんて恐怖に駆られつつ2人に挨拶をする。
「お、おはよう。あゆは学校来て大丈夫だったのか?体は問題ないか?」
「大丈夫だよ。それに休んじゃったら蓮くんに会えないし…」
しおらしく言う彼女は庇護欲を駆り立てる。
それにしてもあゆはアレだ、付き合うと甘えん坊になるタイプだ。
ちょっと前までのツンツンとした感じが今は全くない。
彼女の中で俺は特別な存在なんだと感じることが出来てなんだか嬉しい。
なんて思っていると、聞き耳を立てていた周りが騒ぎ出す。
「おいっまじかよ、名前で呼んだぞ…」
「しかも会えないと寂しいみたいな事言ってるし」
「じゃああの記事はガチってことかよ」
「えぇー、伊藤君ってそんなに素敵な人なのかなぁ」
「でも体張って守られたら私もキュンとしちゃうかもっ」
「けど二股だよー??」
男子は怨嗟の言葉を、女子は俺の詮索をと言った感じでざわつく。
「蓮は有名人になっちゃったねぇ。
なんてたってこの私と、あゆまで自分の物にしちゃったんだもんねー」
イタズラな表情でニヤニヤと茜が冷やかしてくる。
「こんなに可愛い2人が俺の彼女なんて俺は幸せ者だ」
「なっ…!?みんなの前で可愛いなんて…やめてよ」
「蓮くん…」
照れる茜と、熱っぽい瞳で俺を見つめるあゆ。
後で暗殺されるかもしれないが、周りにキチンと2人は俺の女だとアピールしておく。
「何?あの記事本当なんだ。朝からイチャイチャしちゃって。私を差し押さえてNo.1、2のお二人が1人の男にご執心だなんて」
そこに現れたのは
高くよく響く声、着崩した制服。
その幼なげな顔によく似合う、カールのかかったツインテール。
幼い顔に似合わず背は160センチ近く、スタイルもいい。
急に現れた2年生に対して、教室や廊下で俺らの様子を伺っていた一年生達はさらにざわつく。
彼女は確か…
「こんにちは、橘先輩」
あゆが挨拶をする。
そうそう、橘舞花先輩だ。
2年の中でも目立つ存在で、人気ランキグではNo.3だった人だ。
「天下の川本あゆちゃんが2番目の女でいいの??ちょっと顔がいいくらいで、あなた達2人が夢中になる程の男には見えないけど…」
ジロジロと品定めするように、その大きな瞳で俺を見てくる。
「そんなことないですよ。先輩の周りには命の危険が有っても守ってくれるような男性はいますか?」
茜がにこやかに応えてはいるが、少し苛立ったような声音だ。
「ふんっ!だからって二股公認なんておかしいわ!!あなた達2人がそんな安い女だったなんて…」
「オイ、取り消せ。この2人は安くなんかねぇよ」
自分でもビックリするくらい低い声が出た。
確かに二股公認なんて側から見ればおかしい事だろう。
だが、彼女らが安い女扱いされるのは許せない。
先輩だろうが知ったこっちゃない。
「え…ご、ごめんなさい」
いきなりのタメ口に、低く大きな声で言われたので流石に年上と言えど女の子。
少し怖かったのか、涙目で謝ってきた。
なんだか悪い事をした気分になる。
「いえ、俺こそすいません。ただ彼女達を悪く言わないでください。悪いのは2人を好きになってしまった俺なんですから」
「ふんっ!とりあえずもういいわ!かえる!」
何しに来たんだろう…
ズンズンと橘先輩が去っていったところで、ホームルームの鐘が鳴る。
「茜、蓮くんまたね」
鐘が鳴ると同時にあゆは自身の教室へと戻って行った。
国語に数学、英語に社会と退屈な授業を乗り越えなんとか昼休み。
自分磨きを怠るなとの師匠の命により、授業中に寝る等許されない。
勉強も立派な自分磨きなのだ。
そして昼食も気を抜いてはならない。
鶏胸肉とブロッコリーのサラダという筋肉のためのメニュー。
食事を楽しむというより、身体のための栄養素を補給している感覚だ。
食事を終えると、運動場に出て大きい鉄棒で懸垂と足上げ腹筋をして教室に戻る。
「もー、蓮くんどこ行ってたの」
教室に戻るとあゆが俺の机に突っ伏したままそう言ってきた。
「ちょっとな」
そう簡単にバラす訳にはいかない。
努力は隠れて行い、結果だけを見せつける。
それこそが男なのだ。
「茜と3人でゆっくり話したかったのにー!茜はバレー部の集まりがあるって行っちゃったし。」
ぷくーっと頬を膨らませる彼女はまたなんとも可愛い。
「わるいわるい、寂しかったな」
「うん、寂しかったー。寂しかったからチューして?」
そう言って唇を突き出して来る彼女。
そんなバカップルみたいな真似できねーよと思うのだが、こういうのにも細かく応えてあげるのが大事なのだと師匠は言っていた。
そして、さらに女の子はツンデレが大好きらしい。
ワザと一度断る素振りを見せて、不意に決めるとポイントが高いと教えて貰ったので実践してみようと思う。
「ばーか、教室だぞみんな見てる」
「寂しかったのにぃー、ちぇケチー」
「ほらもう鐘が鳴るから自分の教室に戻れよ」
「はーい」
丁度良く鐘もなり、トボトボと帰って行くあゆ。
「あゆ、忘れ物だ」
「え?うそ??」
キョトンと振り返ったところで額に軽くキスを落とす。
一応教科書で隠しはしたが、何名かの目敏い女子達がきゃあっと湧き立つ。
「あぁー!何してるのっ」
そこへ茜も戻って来た。
学校でイチャつくのは禁止だなんだと言っている茜に、じゃあ茜には無しなと言い大人しくなった所で俺は掃除へと向かった。
あゆは顔を赤くし無言のまま戻っていった。
掃除が終わり教室に戻ると茜が、あゆだけズルいよと泣きそうになっていたので教室から連れ出し、人気のない階段で唇にキスすると満足そうにしていた。
5限目が始まろうかという時、あゆからLINEが届く。
『さっきのでスイッチ入っちゃった。今日も両親居ないからウチに来て』
ツンデレ作戦は効き過ぎたようだ。
何のスイッチかは知らないが、放課後のあゆとの時間に、想いを馳せつつ残りの授業に挑むのだった。
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