九死に一生を得る
展開に悩んで久しぶりの更新となりました。
申し訳ないです。
感想、評価、せめてブックマーク頂けると嬉しいです。
「私最低だね…」
浴室で、部屋で、本能の赴くまま精魂尽き果てるまで互いを求め合い、未だに身体を紅潮させたままのあゆは俺の腕の中でそう呟いた。
茜の事を気にしてのことだろう。
俺としても自分は最低だと思ってしまう。
裏切った。
親友を守ってあげてと言っていた心優しい彼女の気持ちを裏切ってしまった。
あれほど興奮していた気持ちは少しづつ冷めて行き、茜への罪悪感が大きく膨らんでいく。
「あゆは悪くない、全部俺が悪い」
「そんなことない、私が家に入れたから」
「雨に濡れた俺をそのまま返すような子じゃないだろ?」
「そうだけど…」
「そうだからあゆに惹かれたんだ」
「蓮くん…」
「茜のことは任せろ、俺は2人を必ず幸せにする」
茜への罪悪感で押し潰されそうな気持ちを跳ね除けるように、ハーレムを築くという目標を自身で再確認するように宣言する。
乾いた制服に着替え、あゆの家を出る。
すっかり日も暮れかけているが雨も止んでいる。
あゆに再度、心配するなと声をかけ別れる。
茜に謝るのは早いうちがいいだろうと思い、LINEでいつも走っている河川敷に部活帰りに寄ってほしいと伝えた。
あゆの家を出る前に送ったがそろそろ返事がくる頃かと携帯を確認しようとするが、ポケットにもバッグにも見当たらない。
あゆの部屋に忘れてきたか…まあ、河川敷で待っていれば来るだろうし、あゆが明日学校に持ってきてくれるだろうから取りに戻る必要は無いだろう。
河川敷にいくつか置いてある木のベンチ、いつも茜とよく座って話す定位置に座って彼女が来るのを待つ。
まだまだ暑いが、たまに吹く涼やかな風が少しづつ秋へと近づいている事を知らせる。
それにしても、2人の美少女と関係をもってしまった。
夏休み前まで想像もつかなかった出来事だ。
うちの学校の中でも人気ナンバー1,2 といっても過言ではない2人をだ。
茜は運動で鍛えられた、ハリのある弾力が素晴らしく反応はとても初心で恥ずかしがり屋だ、ついつい虐めたくなってしまう。
あゆはあの清楚なルックスとは裏腹に、すごかった。
初めてとは思えない程の乱れっぷりと、欲求の強さだった。
細身だが、胸や腰回りはしっかりと女性らしくとても柔らかい。
あぁ、思い出すだけで悶々と…
「オォ、オイっお、おまえ」
2人の事を思い出し、周りを見ていなかった。
話しかけられて初めて、目の前の存在に気付く。
認識した途端、呼吸が止まる。
心臓も一緒に止まったのではないかと思う。
メガネに、小太りの中年男性…右手には果物ナイフ。
再度動き始めた心臓はカンカンカンと警鐘を鳴らすかのように大きく鳴り響き、一瞬で全身から汗が吹き出すのを感じる。
ヤバい、ヤバいんじゃないかコレは。
あゆを付けていたストーカーは想像以上にヤバい奴だ。
「なっなに無視してんだっよっ…」
肩を震わせながらそう言ってくるストーカー。
「…な、何か御用ですか」
瞬きすることさえ危険と感じる、俺は襲われた時の事を考えカバンをしっかりと握りゆっくり立ち上がる。
相手から目を離さず、少しづつ、少しづつ引きずるように足を動かし、距離を取る。
「おまっおまっあゆちゃんに何したんっだっ…!」
「別に何も…」
「ウっ、ウソつくんじゃないよっ、家に入る所も、カーテンの隙間からああ、あゆちゃんの部屋に入るっところもみっみたっんだかはなっ!!」
最悪のタイミングだ、最悪のタイミングで見られ、刺激してしまった。
というか俺のところに来たのが先か?あゆは無事なのか??
俺が家から出たのを確認して付けてきたには時間が掛かっている、まさか先にあゆを襲ったりしてないよな…
「蓮??」
「茜…」
制服に身を包んだ彼女が、不安そうな表情でこちらを見つめる。
マジかよ、タイミング最悪の日だな…
とにかく茜だけは絶対守る。
「茜…いいから走って逃げろ」
「でも…」
「おまっ、おまっ、あゆちゃんに手出しときながらうっ浮気かよっ」
「早くっ!!」
俺が叫ぶと同時に奴も突っ込んでくる。
両手で果物ナイフを持ち、こちらに駆けてくる。
ナイフの軌道にだけ集中し、鞄を盾にする。
クッソ、こんな事なら教科書入れて帰れば良かった。
ペンケースと財布くらいしか入ってない、薄っぺらな盾は教科書を引き出しに置いてきた事を後悔させる。
「あゆちゃんにちかづくなぁぁあっ!」
両手で広げるように握った鞄でなんとか受け止める。
ナイロン製の生地は突かれたことにより裂け、ナイフの先端部分が少しだけ貫通してきている。
突っ込んできた奴の体重を支えきれず、そのまま後ろに転倒する。
「蓮っ!!誰か助けてくださいっ!!」
茜の叫ぶ声が聞こえる。
倒れた俺に馬乗りになるようにストーカー男は覆い被さる。
鎖骨の辺りに痛みが走り、貫通したナイフの先が刺さったことを知らせる。
「茜っ!!いいから逃げろ!!!」
「しっ、死んじゃえぇえっ!」
「クッソ…!」
ナイフを引き抜き、再度振りかざしてくる。
殺されるくらいなら腕を犠牲にしてでも防いでやる。
両腕で防御体制に入り、やがて来るだろう痛みに備える。
その瞬間白い影が俺に覆い被さっていた男に突っ込んだ。
「あゆっ!?」
茜が叫ぶ、はぁはぁと息を切らした彼女が俺の携帯を片手に奴を突き飛ばしていた。
「あゆっ、危ないぞ!俺はいいから逃げろっ!!」
「あ、あ、あゆちゃん、君の代わりにその悪い男を退治してあげるよ。
き。きみは騙されてる。ほらっ浮気ししてるんだよっ他にも女がいるんだ。」
「そんなの頼んでないっ!!この人に何もしないでっ!」
あゆが必死にそう叫ぶ。
だが、その後も奴は騙されてるだなんだと一人でブツブツ呟いている。
今のうちに2人だけでも逃がすしか…
「ぶへえっ…っ!?」
超高速でドローンが奴の顔面めがけ飛んできた。
飛んできたというよりは跳ばされてきたというべき速度。
「俺様、最近出番すくねぇからよぉ。いいとこ持ってかせてもらうぜぇ」
「カイくんナイスコントロールっ」
「師匠、マミさん…」
振り返ると、そこにはギャルを引き連れたマッチョが立っていた。
未だ、顔を抑えてうずくまる男にゆっくりと近づき持っていたナイフを蹴り飛ばす。
「オイ、テメェ俺のドローン壊れちまったじゃねえかよ…」
プロペラが曲がってしまったドローンを確認し、ストーカー男の顔をメガネの上から掴みアイアンクローをかます。
「いだっいだだっっ!!たすっ!たすけてっ!!」
「コラっ!君たち何してるんだ!」
そこへ、騒ぎを聞きつけて誰かが通報したのか警察がやってきた。
俺は安堵で倒れ込み、そこへあゆが泣きながら抱き着いて来る。
「よかったぁっ…よがっだよぉっ」
あーあ、せっかく綺麗な顔をグジャグジャにして…
そこへ茜も駆け寄ってきて、俺の心配をしてくれる。
「蓮っ!怪我は!?大丈夫?!」
「あぁ、大丈夫だ。安心して腰が抜けただけだから」
それよりも茜に謝らなくては。
「茜、ごめん。俺さあゆの事も好きになっちゃったみたいなんだ」
「そう…なんだ…じゃあ私は身を引いた方がいいのかな」
「いや、そうじゃ無いんだ。俺は茜のことが大好きだし、大切だ。
だけど同じようにあゆにも惹かれて、俺は彼女と身体の関係を持ってしまった」
「あかねっごめんなさいっ…」
あゆも未だに涙を零しながら謝る。
「体って…エッチしたってことだよね…」
「あぁ…君を裏切ってしまった、傷つけてしまった、都合が良いのは重々承知の上でお願いだ。
俺は必ず2人とも幸せにする。
だからっこれからも側にいてくれないか」
「ホント、なにソレ。サイテー…」
そりゃそうか、そうだよな。
なんてったてって親友に手を出してしまったんだ、呆れられて当然だよな。
ハーレムなんて無理だったんだ、どちらかを手に入れようと思ったらどちらかが離れいく。
彼女を裏切った罰だ。
「だけど…さっき刺されそうになったとき蓮が死んじゃうかもって本気で思った。絶対に嫌だって思ったよ、私は蓮が大好きだもん」
泣きそうになりながら彼女は続ける。
「けど、私は動けなかった、あゆが体当たりで蓮を守ってくれなかったら蓮と一緒に居られなかったかもしれない…だから…いいよ、あゆも蓮も許してあげる。そのかわりぜったい幸せにしてよね」
「あぁ、必ず2人とも幸せにするよ」
「あかねぇぇっ…うぇーんっ」
いい子、いい子とあゆを慰めながら、彼女は美しく俺へと微笑んだ。
ようやく公認ハーレム開始です




