全て夏のせい。
ギンギラに輝く太陽にウンザリする。
なんだよ、お前だけ輝きやがって
俺の青春だってそのくらい輝くと思ってたのに。
そんな恨言をお天道様に垂れながら、少しでも太陽の光から逃れようと下を向いて歩いているとドンっと壁にでもぶつかったかのような衝撃が走り尻もちを付いていた。
「おおっと悪りぃな」
そこにはイケメンが立っていた。
長くも短くもない黒髪、シミ一つ無い白いTシャツに細身の濃紺デニム。
今流行りの韓流系のイケメンだ。
柔らかな雰囲気を纏っているが切長な瞳は
冷ややかな印象を受ける。
背は170センチくらいだろうか同じくらいの身長なのに俺は弾き飛ばされて、彼は平然と立ち手を差し伸べてきた。
「いえ、俺の方こそすいません。下を向いたまま歩いてたんで…」
手を取り立ち上がったが、なんだこの匂い
男なのになんでこんないい匂いするんだこの人。
イケメンは匂いもイケメンってかこの野郎。
「海斗、高校生いじめちゃダメでしょ。」
「それより海斗さん、暑いし早く2人になれるとこいこーよ」
駅から降りてきたのか2人の女性がカイトと呼ばれたイケメンに声をかける。
「俺がそんなことする男に見えるか?
ぶつかって来たのを優しく手を取り起き上がらせてやってたとこだよ、
なぁ少年?
凛はナチュラルに遥香を置いてこうとすんなよ。」
色白小柄なお嬢様系美少女と正に大人の女性と言った2人を侍らせている。
小柄な方は自分のバッグとは別に明らかにメンズ物のバッグを手に持っている。
このイケメンは手ぶらだしおそらくこのイケメンに持たされているのだ。
なんでこんな、女の子に荷物を持たせるような奴が美女2人も引き連れることができるんだよ…
それに比べて俺は何で彼女の1人どころか女の子との夏休みの予定も無いんだ。
暑さと圧倒的理不尽な現実の前に俺はおかしくなっていたのだろう。
「なんで…こんな男より絶対俺の方が女の子に優しいハーレム主人公になれるのに」
気づいたらそんな事を口にしていた。
「え、なにこの子。海斗さんのこと悪く言うつもり?」
彼氏か何か知らないが、自分の男を悪く言われ気分を害したようで小柄な方の女性は
可愛い顔に似つかない厳しい表情で睨んでき、もう1人はため息を吐いている。
「まあ、待てよ凛。
少年、、お前モテねぇだろ。」
核心を突いた返しに、我に帰った俺は謝ってその場を後にしようとした。
「うっ…すいません。つい本音が」
「まぁ、待て。
面白いなお前、俺の弟子にしてやるよ。」
その柔らかな雰囲気とは裏腹に力強い腕に引き止められる。
「で、弟子?」
言われた言葉の意味を理解できず聞き返した。
「あぁ、この最強ナンパ師YouTuberの俺様の弟子にしてやる。
ありがたく思え?新しい企画だ『モテない高校生をナンパ師の力でモテモテにしてみたーっ!』」
あぁ、暑さで俺はどうにかなってしまったんだそう思った。