第13札 戦術カードセット!
宙宇基陣は
美羽、海、という二人の少女と
カードゲームで三つ巴戦をする事に成った。
三つ巴戦……三人共が敵同士、である。
「バトルモンスターズ」というカードゲームは
プレイヤーは召喚士で
モンスターを召喚して戦わせる、という設定だ。
故に。
基本どのカードでも
モンスターとして使えるルールなのだが
モンスターの活力、戦える力を表す部分に
0が有ると。
自動的に其のカードは
モンスターとしては使えない事に成る。
其して「九枚ルール」、
最初山札から手札を九枚引くルールだと
九枚全部がモンスターとして使えない、
等という事態にでも成ったら。
其のプレイヤーは其の時点で負けと成る。
のだが。
其処迄はルールに明記されてはいない。
自分で気付いて
山札を構築しろ、という訳だ。
九枚引いた手札から
モンスターを選んで出したら。
次は戦いの方針を決める「戦術カード」だ。
「モンスターカード」は
向かい合う相手から見て
正面に成る様に横表示するが
「戦術カード」は
モンスターカードの下に逆向き横表示でセットする。
混乱を避ける為、なのだが。
「モンスターカード」は
ゲーム中変更不可なのに対して
「戦術カード」は変更可能で。
戦術、の名の通り
相手に合わせて戦い易くする為の札なのだ。
「戦術カード」も後出しすると
ゲームとして問題なので
先ずは裏返しで場に出し。
皆揃ってから
改めて表返す。
初めに表返すのは
召喚モンスターが二体と少ない陣だ。
美羽と海は三体ずつ召喚している。
陣の召喚モンスター
海の殺し屋シャチ 属性:水4 技:オルカアタック
命中 火4≧土2 威力 水6/風3
古代翼竜プテラ 属性:風4 技:裂空の顎門
命中 風5>土2 威力 水4/火4
シャチの戦術カード
凶暴針毛獣ヤマアラシ属性:火3 技:毛針
命中 火5>水2 威力 土3/風2
プテラの戦術カード
闇に眼光るヤマネコ 属性:火2 技:ダークスラッシュ
命中 風2≧水2 威力 火3/土2
陣の札を見て。
「あらw?」
美羽は意外そうな声を上げ。
「ヤマアラシ?!」
海は叫ぶ。
「ジュードーのワザっ?!」
「其っちが出る方が珍しいなっ?!」
陣は海に盛大に突っ込んだ。
「どういう事かしらw?」
美羽が面白可笑しそうに訊くと。
「ジュードーでね!
ぶわぁーって投げるのっ!」
海は一生懸命に言うが。
「説明に成っていねえよっ!」
又しても陣が突っ込む。
「……通常はだな!」
仕方なさそうではあるが。
陣の解説が始まる。
「相手の襟を掴む手と袖を掴む手は
其れぞれ左右、なんだが。
袖を掴む手と同じ側の襟を掴んで
足を払って投げる、
其れが「山嵐」だな!」
「其のトゲトゲの子は
柔道技と関係有るのかしらw?」
美羽は巫山戯て言っている風だが。
因みに美羽は
札のモンスターを「子」と表現する。
「有る訳無いだろう!」
陣の返事は大真面目だった。
因みにヤマアラシは
一応齧歯目、ネズミやリスに近い生き物である。
「毛バリってキタローみたいだね♪」
海は純粋に面白がっているが。
「あー毛は飛ばないけどな!
刺されば相手に刺さったまま残るし
ヘビなんかがヤマアラシを丸呑みにしたら
ヘビも死んじまう!
肉食獣も襲えない
怖い生き物だな!」
陣は疲れた様に応じるが
しっかり海のネタを拾っている。
「凶暴なのかしらw?」
美羽が更に訊いてくるが。
「ああ! 草食獣とは思えない程にな!」
陣はさらりと返し。
「ソーショク系なのにねえw♪」
海は楽しそうに何かを言っている。
次に美羽の札だが。
美羽の召喚モンスター
幻想巨鳥ロック 属性:風5 技:蹂躙の爪
命中 土5≧水3 威力 風6/火4
飛空怪獣ワイバーン 属性:風4 技:毒針の尾
命中 土4≧風5 威力 火4/水2
猛禽の王者イーグル 属性:風3 技:荒鷲の爪
命中 風5>水2 威力 土3/火2
ロックの戦術カード
鉄拳爬虫人類キーパ 属性:土4 技:正拳逆突き
命中 火4≧水3 威力 土5/風3
ワイバーンの戦術カード
凶悪に荒ぶるヒグマ 属性:土4 技:強欲の牙
命中 火4≧風2 威力 土6/水3
イーグルの戦術カード
ランフォリンクス 属性:風3 技:嘴の牙
命中 風5>土1 威力 水4/火2
「……」
陣は無言だが。
何か言いたそうだった。
「陣さん、思った事は言って下さい」
美羽は気付いて
陣を促す。
「……怒るなよ?」
と念を押しつつ
陣は言い始める。
「戦術カードは
成るべくウェイトが低めな札を出すべきだ。
特にワイバーンの戦術カードは不味い」
「理由を訊いても?」
美羽の雰囲気が。
明らかに冷たく成った。
「怒ってんじゃあねえかっ?!」
陣は焦った様子で。
「いぃえぇえ?
後学の為に
是非ともご高説を賜りたいですわぁ?」
やはり美羽は
言葉に刺が有り有りであった。
「所で「うぇいと」って、ナニ?」
海が
空気を読まず口を挟む。
其れに陣は。
「大丈夫か?! おい!
大会じゃあ周りは外国人ばかりだぞ?!
最低限のルールは把握しておかないと
いい様に誤魔化されるぞっ?!」
大慌てだった。
「せつなが居るからダイジョウブだよ~♪」
神威覇征抖が連れてきた大会の選手には
其れぞれお付きの成人女性が居るが。
海のお付きは「せつな」さんという様であった。
陣がせつなさんに目を向けると。
何やら。
助けを求めるかの様な雰囲気が。
陣は苦い顔で。
「カードの!
横表示だったら右上に成る
モンスター名の後の位置のコレな!」
其の位置には
札の属性を示す図形と
数値を表す記号が重なっている。
例えば
シャチなら「水」「4」
プテラなら「風」「4」
ヤマアラシなら「火」「3」
ヤマネコなら「火」「2」
である。
「コレかあw♪
もんすたーのレベルかと思ったゼw♪」
海は何処迄も呑気であった。
陣は更に苦々しく。
「レベルと思っても間違いじゃあないだろうけどな?
此のゲームは召喚魔法で戦うって設定な訳だ!
強いモンスター程使い難い訳だな!
だから「重み」と表現するんだ!」
モンスター以前の
ルールを解説していると。
「あらぁあ?
陣さん、海さんにはお優しいのですわね?
一層ご結婚なされば?」
美羽の態度が更に冷たい。
「どうしろってんだよっ?!」
陣は板挟みであった。
だが何とか、
本当に辛うじて
陣は美羽への説明を始める。
「攻撃は
戦術カードと行動カードのウェイトの合計値が
モンスターの能力値以下でないと出来ないだろう?
戦術カードだけで能力値以上のウェイトにしたら
此のターン絶対に攻撃出来なく成る!
……だよな?」
陣は最後に確認を加えるが。
レアカードが有れば
話が覆るからだ。
が。
レアカードは
普通は持っている者が居ないから
レアカードな訳で。
美羽はどうなのか。
判断が付かないのである。
美羽は。
「成る程」
と。
しれっと
ワイバーンの戦術カードを替えようとする。
「替えちゃ駄目だろおお!!」
陣も流石に美羽に突っ込む。
「此れは練習なのですしw?」
美羽は白々しいが。
陣は厳しく言う。
「練習だからこそ好き勝手したら
収拾が付かないだろう!
良いじゃあないか!
負けたって損する訳じゃあなし!
唯単に
此処で覚えておけば良いんだ!
大会で失敗しない為に!!」
しかし美羽はぼそっと。
「負けたら損しますわ?
精神的に!」
ぼそっとはいっても
陣にも聞こえ。
「はあ?」
全く納得はしないが。
はぁぁぁぁぁ……っ
今度は
陣のお付き、さつきが
聞こえよがしに溜息を吐く。
「何なんだよ……!」
やはり陣は納得出来ない顔だが。
さつきは呆れているのだな、位は分かる風だ。
「あたしはどうなんだー?
不味いかー? 陣!」
海は全く空気を読まず
何処迄も呑気に訊いてくる。
海が場に出した札は。
海の召喚モンスター
人鳥コウテイペンギン 属性:水4 技:水中飛行
命中 風3≧火3 威力 土4/水5
死の顎門イリエワニ 属性:水4 技:デスロール
命中 火3≧風2 威力 水6/土4
リビアタンメルビレイ 属性:水5 技:デスファング
命中 土4≧風3 威力 水6/火5
コウテイペンギンの戦術カード
海豚ハンドウイルカ 属性:水4 技:ドルフィンジャンプ
命中 風5≧土2 威力 水6/火2
イリエワニの戦術カード
真海豚マイルカ 属性:水4 技:テイルスラップ
命中 火4≧土2 威力 水5/風4
リビアタンメルビレイの戦術カード
人鳥オウサマペンギン 属性:水4 技:トボガン
命中 土3≧火2 威力 水6/風4
陣は
海の札をしばし見て。
言う。
「だから戦術カードは
成るべく低い方が良いんだけど。
比較的、
何とか成りそうじゃあないか?
比較的な!」
「おーし!
陣は勝てるって言った!
あたし勝てるんだなw?」
海は楽観的、というか
何処迄も自身に都合良く考える様だった。
「言っていないだろおおおおお!」
陣は
女性達に振り回されっ放しであった。
2021/10/26
修正が発生致しました!
「人鳥コウテイペンギン」の能力配分が間違っておりました!
コウテイペンギンが登場して三札目からずっと!! でした!
訂正してお詫び申し上げます!(泣)