第12札 召喚されたモンスター達
宙宇基陣は
少女二人と三つ巴戦をする事に成った。
少女達は名字は名乗らなかったが
美羽、海と言った。
三つ巴戦だが。
三人が全員敵同士という事である。
其して「バトルモンスターズ」というカードゲームは
各プレイヤーが任意に三体迄
モンスターを召喚して戦わせる、
という設定であった。
召喚したモンスターは。
陣が二体、少女達は三体ずつだったのだが。
海の召喚モンスター
人鳥コウテイペンギン 属性:水4 技:水中飛行
命中 風3≧火3 威力 土4/水5
死の顎門イリエワニ 属性:水4 技:デスロール
命中 火3≧風2 威力 水6/土4
リビアタンメルビレイ 属性:水5 技:デスファング
命中 土4≧風3 威力 水6/火5
陣は
海が召喚モンスターを開示した時に
待ったを掛けていた。
「語調がオカしかった様に聞こえたんだが?
ソレを何だと思っているんだ?」
陣が言うカードには。
顔が比較的平らなイルカ
の様な生き物が描かれていた。
現存する生き物では
シロイルカが近い形だろうか。
色は全体的に暗いが。
唯。
ソレが食い付いている獲物が。
ソレより小さいクジラであった。
クジラとサカナで決定的に違うのは。
尾鰭を。
クジラは縦に。 サカナは横に振る。
海は朗らかに応える。
「リビアってオンナノコの名前でえw♪
「たん」っていうのは
「ちゃん」より可愛いコトバw! でしょ?
オタクが使う様なw!
で!
メルビレイが名字?」
「違えよっ!
リビアタンってのは
英語的に言えば
リヴァイアサンだっ!」
陣は待ち兼ねた様に突っ込む。
が、やはり海は朗らかで。
「リヴァイアサン!!
ゲームで有名な
超ドラゴン?!」
対して陣は
既に疲れた様子で。
「超ドラゴンって何だよ?
『旧約聖書』に出てくる
海の怪物な?
話に拠っては
「七つの大罪」の「嫉妬」の悪魔
ともされているが!
実は『聖書』に書いてある訳でもない
其処等の奴のテキトーな話だなっ!」
美羽はギョッと息を詰めていた。
「……博識ですわね?」
「いや。 其んなでもない」
陣は其う答えるが。
「謙遜も過ぎると嫌味ですわよ?
陣さん」
「って!
神威と同じ事言うな?!」
陣の何気ない美羽への返しに。
「陣って!
神威様と親しいのかよ?!」
海が妙に食い付く。
「神威「様」って何だよ?!
別に俺達
謙る立場でもないだろっ?!
其れだけだぞ?!」
陣は大いに慌てるが。
「確かに其うかも知れませんが。
割り切っている陣さんも相当ですわよ?」
美羽は陣にこそ呆れていた。
「で?
海の悪魔さんに付いての解説はお終いかしら?」
「いや。
ソイツは「リヴァイアサン」の名を与えられた
古代生物なんだ!
其れだけに超凶悪な生き物だな!
クジラを食うクジラだったと言われている!
「メルビレイ」は『白鯨』の作者に因んだ名前だ!」
「吐くゲイ!」
海が軽い調子で
何かを言うが。
「又変な風に聞いているな?!」
陣は海のオカしな語調を読み取った。
「ふふふw!
『白鯨』は白いクジラですわw? 海さんw!」
美羽は余裕を以て訂正するが。
「おぉおぉお♪
其うだったのかぁあぁあw♪
お前スゴいヤツだったんだなあ?」
海は何やら喜んでいる様だが。
「出したカードを勝手に手に取るな!
戻せ!」
ゲーム的には問題有る行動をした様だった。
「此う成ると。
海さんが召喚した子としては
ワニさんが少々浮きますわねw?」
美羽は海の召喚モンスターに
更に突っ込んだ質問をするが。
「いや。
「イリエワニ」は海水にも強いワニなんだ。
其して
ギネス記録の最大のワニでもある」
陣はさらりと答える。
其れには海が朗らかに。
「陣はハクチだなーw♪」
「バカにしてんのかっ?!」
陣は即座に拒絶する。
「えー? さっき美羽も言ったじゃん?」
海は本気で不思議そうだが。
「言ってねえよ!!」
陣は激昂し。
「「博識」ですわw? 海さんw!」
美羽がさらりと訂正する。
「やったあw♪
モンスターの事を知ると
グッと思い入れが増すなw♪」
海は変な事を言うが。
喜んではいる様だ。
「羨ましいですわw?
わたくしの子達には
何か無いのかしらw?」
美羽は陣に催促している様だ。
美羽の召喚モンスター
幻想巨鳥ロック 属性:風5 技:蹂躙の爪
命中 土5≧水3 威力 風6/火4
飛空怪獣ワイバーン 属性:風4 技:毒針の尾
命中 土4≧風5 威力 火4/水2
猛禽の王者イーグル 属性:風3 技:荒鷲の爪
命中 風5>水2 威力 土3/火2
陣も付き合いが良いのか
語りたい性格なのか。
「イーグル……というか鷲は分かるよな?」
「ええw! 女の子は欲張りなのですw!
欲しいものは鷲掴みw! ですわw!」
美羽の。
少なくとも見た目からは予想外の言葉に。
「……
あー其う……」
陣は乾いた返しをし。
「其うだよなあw♪
欲しいものは丸齧りだぜっw♪」
海は召喚モンスターに合わせた様な表現をする。
兎に角陣は続けるが。
「ワイバーンとロックは架空の生物だから
作り話に拠ってブレが有るが」
「え?
ロックさんが架空の存在なのですか?」
美羽はキョトンとする。
「有り得ないだろお?」
陣が其う言うロックは。
一見普通の猛禽だが。
良く見ると
鷲掴みにした獲物はゾウだった。
其れもゾウが
手、というか鉤爪にスッポリと収まるサイズだ。
「トリはな!
兎角体を軽くしなければ飛べないんだ!
其れで骨がスカスカなんだが!
あんまりデカいと骨がスカスカでも物理的に無理に成る!
自然トリの大きさにも限界が有るんだ!」
「あらあ?
其うなのですわねw?」
美羽も納得した様だ。
「唯!
骨がスカスカなのは
飛ばないのならば! デカい体に成れる素質でもある!」
「まあw?」
陣が続ける説明に
美羽は顔を綻ばせる。
「現存する陸上の生物では
ゾウが一番デカいな?
けどゾウ位でも
物理的にかなり無理しているんだ!
だというのに。
恐竜は明らかに
ゾウよりデカく成れるよな?
骨がスカスカだから、なんだ!」
「えー?
骨がスカスカじゃあ
カンタンにポッキリ折れちゃわない?」
此処で突っ込んだのは海だ。
「余りにもデカいと
重量の方が問題に成る。
だから骨密度が高い生き物の方が
デカさに限界が有るんだ!」
「トリさんも飛ばなければ
恐竜位大きく成れるのかしらw?」
美羽ははしゃいでいる様だ。
其れに陣が続ける言葉は。
「と言うより
トリこそが現存する恐竜だぞ?」
「まあぁあぁあw!」
美羽は大はしゃぎな様だ。
「あああああ!
狡い!」
一方海は不満気だ。
が。
「何が狡いんだよ?
其っちにはペンギンが居るだろう!」
「え? ペンギンってトリ?」
「トリだよ! 「人鳥」って書いてあるだろう!」
「おぉおぉ!
あたしスゴい!」
機嫌が直った様だ。
「所で
「人鳥」って、どういう事かしらw?」
美羽はもう
何でも陣に訊けば良いという風か。
「ペンギンは二足歩行だからな。
其う呼ばれる」
やっぱり陣はさらりと答えるのだが。
「おーw♪
陣もプテラノドン持っているしw♪
あたし達みんなキョーリュー持っているんだなw♪」
海は喜んでいる様だが。
「いや翼竜は恐竜じゃないぞ?」
陣はさらりと否定する。
陣の召喚モンスター
海の殺し屋シャチ 属性:水4 技:オルカアタック
命中 火4≧土2 威力 水6/風3
古代翼竜プテラ 属性:風4 技:裂空の顎門
命中 風5>土2 威力 水4/火4
「「えぇえぇえ?!」」
美羽と海、二人が驚くが。
「翼竜は空飛ぶ爬虫類だな」
陣はあっさりと説明する。
「ハ虫類が飛ぶのかよ~!」
海は納得していない様だが。
「だから飛んで
サカナを食っていたんだろ?
プテラノドンは!」
「何でサカナ食うんだよ?!」
「何で怒ってんだよ?!」
陣も困るだけだ。
「あー……!
兎に角恐竜というのはだな!
腰の骨で区別するんだ!
「竜盤目」と「鳥盤目」という腰の骨が
恐竜! だな!」
「で、トリさんは「鳥盤目」なのですわねw?」
美羽は嬉々として先回りするが。
「いやトリは「竜盤目」だ」
陣はあっさり否定。
「何でだよおおおおおおお!!」
海が突っ込む。
しかし。
「俺に怒っても仕様がないだろお?!」
陣も困るだけだ。
だが其れでも説明は続ける。
「恐竜の研究はな!
二転三転するんだよ!!
トリが「鳥盤目」じゃあなくて「竜盤目」なのも
研究が迷走した結果だ!」
「其うなのですわね。
陣さんがイジワルで
引っ掛け問題を出した
のではないのですわねw?」
「俺問題出していないだろお?!」
美羽は面白がっている様子だが
陣は真に受ける。
「其れでワイバーンさんは
どういう腰の骨なのかしら?」
美羽は割と真剣な様だが。
「だから架空の生物だから! 実在しないから!!」
陣はもう必死に否定している。
「ではどういった設定なのかしらw?」
美羽はあっさり掌を返す。
陣は疲れた様子で。
「其れがな!
個人の創作じゃあなくて
広く伝承されているから!
絶対と言えるのは……
爬虫類っぽくて翼が有る、位だな!」
「其うなのですねえw!」
「まあ其の絵の様に
二足で翼が有るのがワイバーンだ!
……ってのは
最近煩く成ったみたいだぞ?」
カードのイラストは其う成っていた。
「陣さん本当に博識ですわねw!
有難う!
此の子達への思い入れが
本当に深まりましたわ!」
美羽が言う「此の子達」はカードゲームであるが。
此の時美羽は真剣であった。
「どう致しまして。
そろそろ満足したか?」
此の時ばかりは
陣も真剣に返す。
「ええw!
では進めましょう!」
此のカードゲームは。
最初に
変更出来ない「モンスターカード」を出すが。
次に
其れぞれの戦いの方針を表す
「戦術カード」を出すのだった。