第10札 挑戦
「中々無礼だなw?
宙宇基w!」
可笑しそうではあるが。
神威覇征抖は宙宇基陣を咎める。
「良いかw?
食うという行為は
文字通り命を奪う事!
な訳だ!
第一に其れを常に忘れては成らない!
故に食う時は「頂きます」!
食い終わったら「ご馳走様」!
と、宣言しなければ成らないのだ!」
「そっ其うだな?」
陣も此処は頷くしかない。
「第二には!
料理として目の前に並ぶ迄には
多くのヒトの手が掛かっている!
殆どは見知らぬヒトだが!
全てのヒト達に感謝を捧ぐ!
拠って!
ボッチ飯であろうが
挨拶はしなくては成らない!
だろうw? 貧乏人w!」
「おっ……おう!」
陣も物言いた気だが
取り敢えず応じる。
「其して第三!
自分自身に言い聞かせる為! だw!
例えボッチ飯であろうとなw!
言葉を発して宣言すると
生活にメリハリが出るぞw?
まあ気を付ける事は
ブツブツ独り言言うのとは違う! という所だなw?」
「……其うかい……!」
此の時には陣も
顔が引き攣っていたが。
「分かったなw?
頂きます!」
頂きます!
今度は神威に合わせて
皆が唱和した。
其して。
やはり盛り付けはコック服の男達で。
未成年の者達は
先ずお付きの女性に頼む、
という形と成った。
「どうぞ」
「あっ有難う!」
陣もお付きの女性、さつきから
料理を受け取る。
陣の料理は和風に
米のご飯、味噌汁、卵焼きであった。
立食なので
装い過ぎると持っていられない。
「食べ辛くないですか?」
さつきは淡々と訊いてくるが。
「元々和食は食器を持つものだから。
まあ、味噌汁も含めて。 何とか大丈夫!」
「左様ですか」
「ザマ悪いヤツは左手引っ込めるけどな?(笑)
マンガなんか見ても程度が知れるの有るし!(嗤)
其れよかさつきさんは?」
「従者は主に
食べる所は見せません」
「あー……!
其っかあ……!」
陣は神威に目を遣って言う。
「現在は陣様に、
見せないのです」
「俺え?
様付けする様なモンじゃないよ?(笑)」
「けじめで御座います故」
「……ご免!」
「恐れ多く御座います」
さつきは素っ気なかった。
立食な為多くは持てないというのも有るが。
程々に装って貰って
程良く腹を満たした頃。
「ゆうき……さん?」
「ほあ?」
グラスに直接口を付けて
飲み物を含んだ陣に。
少女が話し掛ける。
「食べ終わったら
カードゲームの練習致しません?」
「はあ……?
良いけど。
練習って事は
カードの奪い合いはしないで、だよな?」
少女はくすくす笑って。
「奪い合い前提じゃあ
練習も出来ないわ?」
「うん……!」
ならば、と了承しようとすると。
つん
「ん?」
さつきに背中を突かれて
陣が振り向くと。
「……」
さつきは無言。 だが。
厳しい表情であった。
何か気を付けろ、という事だろう。
と受け取って。
目に力を込めて返答とする。
「カードのやり取りは無し! で、
勝負だけ! をするんだな?」
「ええ」
念押しをしてから了承した。
すると。
「あたしもゆうきと勝負したいっ!」
もう一人少女が割り込んできた。
「……何なんだ? コレ?」
陣はオンナノコが寄ってきたからとて
能転気に喜んだりはしなかった。
が。
……ふぅー……!
さつきが聞こえよがしに
溜息を吐く。
陣は声には出さなかったが。
さつきの溜息に迚も不満そうであった。
もう一人少女が割り込んできたら。
最初の方の少女が。
「では。 三つ巴戦を致しません?」
「三つ巴? 出来んのか?」
「出来ますとも?
三つ巴でも。 四人対戦でも。
タッグマッチでも。
攻撃対象に出来るか否か。
其の違いでしか御座いません」
陣の疑問を軽く越える事を
少女はさらりと言う。
「おー! 面白そうじゃね?」
割り込んできた少女はノリが軽い様だ。
三つ巴戦には決まりそうだったので。
「カードの奪い合いは無しで
勝負の練習だけな!」
陣は其れだけは再度念押しした。
そろそろ
未成年の者達みんなが腹を満たしたか、という頃。
神威が司会かの様に
お開きを宣言する。
「食い終わった者は「ご馳走様」と挨拶してから
プレイルームに移動して良いぞw?
大会迄練習はしたいだろうw!
唯!
悶着は起こすなよw?
言っても分からない奴が居るから
警告せねば成らぬのだがw!
暴力沙汰は
自分の立場が悪く成るだけだからなw!」
飲み物を片手に司会進行する神威は。
絵になる、のかネタみたい、なのか
微妙な所ではあったが。
ネタかの如く突っ込めば
又咎められるのであろう。
なので……か。
皆素直に
挨拶をして食事場所から出る。
見るからに
挨拶には慣れていない様子だったが。
「さーって! 楽しみだなっ!」
軽いノリの少女が言うが。
「……所で自己紹介は?
俺は二人を知らないんだけど?」
少女達は「ゆうき」と呼び掛けて来たのだが。
「やーらしっw!」
ノリの軽い少女が叫ぶ。
揶揄っている様子ではあるが。
しかし陣は。
「シャレに成らない事言わんでくれるかっっ?!」
本気も本気だった。
「くすくすw! 痴漢も
冤罪や美人局が結構有るって
言いますものねw?」
「笑っている場合じゃねえええええええっっ!!」
最初に声を掛けてきた少女も巫山戯ている様だが
陣はもう絶叫する。
「つつもたせ? つつって、輪っかを持たせんの?」
ノリが軽い少女は頭も軽い様であった。
結局の所少女達は。
「わたくしはみう。
「美」しい「羽」と書いて美羽ですw」
「あたしはウミ!
広くてでっかい「海」だっ♪」
だそうであった。
「血縁者?」
陣はつい尋ねてしまう。
平仮名なら二文字を引っ繰り返しただけ、という
似過ぎた名前故に。
「全然w♪」
「赤の他人ですわw」
二人共あっけらかんとしたものだった。
「えー……!
名字は?」
陣は汗を一筋垂らしつつ
更に訊く。
が。
「女に名字は必要ないですわw
結婚でもすれば替わるものですしw」
「どーでも良いやーw♪」
との事だった。
若しかすると
家庭が嫌なのかも知れない。
「ゆうきこそナニゆうきだよw♪」
「いや俺名字が「宙宇基」だから!」
「え? 名前は?」
「陣」
「ヨロシクな陣w♪」
「宜しくお願いします陣さんw」
「行き成り名前呼びかよっ?!」
陣は翻弄されっ放しであった。
其してプレイルーム。
基本的には一対一用の
カードゲーム卓が並んでいたが。
大きい円卓も有った。
「おお?!
此れが三つ巴戦や四人対戦用の?!」
「四人対戦なら
大きい四角のテーブルも有りますわw?」
確かに四人用ならば
椅子を四方に置いても
二対二で並べても良さそうな
大きな卓も有った。
主には
一対一の卓がほぼ埋まって
早速対戦が始まっているが。
未成年の者達、詰まりカードゲームの選手は
皆が別個の様である。
其れでいて。
ギラリッ
皆が陣に敵意の視線を向ける。
対戦中の者達でさえ。
「面倒くせえなあ……!」
陣はウンザリし。
「あらあw? 両手に花だから、
かしらw?」
美羽は茶化し。
「は? 手品師か何かか?」
海は頭の軽い返しをした。