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死霊術師の戦い

 ゼロはフェイレスに向かって駆けた。

 ゼロを追って反転しようとする神名をシールド、ジャック・オー・ランタンが阻止し、更にアルファがゼロの背後を守る。

 剣を下げて姿勢を低く滑るように走るゼロ。

 フェイレスに攻撃を仕掛けていたサーベルとスピアがゼロの進路を開けた。


「来たか!」


 ゼロを見て笑うフェイレスの懐に飛び込んだゼロは剣を振り上げた。


「ほう、早いな」


 ゼロの剣を杖で受け流すフェイレス。

 剣を逸らされたゼロはその勢いを使って身体を横に回転させ、フェイレスの首目掛けて剣を振り抜いた。

 フェイレスを休ませず、戦いの主導権を渡さないために次々と剣撃を繰り出すゼロだが、その全てが空を切る。


 ゼロの切っ先を身を翻して躱したフェイレスの背後に回り込んだサーベルとスピアが襲いかかった。

 サーベル達の攻撃を難なく躱すフェイレスはこの攻撃が囮であることもお見通しだ。

 フェイレスがサーベル達から離れた瞬間を狙いシャドウ、ミラージュの聖魔魔法が降り注ぎ、時間差でアルファの氷結、炎撃魔法が撃ち込まれる。

 それすらも捌いたフェイレスだが、突如としてその周囲が暗闇に包まれた。

 アルファの魔法で発生した大量の水蒸気にシャドウ、ミラージュの幻惑を被せてフェイレスの視界を奪う。


「甘いのではないかゼロ?」


 視界を奪ったところでフェイレスには然したる影響はなく、それに乗じて斬り掛かってもフェイレスには届かない。

 だが、ゼロとて伊達に技を磨き、歴戦をくぐり抜けてきたわけではない。


ギャリッ!


 フェイレスの杖に絡みつく鎖分銅。

 一瞬の間に剣から鎖鎌に持ち替えたゼロはフェイレスの杖に絡めた鎖を引いてその体勢を僅かに崩した。

 フェイレスの頭部目掛けて鎌を叩きつけるゼロ。


「だから甘いというのだ!」


 フェイレスはゼロの鎖鎌に巻き取られた部分を支点として杖を回転させ、ゼロの顎を強かに打ち上げた。


 のけぞって吹き飛ばされたゼロと入れ替えにアルファがフェイレスの目の前に割り込んで至近距離から氷結魔法を放つ。

 凍りついたフェイレスがアルファに笑みを見せる。


「せっかく涼しくしてもらったところだが、我は冷静だ。冷やさねばならぬような頭は持ち合わせておらぬぞ?」


 お返しとばかりに指先から放った光熱魔法でアルファを貫いた。


 その間に起き上がったゼロは飛び退いて距離を取る。

 ゼロの周囲にアンデッド達が集結した。

 背後に立つアルファに声を掛ける。


「アルファ、大丈夫ですか?」

「問題ありません。私の希望が叶う目処が立つまでは消えるわけにはいきませんし、輪廻の門を抜けるつもりはありません」


 澄まし顔で答えるアルファ。

 アルファの希望という言葉が少しだけ気になるが、ダメージは問題なさそうだ。

 その間にフェイレスの前にもバルツァーと神名が立つ。


「速攻で勝負に出ましたが、まるで通用しませんね」

「そう悲観することはないぞ?我は愛弟子の成長をことのほか喜んでおるのだ。定命の身でありながらよくぞここまで成長したものだ。そうだな、あと2~300年も精進すれば我に追いつけるかも知れぬぞ?」


 悪戯っぽく笑うフェイレスに肩を竦めたゼロ。


「そうなりますと、やはりリッチかノー・ライフ・キングになるしかありませんね。・・・でも、私は簡単には諦められないのですよ。私を待つ人々がいる場所に帰りたい。しかし、私はまだ剣を持って戦えるのです」

「文字通り往生際の悪い奴だ。少しばかり懲らしめてやろうか。のうバルツァー?」

「御意にございます」


 フェイレスの前に立つバルツァーが両手を翳すと、その前に無数の魔法陣が出現した。  

 その背後でフェイレスが特大の魔法陣を呼び出し、それにバルツァーの魔法陣が組み込まれてゆく。


「葬送の炎撃ですかっ!」


 ゼロが叫んだ。

 フェイレスがバルツァーの力を使って行使しようとしているのは死霊術を使う攻撃魔法。

 死霊を魂ごと焼き尽くす葬送の炎撃。

 フェイレスですら1人では行使出来ない究極の死霊術攻撃魔法で、死霊に対して放てば一撃で数十万のアンデッドが消滅し、ドラゴン・ゾンビですら一瞬で消し飛ぶ威力だ。


「皆、下が・・いや、狭間に戻れ!」


 ゼロはオメガ達の反抗を許さぬまま全てのアンデッドを消し去った。

 葬送の炎撃は死霊にとってそれ程までに危険なのだ。


「配下の死霊共を守るか?だが、忘れてはおるまいな?今は貴様自身も死霊なのだぞ?」

「そんなことは重々承知ですよ。でも、私とて無策ではありません。だからこそ皆が退いてくれたのです」


 ゼロは剣を構えながら片手を上げた。

 ゼロの前にも魔法陣が現れる。

 ゼロが行使しようとしているのは究極とまではいかないが高度な死霊術防御魔法だ。


「生死隔たりの滝か。それで我の葬送の炎撃を受けるつもりか?」


 ゼロは不敵な笑みを浮かべた。


「本気になった師匠の技を受けるのです。そのつもりが無かったらこんな最後の賭けのような魔法は使いませんよ」

「面白い。ならば受けてみせよ!葬送の炎撃!」

「生死隔たりの滝!」


 フェイレスの魔法陣から渦を巻いた業火が放たれ、ゼロに襲いかかる。

 ゼロの前には滝のような水の壁が出現し、フェイレスの放った炎を受け止めた。


 ゼロとフェイレスの戦いにその場にいる全ての者が釘付けになっていた。

 アンデッド戦と近接戦闘を織り交ぜた戦いは見た目は小規模な戦闘だが、その質が違う。

 魔王や神を駆逐した実力を持ち、命のリミッターが外れたゼロとその師であるフェイレスが最上位アンデッドを使役して戦いを繰り広げ、そして今度は誰も見たことがない魔法のぶつかり合いだ。


「すげぇ、本当にゼロが戦っているのか?魔王とか神々の戦いじゃねえよな?」


 ライズが呟く。


「私、あんな男を目の敵にしていましたの?もっと早くに消しておくべきだったかしら?」

「いや、逆だ。聖務院といえどゼロ殿を敵に回してはいかんのだ」


 イザベラとヘルムントが驚愕する。

 

「ゼロ・・・」


 レナもゼロを信じてその戦いを見守っている。

 万が一ゼロが戻れなかった場合はその一部始終をシーナに伝える責任があるのだ。


 全ての者が固唾をのんで見守る中、決着の時がきた。

 自らが出現させた滝の壁を突き抜けてフェイレスの炎撃をくぐり抜けたゼロがフェイレスを守る神名を一刀両断し、フェイレスの懐に飛び込む。


「最後の一撃です!」


 魔力も気力も使い果たしたゼロの最後の一撃。

 横一閃に剣を振り抜いた。


「結局、詰めが甘い!」


 ゼロの剣が届く寸前にフェイレスの杖がゼロを叩き伏せた。

 

 倒れて動かなくなるゼロ。 

 ゼロとフェイレスの戦いは呆気なく幕を閉じた。

長かったゼロの物語も予定ではあと2話で終了します。

その後は直ちに新作に入る予定です。


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