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師弟対決1

 アルファはレナを襲うゼロに縋りつき、ゼロをレナから引き剥がそうとする。


「主様、お止めください!そのお方は敵ではありません!」


 しかし、ゼロはレナを離そうとしない。

 レナの首筋から流れる血がレナのローブを染め上げてゆく。


「ゼロ・・帰ってきて、ゼロ」

  

 それでもレナはゼロを攻撃することなく呼び掛け続けるが、その意識が遠くなってゆく。


「ゼロ・・ごめんなさい・・」

「主様!どうか・・どうかお止めください!」 

 

 朦朧としたレナの言葉は何に対しての謝罪の言葉なのか分からない。

 そんなレナの声にアルファの悲痛な叫びが重なった時


「この愚か者がっ!」


 鋭い声と共にゼロが吹き飛ばされた。


 飛ばされたゼロは直ぐに体勢を整えて落ちていた剣を拾い上げて立ち上がる。


「・・・」


 ゼロの前に立つのはゼロの死霊術の師である死霊術師フェイレスだ。

 フェイレスは呆れ顔でゼロのことを見据えている。


「ゼロ、貴様何時まで迷っておるか!その迷いが貴様の魂をすり潰すぞ。欲望を受け入れて闇に落ちろ!」


 フェイレスの杖に打たれて叩き飛ばされたゼロは剣を手に佇んでおり、そのゼロを守るようにアルファが両手を広げて立ちふさがっている。

 そんなアルファを一瞥したフェイレスは足下に倒れたままのレナを見下ろした。

 薄く開いた目、朦朧とした意識でフェイレスを見上げている。


「そのままではお主も死霊に墜ちてしまうな」


 フェイレスは手の平の上に水玉のような物を発生させると倒れているレナに振りかけた。

 

「お主の想いと力はゼロを呼び戻すために必要だ。我がゼロを止めるまで休んでいるがよい」


 レナに伝えるとフェイレスはゼロに向かって歩き出した。

 その圧倒的な気の強さにアルファが後ずさり、そのアルファに押されるようにゼロも後退する。

 その隙にレナに駆け寄ったチェスターがレナを後方に退かせた。


「どうした?ゼロよ、未だに迷っているのか?我に刃を向けたくはないか?我と戦いたいのであろう?ならば迷うな」


 フェイレスに優しく問い掛けられたゼロは顔を上げた。

 虚ろな瞳のゼロだが、それでいてフェイレスを見据えている。

 ゆっくりと剣を構えるゼロ。

 その切っ先をフェイレスに向けると前に立ちふさがっていたアルファがゼロの背後に下がった。


「フフッ。闇に墜ちて我に、師に挑む腹が決まったか?」

「・・・はい、師匠。貴女に刃を向けたいという衝動に駆られ、その欲に抗うことを止めました。私は貴女と戦いたい」

「ふん、お前のような弟子を持つと苦労するわ。来い、身の程を教えてやる」


 フェイレスは杖を構えた。

 杖といっても魔術用の物ではない。

 いや、魔術用としても使えるが、その本質は棍のような打撃用の金属製の杖だ。

 

 ゼロはオックス達と戦っていた配下のアンデッド全てを自分の下に呼び戻した。


「何ですの?」


 戦っていたオメガが突然消え、拍子抜けしたようにイザベラが周囲を見渡す。

 オックスやライズ達も同様だ。


「一体どうしちまったんだ?」

「おい!あれ、ゼロの師匠じゃないのか?」


 戦っていた相手が消え、見渡してみればゼロが白銀の髪のハイエルフと対峙している。

 ゼロが剣を向けているのは先の魔王軍との戦いの際にプリシラと共にゼロの援軍に駆けつけたゼロの師匠だ。

 そしてゼロの周囲にはオメガ達が集結している。


「ゼロの奴、自分の師匠に戦いを挑むつもりか?あの野郎、本当におかしくなっちまったぞ!」


 ライズが怒りの声を上げる。

 他の仲間も同様だが、皆の心には怒りと共にゼロを救えなかった悲壮感が漂う。


 しかし、聖職者であるイザベラ、ヘルムント、セイラは違う。

 彼女達は中途半端に死霊と化したままのゼロよりも、欲望に負け、完全に闇に墜としてしまった方がゼロを救い出す可能性があることを知っているのだ。


「とはいえ、あのゼロを完全に制圧してからじゃないと何も始まりませんわ」

「だからこそ、あの死霊術師が現れたのであろう。あの者、ゼロ殿の師だけあって桁違いの力を有しておる。我等が束になってかかっても勝てる気がせぬ」

「とりあえず、私とセイラは準備をしておきますわ。ヘルムントはあの賢者の女に説明して用意をさせておいてください」

「承知した」


 イザベラとヘルムントは行動に移った。


 セイラもアイリア、リックスにこれからやろうとしていることを説明する。


「そんなことが出来るのか?」


 リックスの疑問にセイラも自信なさそうに首を傾げた。


「正直言って自信がありません。でも、ゼロさんを救うにはこれしか手段はありません。私とイザベラさん、そしてレナさんの3人の力が必要なんです」


 セイラも来る時に備えて気持ちを落ち着けて精神を集中し始めた。


 ゼロは配下のアンデッド達と共にフェイレスに挑もうとしていた。

 フェイレスを倒し、レナを、シーナを喰らい、かつての仲間達を喰らう。

 全てを喰らい尽くして破壊の限りを尽くしたい。

 今のゼロは純粋に殺戮と闘争本能の化身であった。


「さあ、我に一矢報いてみせよ、ゼロ!」


 ゼロとフェイレス、師弟対決が始まる。

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