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神に挑む戦い3

 ゼロのアンデッド達がサイノスを取り囲んだのを見てプリシラは大鎌を引いた。


「後は任せてよいな?」


 振り返ったプリシラにゼロは頷いた。


「はい、ここからは死霊術師である私の仕事です」


 ゼロの言葉を聞いてプリシラは後方に飛び退いた。

 ゼロはサイノスを見た。

 強大な神に挑むというのに、その視線は穏やかだった。


「ノー・ライフ・キングだった貴女は最後に逃げて、と私達に伝えた・・・。あれが貴女の本質なんですね。しかし、貴女の自我はサイノスに取り込まれて消滅してしまった。そして、冥神サイノス、顕現しなければ冥界の管理者として穏やかな神である筈が、この世を死で埋め尽くそうとしている。全てはあの死霊術師に利用されていたのですね。しかし、こうなっては後戻りもできません。私が貴女を倒し、冥界に戻ってもらいます」


 ゼロの合図でオメガ達10体のアンデッドが一斉にサイノスに襲いかかった。

 オメガの爪、アルファの魔法、サーベル、スピア、シールドの連携攻撃、ミラージュとシャドウの聖魔攻撃、ジャック・オー・ランタンの炎と大鎌による機動攻撃、そしてリンツの戦斧による力押し。

 サイノスに干渉できるアンデッドによる猛攻にサイノスの動きも変わり、明確に攻撃を避け、反撃を繰り出すようになっていた。


 イズとリズに助けられて後退してきたオックス達もその戦いを目の当たりにしていた。


「すげえな。神を本気にさせたぜ」

「戦いの次元が違う・・・」


 チェスターとカミーラが呟く。


「どうだ?お前のアンデッドでゼロ様を援護できないか?」


 イズの問いにリズが首を振る。


「ゼロ様もオメガ達しか仕向けてないところを見ると並のアンデッドでは太刀打ち出来ない相手なのでしょう。私のアンデッドでは足手まといになるだけです」


 オックスとリリス、ライズも見守るだけだ。


「俺達では手出しできん」

「そうね。悔しいけど、ゼロに・・ゼロとレナに委ねるしかないわ」

「ゼロの背中はレナに任せて、俺達は見ているだけかよ」


 ライズは悔しそうに足下に落ちていた小石を蹴飛ばした。

 その時


「すまねえが、それどころじゃねえぞ!」


 後方に残った筈のリックスがセイラを抱えてアイリアとコルツを連れて駆けてきた。


「おい、ここも危ねえぞ!セイラの体力が尽きたのか?」


 オックスが問うが、リックスに抱えられたセイラは未だに祈りを続けている。


「それどころじゃねえ!いきなりアンデッドの大軍が現れたぞ!完全に囲まれた!」


 リックスに言われて周囲を見渡せば、数十万にも及ぶアンデッドが戦場を囲んでいる。

 突然現れた大軍に連合軍の後方にも混乱が生じている。

 イザベラが駆け回って負傷者を担ぎ出した後方部隊をまとめ上げようとしていた。

 プリシラも軍団を後方に対して向きを変えている。


「なんだこりゃあ!」

「分からねえ、いきなり現れたんだ。だから祈りを続けているセイラを担いで逃げてきたんだ」

「逃げてきたって、ここは前線も最前線だぞ。見てみろ、ゼロ達がサイノスと戦っている」

「そんなことは分かっている!ここにはもう安全な場所なんかねえぞ!」


 オックス達は互いに顔を見合わせた。

 オックス、ライズ、チェスターは先のダメージが回復してはいないが、武器を持つことは出来る。

 ライズが笑みを浮かべた。


「俺はまだ戦えるぜ。やってやろうじゃねえか!」


 オックスも戦鎚を点検する。


「俺達にもまだやれることがあったか。最後まで楽はできねえな」

「まったく、因果なものね。ゼロと知り合えなければオックスと一緒にこんな高みには来られらなったわ」


 リリスも弓の弦を張り直している。


「これは、いよいよ最後かもしれないな」

「大丈夫。私は最後までチェスターと一緒にいる」


 チェスターとカミーラは頷き合っている。


「やるぞリズ。ゼロ様の戦いの舞台を守る」

「ええ、兄様。ゼロ様の元には1体たりとも行かせません」


 リズは精霊アンデッドを召喚した。

 

 そんなオックス達を見ていたコルツがリックスに向き合った。


「リックス殿、ここまで相棒として共に戦ってきたが、小官の最後の我が儘を聞いて欲しい。セイラ殿を守ることも重要な任務であることは理解している。だが、小官は竜騎兵として存分に戦いたい。騎竜を失った小官だが、最後は竜騎兵として誇り高く戦って散りたいのだ」


 リックスは肩を竦めながらコルツに右手を差し出した。


「セイラのことは俺とアイリアに任せて好きに暴れてこいよ。ただな、散っては駄目だ。必ず生き延びろよ」

「かたじけない」


 コルツもリックスの手を強く握る。

 そんな2人を自陣から見ていたプリシラが叫んだ。


「そこの竜人!騎竜がいないなら妾のワイバーンをくれてやる!」


 そう言ってプリシラが指笛を鳴らすと1頭のワイバーンがコルツの前に降り立った。


「よもや鞍や手綱が無いと乗りこなせないなどと言うまいな?」


 コルツはワイバーンに近づいてその鼻先を撫でた。

 まだ若いワイバーンだが、落ち着いている。

 コルツはワイバーンの背に跨がった。


「魔王プリシラ様!ありがとうございます。この竜と共に存分に戦ってみせます!」


 コルツを乗せて咆哮と共に飛び立つワイバーン。

 コルツは大空を再び手に入れた。


 オックス達も後方のアンデッドの軍勢に備えて戦いの準備をしている。

 プリシラやイザベラ達も同様だ。

 そんな中でリックスはサイノスと戦っているゼロ達の様子を見た。

 レナも周囲のアンデッドに気付いたのか、ゼロの背後で魔力を高めて周囲を警戒している。

 ゼロのアンデッド達は次々とサイノスに襲い掛かっているが、決め手には欠けるようだ。

 ゼロも剣を手にアンデッド達を操っている。


 そんなゼロの様子を見たリックスは傍らで祈りに集中しているセイラの肩に手を掛けた。


「セイラ、祈りを止めろ」


 リックスの突然の言葉にセイラは思わず祈りを止めてリックスを見上げ、アイリアが驚きの声を上げる。


「リックスさん!何を言っているんですか!セイラは必死に皆を守ろうとしているんですよ!」

「リックスさん?私は体力も気力も大丈夫です。今しばらくは広範囲に結界を維持できます。限界が来たら結界を狭めて守りを固め、ゼロさんが勝利するのを待ちます」


 2人の言葉を聞いてもリックスはゼロのアンデッド達とサイノスの戦いから目を離さない。


「限界が来たら駄目だ。セイラにまだ余力がある状態で待っていた方がいい、ような気がする。最後にセイラの力が必要になるような気がするんだ」


 リックスの言葉にセイラとアイリアは一時は顔を見合わせたが、セイラは頷いた。

 なんだかんだ言ってもリックスの危険回避能力と勘は信用できる。


「分かりました。祈りを止めるのではなく、力を抑えて何が起きてもいいように温存します」

「それで構わない。とにかく、できるだけ多くの力を残しておいてくれ」

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