表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/100

ノー・ライフ・キング

 ゼロ、イザベラ、プリシラ、それぞれの軍団はほぼ同時に敵アンデッドを突破してノー・ライフ・キングが潜む倉庫を包囲したが、そんな3つの軍団の直中に大量のアンデッドが現れた。

 敵中にアンデッドを直接召喚して敵の不意を突く、死霊術師独特の戦法であるが、そんな戦法は通用しない。

 そもそも、死霊術師のゼロとそのゼロの戦い方を嫌という程知るイザベラ、そして、ゼロだけでなくゼロの師である死霊術師フェイレスを友とする魔王プリシラにそのような奇襲が通用する筈もなく、現れたアンデッド達は瞬く間に殲滅された。


 続けて召喚されたのは数千のスケルトン・ウォリアー、スケルトン・ナイトやドラウグルといった中位から上位アンデッド。

 ゼロ達の背後に現れて包囲するように布陣した。


「ゼロ、後ろには構うな!妾がノー・ライフ・キングを引きずり出してやる。ノー・ライフ・キングを倒せばそれで終わりだ」


 プリシラの声と共に彼女を肩に乗せたサイクロプスが前進して目標の倉庫に大木のような棍棒を叩きつける。

 瞬く間に崩れ落ちる倉庫。

 瓦礫の中から姿を見せたのは白いローブに身を包んで杖を携えるノー・ライフ・キングだった。


「女か?」


 チェスターが思わず呟いたとおり、そこに立っていたのは瞳を閉じて表情は無いものの、白く長い髪の女性。

 倉庫の倒壊に巻き込まれた筈なのにその白いローブには僅かな汚れや染みすらも無い。

 その神々しい美しさに多くの者が目を奪われて動きを止めている。


「これは・・・想像以上ですね。師匠にも匹敵する程・・・」


 ノー・ライフ・キングはただ佇んでいるだけでそれほど大きな力を使っていないが、それだけで鋭い刃のような気が伝わってくる。

 ゼロの頬に汗が伝う。


「呆けている場合ではないぞ!此奴を倒さねば何も終わらぬ!」

 

 サイクロプスが拳を振り下ろせばノー・ライフ・キングは音も無く後方に飛び退き、それを追撃するプリシラが大鎌を振りかざしてノー・ライフ・キングに斬り掛かった。


・・ギンッ!!・・


 プリシラの大鎌の刃をノー・ライフ・キングは杖で受け止める。


「ほう、魔王の刃を片手で受け止めるか・・・」


 無理をせず、間合いを取りながら鎌を構え直すプリシラ。


「おいおい・・・魔王の攻撃を軽く受け止めたぞ・・」

「俺達の力でどうにかなる相手なのか?」


 唖然とするライズ達。


「案ずるな。妾の、魔王の攻撃といえど単純な力による斬撃だ。死霊の王とはいえ、お前達の刃や術が通用しないわけではない。ゼロが妾との勝負で妾に傷を付けたようにな」


 プリシラの言葉にチェスターがゼロを見るが、その表情に驚きはなかった。


「ゼロ、今更何があっても驚かないがな、お前、魔王と勝負して傷まで付けたのか?」 


 ゼロに代わってライズが口を開く。


「それも事実だが、それこそ今更だ。ゼロは魔王ゴッセルと戦って引き分けたんだからな」


 言われてみればその通りだ。

 ゼロの所業にいちいち驚くだけ無駄なのである。

 チェスターとカミーラは気を取り直した。


「そうは言っても厄介な敵であることに違いはないな」

 

 チェスターはありったけの魔力を剣に込めた。

 チェスターの剣の表面が炎に包まれ、その炎が集束して剣に宿り、刃が白く輝く。


「ボーッと突っ立ってても仕方ねえ!カミーラ、援護しろ」


 チェスターが走り出す。


「俺も行くぜ!」


 ライズがチェスターに続く。

 駆け出した2人を追うようにカミーラは2枚の符をノー・ライフ・キングに投げつけた。 

 ノー・ライフ・キングが炎に包まれる。

 1枚目の符は爆炎の符。

 だがこれは牽制であり、本命は2枚目。


「呪縛っ!」


 2枚目の符がはじけ飛び、呪術の鎖でノー・ライフ・キングを縛り上げた。


「・・捕まえたっ!でも長くは持たない」


 カミーラが叫ぶ。

 カミーラの作り出した一瞬の隙を逃すまいとチェスターとライズ、後から飛び出したオックスとイズ、そして、ゼロの命を受けたオメガとサーベルがノー・ライフ・キングに飛びかかる。


「チャンスは無駄にはしねえっ!」


 真っ先に剣を振り下ろすチェスター。

 ライズの剣とオメガの爪が後に続く。


 手応えはあった。

 チェスターの剣がノー・ライフ・キングを溶断し、オメガの爪が、ライズとサーベルの剣が斬り裂く。

 そして、オックスの戦鎚とイズの双剣が振り下ろされようとした時


『下がれ・・・』


その場にいる者全ての者の脳に直接声が響く。

 同時にノー・ライフ・キングを中心に爆発的にアンデッドの塊が放たれた。

 複数のアンデッドが1つの塊となり、爆炎魔法のように撃ち出され、それをまともに食らったチェスター達が吹き飛ばされる。

 バランスを崩したチェスター達にアンデッドの塊が襲いかかった。

 

「危ないですのっ!範囲制圧結界!」


 イザベラの号令で聖騎士達の祈りによりノー・ライフ・キングを中心にして一定の範囲を浄化する制圧結界が展開された。

 ノー・ライフ・キングには影響を与えないが放たれたアンデッドの塊が浄化される。


「今のうちに下がりなさい!」


 イザベラに促されて後退したチェスター達に代わって前に出たのはゼロのアンデッドだ。


「スピア、シャドウ、ジャック・オー・ランタン、スケルト・・・面倒です。リンツは前進!アルファ、ミラージュ、シールドは援護!時間を与えてはいけません!」


 前線に踏みとどまったオメガとサーベルにスピア達が戦線に加わり、アルファ達は皆の防御とに徹する。


 ノー・ライフ・キングも新たなアンデッドを召喚した。

 浄化の祈りでも簡単には浄化できないスケルトン・ロードや上位ヴァンパイア等の強力なアンデッドだ。


「ゼロ様!援護します!」

「妾も行くぞ!」


 リズがサラマンダーを宿らせたアンデッドを戦線投入し、魔物を率いたプリシラも参戦した。

 レナとリリス、カミーラも援護する。


「・・・消耗戦ですか」


 状況を見極めながらゼロが呟く。

 あまり好ましくない状況だ。


 イザベラも消耗戦の様相を見せつつあることを感じていた。


「いけませんわ。このままでは時間が掛かり過ぎます」


 多少の犠牲を覚悟の上で聖騎士を突撃させるべきか。

 判断に悩んだ時のイザベラの決断はいつも同じだ。


「聖騎士団は突撃態勢!一気に勝負に出ます」


 イザベラを先頭に聖騎士団が突撃態勢を取ったその時。


・・・ゴゴゴゴゴ!


 激しい地鳴りが響き渡る。


「来おるか・・・」

「チッ、厄介ですのね」


 プリシラが呟き、とイザベラが舌打ちする。

 そしてゼロが叫んだ。


「全員下がれっ!ドラゴン・ゾンビが出ます!」


 ゼロの声に反応してゼロ、プリシラ、イザベラの軍団がそれぞれノー・ライフ・キングから距離を取ったその時、地中から3体のドラゴン・ゾンビが這い出してきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ