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王都解放

 ライズはドラゴン・ゾンビの首めがけて剣を振り抜いたが、ドラゴン・ゾンビの角に迎撃され、その首を捉えることは出来なかった。

 

「チッ、仕留め損なったか!」


 着地と同時に飛び退いて間合いを取ったライズは剣を構え直して不敵に笑った。


「だが、手応えはあったぜ」


 ドラゴン・ゾンビの一対の角の片方、ライズの剣を受けた角がスッパリと斬れ落ちた。

 自身も相当な剣の腕の持ち主であるゼロがライズの剣技に感心する。


「見事です。いかにドラゴン・ゾンビとはいえ骨や角の強度はドラゴンと変わらないはずですよ」

「俺の剣の腕だ・・・と言いたいところだが、腕だけじゃなく剣のおかげだな。俺の剣はイリーナが見立ててくれた魔剣なんだよ」


 そうは言っても剣を持つ者に技量が無ければドラゴンの角を斬ることなどは出来るはずがない。


 その間にもオメガ達の攻撃は続いており、僅かながらドラゴン・ゾンビへのダメージも蓄積しているようだ。

 見れば、サーベルとスピアがライズの戦いを真似してシールドの盾を踏み台にドラゴン・ゾンビの残された角への攻撃を加えている。

 ライズのように斬り落とすまでには至らないが、少しずつ角に傷がついているのが分かる。


「すげえな、あの2体、剣や槍の腕はアンデッドとは思えないぞ」

「確かに、デス・ナイトの彼等は相当な手練れですよ。多分、その辺の銅等級の冒険者の剣士や戦士では歯が立たないでしょう。ただ、打ち込みがやや弱い・・・。パワー系の彼を投入しますか」


 そう言うとゼロは新たに戦斧を装備したスケルトンを召喚して戦線に投入する。

 スケルトンウォリアーだったこの個体は短期間のうちにスケルトンナイトにまで進化していた。


「鉱山の町を襲ったのとは別個体ですが、貴方に取って因縁あるドラゴン・ゾンビです。思う存分戦いなさい」


 ゼロの命を受けてスケルトンナイトは喜び勇んで戦闘に参加していった。


 その頃、王都内に駆け込んできたチェスターとカミーラはドラゴン・ゾンビを相手に一歩も引かずに戦っているゼロ達の姿を目の当たりにした。


「なんだあれ!あの化け物相手に優勢だと!」

「・・・早く行かないと。私達がやるべきことも残っている」


 カミーラはドラゴン・ゾンビの背後、黒衣のネクロマンサーが召喚しているアンデッドの集団を目掛けて符を投げつける。

 投げられた符の束はその1枚1枚に意思があるかの如くアンデッド達を囲み込むように散らばるとアンデッドを巻き込んで一斉に爆発した。


「よし!挨拶はその程度にしてゼロ達に合流するぞ」

「・・・」


 2人はドラゴン・ゾンビを回り込んでゼロ達の下に走った。


 突然の爆発にもネクロマンサーに動揺は見られない。

 それどころかゼロ達の攻撃に押されているドラゴン・ゾンビの姿を目の当たりにしても何の反応も示さない。


「・・・高位の死霊術師とはいえドラゴン・ゾンビを使役するのに意識の大半を持っていかれていますね」


 その様子を見たゼロが冷静に分析する。 

 そこにチェスターとカミーラが合流した。


「遅くなった!すまねえな」

「大丈夫です、特大の獲物が残っていますよ」


 薄い笑みを浮かべるゼロ。


「チェスターさん達も来たことですし、そろそろ終わりにしましょう」


 決着の策を説明したゼロに全員が頷いた。

 

 ゼロ達が散開したその時、オメガの手を借りて高く跳んだスケルトンナイトがその戦斧でドラゴン・ゾンビの残された角を叩き折る。


「今です!」


 それを合図にゼロ達が勝負に出た。

 カミーラがありったけの符をばら撒いてドラゴン・ゾンビを炎で包む。

 続いてレナが極限まで集束した雷の針をドラゴン・ゾンビの体内に撃ち込んだ。

 鋭い針はドラゴン・ゾンビの身体に食い込んで、脊髄に突き刺さる。

 

・・パチンッ・・


 レナが指を鳴らすと雷の針を通してドラゴン・ゾンビの脊髄全体に強烈な電撃が走り、その反射により一瞬だけドラゴン・ゾンビの身体が硬直した。


「ライズさん、チェスターさん、行きます!」


 剣を抜いたゼロにライズとチェスターが続く。

 ライズとチェスターが動きを止めたドラゴン・ゾンビの両前足を斬り飛ばす。

 前足を失ってバランスを崩すドラゴン・ゾンビ。

 シールドを踏み台にしたゼロが跳躍し、そのタイミングに合わせてオメガがドラゴン・ゾンビの顎を蹴り上げた。

 前足を斬られて前のめりにバランスを崩したところにオメガの蹴りでのけぞらされ、ドラゴン・ゾンビはその首をゼロの目の前にさらけ出す。

 ドラゴン・ゾンビの首を間合いに捉えたゼロは身体の回転を加えて剣を振り抜いてその首を斬り落とした。


「そんな・・馬鹿な・・・」


 ドラゴン・ゾンビを仕留められ、我に返って狼狽えるネクロマンサーだが、ゼロの狙いはそれだけではない。

 ドラゴン・ゾンビの首を斬り落としたゼロが次に狙うのは本来の目標、落下点にいるネクロマンサーだ。

 ライズとチェスターもネクロマンサーを狙う。


「くっ!」


 ネクロマンサーは咄嗟に下級アンデッドが密集する壁を召喚した。

 目の前に現れた不気味な壁に思わず足を止めるライズとチェスターだが、ゼロは構わずに突っ込んだ。

 しかし、壁に阻まれて着地のタイミングが僅かにずれる。


「届きますかっ!」


 ゼロは渾身の力を込めて剣を振り下ろしたが、ネクロマンサーは既に後方に飛び退いており、その切っ先は空を切った。

 着地と同時に光熱魔法を放って追撃するが、それすらも弾かれる。


「逃がしません!」


 腰を低く前方に飛び込むゼロ。

 ネクロマンサーがニヤリと笑う。


「ゼロッ!」


 レナの声が響いた次の瞬間、ネクロマンサーが新たなアンデッドを召喚した。

 ゼロに飛びかかってきたのはドラゴン・ゾンビよりも一回り小さいワイバーン・ゾンビの鋭い鈎爪。


「主様!」


 アルファの氷の防壁がゼロの前に出現し、ワイバーン・ゾンビの爪を受け止めたが、そこに隙が生じた。


 氷の壁に阻まれてゼロが足を止めたその一瞬の間にネクロマンサーを拾い上げたワイバーン・ゾンビが飛び上がる。


「逃がさない!」

  

 レナが雷撃魔法、アルファが氷弾を放つがネクロマンサーを捉えることが出来ない。

 オメガ、ジャック・オー・ランタン、シャドウ、ミラージュの追撃を躱して高度を取ったワイバーン・ゾンビはそのままネクロマンサーを連れて飛び去って行った。


「逃げられましたか」


 飛び去るネクロマンサーを見送ったゼロは剣を納めた。

 ネクロマンサーが向かったのは南方、城塞都市の方角だ。


 今、この地に立つ生者はゼロ、レナ、ライズ、チェスター、カミーラの5人だけ。

 残されたのはドラゴン・ゾンビと戦いに巻き込まれて死んだ信徒達の躯。

 戦いが終わってイバンス王国の王都が静かに解放された。

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