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ゼロの大博打3

「私の勝ちです」


 ゼロが言うとその背後にシャドウとミラージュが姿を現した。

 

「ご苦労様。カミーラさんとの連携も見事でした」


 2体にねぎらいの言葉を掛けながら指を鳴らす。


・・パチンッ・・


 突如として王都を覆っていた霧が晴れ、レナが放った炎の壁も消え去る。

 霧が消えた王都の上空には特大のウィル・オー・ザ・ウィスプが浮かんでいた。

 そして晴れ渡る大空には燦々と輝く太陽の姿。


「どういうことだ・・・」


 空を見上げたネクロマンサーが漏らし、信徒達が狼狽えている。


「貴方達が太陽だと誤認していたのは私のウィル・オー・ザ・ウィスプだったんですよ。シャドウとミラージュ、そして仲間の呪術師の三重の幻惑によりあれを太陽として偽りの日蝕を演出したんです」

「なん・だと・・・」

「因みに、本物の日蝕は半刻程前に終わっていますよ」


 ゼロが不敵に笑った。


 ゼロが講じた秘策、それはシャドウ、ミラージュ、カミーラの力をフルに使い、王都全体を包み込んだ幻惑により真の日蝕を隠し、代わりにゼロの特大のウィル・オー・ザ・ウィスプを太陽に偽装しての偽の日蝕を作り出すことだった。

 しかも、実際の日蝕よりも偽の日蝕を遅らせることにより、万が一セイラが殺害されても手遅れになるように謀ったのである。

 

 大掛かりではあるが、あまりにも単純であり、見抜かれれば全てが瓦解する策であったため三重の幻惑とグレイとオックス等による陽動攻撃に加え、リズの死霊術によるゼロを偽装した陽動と、幾重にも策を重ねたうえ、セイラの死すらも計算に入れたゼロの大博打だった。


 ゼロは剣を抜いた。


「そういうことでもう手遅れです。生贄も必要ないでしょうから返して貰いますよ」


 セイラを縛るロープを切り捨て、支えを失ったセイラの身体をゼロが受け止めた。


「貴様あっ!」


 ネクロマンサーが吠えたその時


「ゼロさん危ねえっ!」


響き渡る声と共にゼロ目掛けて放たれた1本の矢。

 その狙いは寸分違わずゼロの右目だったが間一髪、ゼロはその矢を払った。

 見れば広場を見下ろすことができる建物の屋根の上でいつの間に潜り込んだのか、リックスがゼロを狙った者と揉み合いになっている。

 その相手は行方不明だったアイリアだ。

 リックスに邪魔されてなおゼロに矢を放とうとしている。


「シャドウ、ミラージュ!彼女を生け捕りなさい!」


 ゼロの命に2体がアイリアに飛びかかった。

 シャドウの目眩ましとミラージュの眠りの魔法をまともに浴びたアイリアと、そのとばっちりを受けたリックスが意識を失い建物の屋根から転がり落ちる。

 その2人を受け止めたのはグレイ中隊とオックス達だ。

 霧が晴れたことにより陽動の任務を終えたことを悟った彼等は演技も手加減の必要も無くなり、全力をもって駆けつけてきたのだった。


「作戦完了です。オックスさん、グレイさん達はセイラさんとアイリアさん、ついでにリックスさんを守りながら直ちに脱出してください!」


 儀式を阻止してセイラを救出したらそれ以上の戦闘に固執することなく脱出する。

 オックスもグレイも当初の予定どおり撤退すべく動いた。


 その時


「逃がさん!」

  「「ゼロ様っ!」」


 憎しみを込めて叫ぶネクロマンサーの声に被せられたイズとリズの声。

 そして姿を現したのはゼロを装った本命の陽動としたイズ、リズ、オメガにアンデッド達と対峙していたドラゴン・ゾンビだった。


 ゼロは駆け寄ってきたイズとリズにセイラを託す。


「何が来ようと変更はありません。予定どおりの行動を!」


 叫ぶや否や数千ものアンデッドを召喚するゼロ。

 ゼロ達の周辺だけでなく王都各所に幾つものアンデッドの部隊が一気に展開した。

 加えてシャドウとミラージュが全ての個体に幻惑の魔法を掛け、それぞれのアンデッドの鎧やローブ、マントが赤く染まる。

 オックスやグレイ達が敵のアンデッドと区別できるようにするためだ。


 ゼロのアンデッドが現れた一瞬の隙を突いてオックス達とグレイの中隊はセイラとアイリア、ついでにリックスを連れて一目散に逃げ出した。

 残ったのはゼロとレナ、そしてライズの3人だ。


「さて、目的は達成しましたが、彼等を野放しにしておくわけにはいきません」


 ゼロの言葉にレナとライズが頷いた。


「もう手加減なしでいいのね?」

「イリーナの仇討ちなんて柄じゃないが、好きに暴れさせてもらうぜ」

 

 黒衣のネクロマンサーとアンデッドの軍勢、そしてドラゴン・ゾンビを相手にゼロ達の戦いが始まる。


 術を終え、静かに舞いを止めたカミーラはその意識を取り戻した。


「・・・・」


 周囲を見渡せばカミーラを守るように円陣を組んで盾を構えているシールド達スケルトンの戦士達。

 そして、おびただしい数の魔物達の死骸の中に立つチェスターの姿。


「よう、終わったか?なかなか色っぽかったぜ」


 全身に返り血を浴びながらも余裕の表情で軽口を叩くチェスターだが、それがチェスターの虚勢であることは周囲の激戦の跡を見れば明らかだ。


「これから王都でゼロに合流するが大丈夫か?多分ドラゴン・ゾンビとの戦いになるぜ」


 そう話すチェスターにカミーラは歩み寄り、あまり得意ではない体力回復の術をチェスターにかける。


「大丈夫。私がチェスターを守るから、チェスターは私を守って・・・」


 頷き合った2人はシールド達を引き連れて王都に向かって駆け出した。

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― 新着の感想 ―
[一言] アイリアはこの物語での登場シーンが少ないので名前だけ見ても何してた人だっけ…と思い出せませんでした。(痴呆) ここまでの登場シーンは風の都市の冒険者であること、最後までセイラを救助に残ったと…
[一言] リックス、危うくとばっちりで転落死する所だった…
2020/06/25 23:02 退会済み
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