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避難民を守り抜け

 次々と襲いかかるアンデッドに対してオックス達は徐々に後退を始めた。

 作戦どおりリリスとシルビアの援護によりオックスとライラの後方に回り込まれることは防げているが、ライラは目の前の敵に対応するだけで手一杯で、そのライラを守りながら戦うオックスにも余裕は無い。

 しかも、敵はアンデッドであり、倒しても倒しても怯むことなく無感情に進んでくる。


「落ち着いてゆっくり後退するんだ!」


 ライラを庇いながら戦鎚を振るうオックス。

 敵のグールの大半を叩き潰してはいるが、その背後には更に多くのスケルトンが迫っている。

 しかも、スケルトン達は広範囲に広がっておりリリスやシルビアの範囲魔法の効果も期待できない。

 そのうえ、ライラは息が上がり、動きも鈍くなりつつあった。


(そろそろ限界か)


 ライラの様子を見て彼女の体力と気力の限界を悟ったオックスはライラを一旦後退させて休ませて、自分1人で前衛を引き受けるべきかと考えたその時


「キャッ!」


ライラの足がもつれて尻餅をつく。

 乱戦の最中に致命的な隙が生じてしまう。


「くそっ!」


 オックスはライラを肩に担ぎ上げて一目散に走り出し、シルビアが陣取る洞窟前まで後退した。


「す、すみません!」


 オックスの肩から降りたライラは立ち上がって剣を構えるが、疲労の限界だ。

 ライラだけでない、シルビアも魔力切れ寸前で顔色が青ざめている。

 

 オックスは木の上にいるリリスを見た。

 頷きあう2人。

 言葉を交わさずとも互いの考えは分かっている。

 オックスが吶喊して敵をおびき寄せて足止めし、その場所にリリスが範囲精霊魔法を撃ち込む捨て身の策。

 うまく行けば敵の大半を倒しながらオックスも生き延びることができるかもしれない。

 失敗しても敵の多くを道連れにすることができる。

 その後に生き残った3人が敵を殲滅して避難民を連れて脱出することができるかもしれない。

 大きなリスクを伴う割にどちらの結果になっても当てのない逃避行が続くだけだが、それでもやらなければならない。


「いくぞリリス!」

「頼むわよオックス!」


 オックスが駆け出し、スケルトンの中に飛び込んでいく。

 そんなオックスを餌食にしようとスケルトン達が群がり始め、その直中にリリスが範囲精霊魔法を撃ち込もうとした時、戦場に新手のアンデッドが飛び込んできた。


「あれはっ!」


 咄嗟に魔法を止めるリリス。

 飛び込んできた新手は2体のアンデッド。

 カボチャの頭にマント、ケタケタと笑いながら大きな鎌を振るうジャック・オー・ランタンが敵スケルトンに襲いかかる。

 このジャック・オー・ランタンを使役する人物をリリスは1人しか知らない。

 リリスは勝利を確信した。


「下がってオックス!ゼロが来てくれたわよ!」


 リリスの声にスケルトンの囲みを突破して後退するオックス。

 オックスが離れるとジャック・オー・ランタン達は強力な火炎をスケルトンに浴びせかけ始めた。

 更に洞窟の前に立つライラとシルビアの前には大地から這い出してきた3体のスケルトンが立つ。


「ひっ!」


 異質な雰囲気を醸し出すサーベルを構えるスケルトンと大盾を持つスケルトンに加えて戦斧を持つスケルトンを目の当たりにして咄嗟に剣を構えるライラ。

 たった今まで戦っていた敵のスケルトンとはまるで違う。

 ライラもシルビアも本能的に恐怖を感じて小刻みに身体が震えた。


「大丈夫よ、このアンデッドは味方よ!手出ししないで」


 そんな2人を落ち着かせようと、木の上から飛び降りてきたリリスが笑みを見せる。

 オックスも戦鎚を担ぎながら余裕の表情で後退してきた。


「もう大丈夫だ。心強い仲間が来てくれた。こうなったら俺達の出番は終わりだ。後は様子を見よう」


 そう言って武器を下ろすオックスとリリス。

 警戒は維持しつつも手出しするつもりも無さそうだ。 


 オックス達が手出ししないと分かったのか、3体のスケルトンも戦いに加わってゆく。

 2体のジャック・オー・ランタンと3体のスケルトン、たった5体のアンデッドに敵アンデッドは次々と倒され、見る見るうちにその数を減らしていく。


 敵アンデッドが殲滅されるまで半刻とかからなかった。


「間に合いましたね」


 言いながら森の中から歩み出てきた人物を見たライラとシルビアは息を飲んだ。

 穏やかで落ち着いた口調とは裏腹に漆黒の装備に身を包んだ戦士、その顔の左半分は禍々しい仮面に覆われていて、異様な雰囲気だ。

 そして、その戦士が5体の強力なアンデッドを従えている。


「・・・ネクロマンサー」


 シルビアが思わず呟いた。

 ライラもシルビアも初めて見るネクロマンサーの姿に助けられた事実も忘れて恐怖を感じていた。

 彼が従えるアンデッドも桁外れの強さだったが、目の前のネクロマンサーは段違いの雰囲気だ。


 そんなネクロマンサーにオックスは気軽に声を掛ける。


「ゼロ、久しぶりだな」

「本当に久しぶりですねオックスさん。何はともあれ間に合って良かったです」


 差し出されたオックスの手をゼロは肩を竦めながら握った。


「来てくれて助かったわ。ありがとうゼロ」


 続いてリリスの手を握るゼロ。


「リックスさんとコルツさんから事情を聞きました。私達はセイラさんとレナさんを助け出すための行動を開始しています。そのため、お2人にも手を貸して欲しいのです。当然、避難民やそちらの2人の安全を確保した上での話ですが」


 ゼロの言葉にオックスとリリスは互いに目を見合わせて大きく頷いた。

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