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戦友

 ゼロが戦列を離れることになり、作戦案は直ちに修正されることになった。


 工業都市攻撃に当たるのは千にも満たないイザベラ率いる本隊が主力となる。

 圧倒的に戦力が足りないが、それは今に始まったことではなく、最早誰もそんなことは憂慮していない。

 全員が少ない戦力で勝利する方法を必死に考えていた。


「やはり、ことを急がずにアイラス王国からの増援だけでも待つべきではないか?」


 ブランドルが慎重論を提案するがイザベラは首を縦に振らない。


「たかだか300の増援が加わったところで何ほどでもありませんわ。ここは速攻で行くべきです」


 イザベラの横に座るヘルムントは現有戦力を最大限に有効活用した作戦を考えていた。

 イザベラが速攻と言い出したならばそれはもう決定事項であり、余程のことがない限りはイザベラは主張を覆さない。

 それに、ヘルムント自身もイザベラの速攻案の方が有効であると考えているのだ。

 

「各部隊の任務は詳細に検討するとして、作戦の基本は我等聖騎士団を中心とした騎兵200をもって一点突破を敢行し、敵指揮官を一気に討ち取る。他の戦力はイバンス女王の護衛を最小限とし、全力を持って騎兵を援護する。我は本案を提案する」


 ヘルムントの提案にイザベラは満足げに頷き、慎重論を主張していたブランドルも同意した。


「お任せなさい。速攻を決めたのは私ですの。言い出しっぺの私が先頭に立ち、敵を討ち取ってさしあげますわ」


 自信満々に胸を張るイザベラ。


「私自らが敵に切り込むのですから、グレイの中隊には陽動をお願いしますわね。別方向から突入して敵を攪乱。あわよくば敵将を討ち取ってかまいませんのよ」


 突如として無茶な任務をイザベラに振られ、会議場の隅に座っていたグレイが頭を抱えた。


(イザベラさんの切り込み部隊並みの厄介な任務じゃないか・・・。しかも、あわよくばって、俺達が敵を討つことを狙ってる。絶対に・・・)


 グレイの様子を見たイザベラが悪戯っぽく妖艶な笑みを浮かべ、グレイの背後に立つ副官のエミリアが目を三角にしていた。


 一方、ゼロに同行するのはリックス、コルツの2人に加えてチェスターとカミーラが志願した。

 イズとリズも当然の如くゼロについて行くことを希望したのだが、ゼロからの


「工業都市を攻めるには2人の精霊魔法の力が必要です。特にリズさんの死霊術の知識と力が不可欠です。2人はイザベラさん達に協力して工業都市を奪還してください」


との言葉に納得して残留を決めた。


 渓谷の都市へと出発するために会議場を後にするゼロにイザベラが声を掛ける。


「工業都市は任せなさい。その代わり、貴方は2人を救出して渓谷の都市を奪い返して来なさい!」


 ゼロは肩を竦めた。


(2人の救出はともかく、渓谷の都市を奪還って、相変わらず無茶を言う・・・)

「無茶もなにも、2人を助けるってことと都市の奪還は同じことですのよ」


 イザベラの言葉を背にゼロ達は大教会の外に出た。


 出発する前に草原の都市に残り、防衛に当たる部隊を編成しなければならない。

 大規模な都市であるため、ある程度の数を残す必要があり、それらを指揮する者も必要だ。

 ゼロは目の前に整列するアンデッドを見回し、傍らに立つオメガを見た。


「オメガ、貴方の眷族はどの程度の規模で集められますか?」


 ゼロの問いにオメガは頭を垂れる。


「上位ヴァンパイアが5、中位ヴァンパイアが100といったところです」

「分かりました。オメガに残留部隊を任せます。基本的にはスピアの部隊200に都市防衛を委ねますが、必要に応じて貴方の眷族も投入しなさい」

「マスターの仰せのままにいたします」


 ゼロが部隊を編成しているのを眺めていたリックスはスケルトンの部隊の中に立つ1体のスケルトンウォリアーに気付く。

 ゼロについて行く部隊の中に立つそのスケルトンウォリアーは他のスケルトンに比べて大柄であり、巨大な戦斧を持っている。

 リックスはそのスケルトンウォリアーに歩み寄った。


「・・・あんたか?久しぶりだな」


 リックスの問い掛けにスケルトンウォリアーがカタリと骨を鳴らす。

 リックスは複雑な表情を浮かべながら笑った。


「ゼロ、彼奴等は皆が輪廻?の波に流されて行ったんじゃなかったのか?」

 

 リックスの問い掛けにゼロは呆れ顔で頷いた。


「困ったものです。彼だけは輪廻の波に逆らって私と戦うために狭間の世界に止まってしまったんですよ。まあ、この戦いが終わったら無理にでも旅立ってもらいます。そういう約束です。でないと、更に進化して終いには歌を歌いだしてしまいかねませんからね」

「あの歌か?そりゃあいいな」


 リックスはスケルトンウォリアーの鎖骨に手を置いた。


「また宜しく頼むぜ、戦友。・・・ああ、そうだ。2人は今でも元気に暮らしているぜ、何も心配しなくていい」


 リックスの言葉にスケルトンウォリアーが再び骨を鳴らした。


 編成を終えたゼロ達は渓谷の都市に向かって旅立った。

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― 新着の感想 ―
[一言] あぁぁぁ!あの人か!名前忘れたけど、迷ったら罰当たるなぁとか言ってたくせに残ったんかい!全くなんて物好きヤツ!!そういうの大好き!!いいぞもっとやって!!
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