表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/100

草原の都市に突入

 ゼロはシンシアとイザベラ、そして草原の街の状況を見比べ、諦めたようにため息をついた。


「イザベラさん達は好きにしてください。どうせ止めても好きにするつもりでしょう?シンシア女王のことはお任せしますよ」


 諦め顔のゼロとは対照的にイザベラは満足げに頷いた。


「お任せなさい。女王の護衛は精強な王宮警備隊と私が最も信頼を寄せる彼等がいれば万全ですの。例え嵐が吹き荒れても木っ端1つ、雨粒の1滴すらも女王には触れさせませんのよ」


 胸を張るイザベラの背後に立つ聖監察兵団の中隊長はゼロと同じ表情をしているが、その部下の隊員の表情はまちまちだ。

 中隊長の傍らに立つ眼鏡をかけたハーフエルフは呆れ顔だし、剣を持つ小隊長はイザベラと中隊長の様子を面白そうに眺めている。

 他にも無表情の屈強な小隊長や不安げな表情の女性弓兵など様々だ。

 

 イザベラに過大評価されたグレイは諦めを通り越して最早悟りの境地だ。


(イザベラさんもそうだが、シンシア女王も最前線に出ようとするのだろうな)

「当然ですのよ。しっかりと女王を守り通しなさい」

(それは厄介だな。まったく、骨が折れるものだ)

「それをどうにかし、任務を全うするのが貴方の使命ですのよ」


 グレイは言葉を発しないのに会話が成立する。

 他者から見れば一方的な会話で分かり合うグレイとイザベラだが、これはイザベラが望む通じ合う心とは違うものだろう。


 そんなイザベラ達を横目にゼロが正面の戦場を見据えたその時、都市に向かった筈のアルファが舞い戻ってきた。


「主様!火急にお知らせしたいことがあります。都市の中央、大教会に人間の生き残りが潜んでいます。教会全体を結界で覆って死霊の侵入を防いでいます」


 アルファの報告にゼロを除いた全員が戦慄した。


「まさかっ!都市が陥落してどれだけ時間が経った?本当なのか?」

「・・・生きて、いるの?」


 チェスターとカミーラがアルファに詰め寄る。


「だとしても水や食料に余裕はない筈・・・時間はありませんわ!」


 イザベラの背後ではシンシアが膝を付いて神に祈りを捧げている。

 そん中でゼロだけは表情も何も変えずに都市に向かって歩き始めた。


「どうしますの?救出を優先しますのかしら?」


 イザベラが問うがゼロは首を横に振った。


「予定どおりです。敵リッチを倒し、死霊達を殲滅します。人々の救出はその後です」


 ゼロの判断にチェスターが声を上げる。


「ゼロ、頼む!住民の救出を優先してくれ」

「今も命が尽きようとしている人がいるかもしれない・・・。お願い」


 無口なカミーラも必死だが、ゼロの考えは変わらない。


「私が敵ならばこの状況を利用しますよ。生き残りを助けようとする我々の隙につけ込みます。だから、私の優先順位はリッチの討伐、死霊の殲滅、そして最後に人々の救出です。まあ、あまり時間を掛けるつもりもありません。短期決戦で勝負をつけます」

「しかしっ!」


 尚も詰め寄ろうとするチェスターをイザベラが止める。


「お止めなさい。その男の話を聞きましたわよね?」

「・・・ああ」

「ならば、そこのおバカネクロマンサーの優先順位は変わらない。でも、私達は好きにして良いのですわね?」


 イザベラの問いかけにゼロは肩を竦めた。


「ならば、話は簡単ですの。グレイ!一個小隊をシンシア女王の護衛に残して私に続きなさい!」


 イザベラが振り返ればグレイは既に準備を終えていた。

 アストリアの第3小隊を残し、第1、第2小隊と直属分隊を従えており、それを見たイザベラは頷いた。


「さすがはグレイ。ならば、行きますわよ!」


 イザベラとグレイ達は都市に向けて駆け出し、先を歩き続けるゼロの横を駆け抜けて行った。

 ゼロにはイズとリズが付き従っている。

 チェスターとカミーラはどちらについて行くか少しだけ迷った挙げ句、ゼロの後に続いた。


 ゼロは歩きながら部隊の再編成を済ませる。

 既に都市に突入した魔法部隊はそのままに、シールドとアロウの部隊を都市の外の警戒に残す。

 入り組んだ都市の中では機動力が発揮できないデュラハン達も都市の外の遊撃警戒。

 スピア隊を追加で都市に突入させたその時、都市の外壁にある見張り塔が倒壊した。

 崩れ落ちる塔から飛び出す影とそれを追うオメガとシャドウ。


「リッチを叩き出しましたね」


 ゼロはサーベル隊を引き連れて都市の中に駆け込み、中央広場へと向かう。

 イザベラ達も大教会に向かったようだ。


「それでは、最終局面です。リズさん、自分が思うように死霊を召喚してみてください。そうですね、6割程度の力でお願いします」

「・・・はい!」


 リズはその手を翳した。

 リズの魔力に反応して首に掛けたネックレスの魔石が鈍く輝く。


「・・・生と死の狭間の門を開いて私達に力を貸して」


 リズの召喚に応じて20体のスケルトンウォリアーが出現した。

 しかも、ただのスケルトンウォリアーではない。

 全ての個体が炎に包まれた鎧をその身に纏っている。

 リズの精霊サラマンダーの力が宿っている、通常のスケルトンウォリアーよりも強力だ。


「・・・凄い」


 召喚したリズ自身が一番驚いている。


「予想以上ですね。それではリズさん、一緒にリッチを倒しましょう」


 ゼロはサーベルに命じ、サーベルと5体のスケルトンナイトを残し、サーベルが指揮していた部隊を都市内の掃討に向かわせた。


 ゼロとリズ、イズ、チェスター、カミーラの5人はアルファ、サーベル、5体のスケルトンナイト、20体のスケルトンウォリアーを率いて中央広場に到着する。

 そこには1体のヴァンパイアがオメガとシャドウに牽制されていた。

 周囲には数十体のヴァンパイアと数百体のグールの姿。

 これまでの敵とは一味違う。


「勝負です。皆さん、手早くけりをつけてしまいましょう」


 ゼロは剣を抜いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ