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死霊の軍勢同士の会戦

 ゼロは丘の下の平原にアンデッドの軍勢を召喚した。

 先陣を切るのは300体のデュラハンの戦車兵と騎馬隊の機動部隊。

 後に続くのはシールドとスピアに指揮された数十体のスケルトンナイトと3000体のスケルトンウォリアーの主力部隊。

 右翼にはサーベルが指揮する800体のスケルトンナイト、スケルトンウォリアーの部隊。

 左翼から後方にかけてスケルトンロードの弓兵であるアロウに指揮された200体のスケルトンウォリアーによる弓隊。

 最後尾にシャドウとミラージュ指揮下のジャック・オー・ランタン、ウィル・オー・ザ・ウィスプ、スペクターによる魔法部隊300体が控える。

 総数5000体程の大部隊が前進を開始した。


 それまで敵に気付かれまいと魔力を抑え込んでいたゼロだが、アンデッドの軍勢を召喚するため魔力を一気に解放したため、草原の都市を彷徨っていたアンデッドだけでなくアンデッドを支配しているリッチにも気付かれたらしく、都市の外に敵アンデッドが溢れ出てきた。

 ゾンビ、レイス、スケルトンと様々で、大半は都市の住民のなれの果てであり、年寄りや女、子供の姿もある。

 この都市に至るまでに幾度も見た光景であるが、その数が桁違いに多い。

 その様を見たカミーラは青ざめて震えており、チェスターやイズも鋭い表情だ。

 ただ、リズだけは違った。

 悲しみとも慈しみともいえぬ複雑な表情で敵の軍勢を見ている。


(やはり、リズさんは死霊術師として高い適性を持っていますね)


 リズの表情を横目に見たゼロは戦場全体を見渡し、最前列に配置したデュラハンの機動部隊を後方に下げ、代わりにシールドとスピアが指揮する主力部隊を前進させて敵の前に大盾の防壁を構築した。


「突撃して敵の陣形を崩すんじゃなかったのか?」


 チェスターが首を傾げる。


「はい、一気に勝負をかけようとしましたが、止めておきます」


 そう言って接近してくるアンデッドの群れの後方を指差した。

 ゼロの指し示した場所には敵本隊のスケルトンやドラウグルが整列して待機している。

 その数は3000体程、中には上位種も存在していそうだ。

 更に都市の中にも数千の軍勢がいる。


「住民達のなれの果ての下位アンデッドを前面にして我々の勢いを止めるつもりでしょう。流石はリッチに指揮された軍勢ですね」


 そうこうしている間に双方の軍勢が衝突した。

 敵アンデッドをシールドの大盾隊が受け止め、スピアの槍隊が突き戻す。

 左翼や後方からアロウの指揮する弓隊が矢の雨を浴びせかける。

 敵の初手を受け止め、逆に前進を開始したシールド達の部隊を抑えきれず、敵の先陣部隊は瞬く間に突き崩された。

 都市の住民達のアンデッドではリッチの支配が完全には行き届いていなかったのだろう。


「・・・リッチが支配しきれていない住民達は再び立ち上がることは無いでしょう。ここからが本番です」


 一旦は後方に下がったデュラハン達が敵の本隊に向けて突撃を開始、サーベル隊も右翼側から敵の左翼に襲いかかった。

 その間にゼロはシャドウに新たな命令を下す。


「敵リッチの居場所を突き止めなさい」


 シャドウを偵察に出したゼロは戦場全体を見渡した。

 敵本隊に攻撃を加えているデュラハンとサーベルの各隊も敵を圧倒しているのだが、敵アンデッドも再出現を繰り返しており、思うようにその数を減らしていない。


「もう一押しでしょうか」


 腕組みして呟いたゼロはシールド隊を後退させ、スピア隊1000を突撃させた。

 これで都市の外での戦いに決着が着いた。

 スピア隊が参戦したことにより、敵を倒す数が再出現の数を上回り、2刻程の後には敵本隊を殲滅させることに成功した。

 敵の再出現も停止したこの好機をゼロは見逃さない。

 最後尾にいたジャック・オー・ランタン達の魔法部隊をミラージュに指揮させて都市内に踊り込ませ、都市の中を守る敵の撹乱を開始した。

 敵も感情が無いアンデッド故に精神的に混乱することは無いが、ミラージュ率いる魔法部隊が都市内を縦横無尽に駆け回りながら攻撃を加え、綻びが生じた防衛地点の補完に力を割かねばならぬために敵の動きが鈍くなる。

 その隙を突いて偵察に出ていたシャドウが敵リッチの居場所を突き止めた。

 都市の外壁に設けられた見張り塔の中にリッチが居る。

 ゼロはオメガとアルファを召喚した。


「シャドウと共に敵リッチを中央広場に引きずり出してください」

 

 ゼロの前に立つオメガとアルファ。


「かしこまりました。主様」

「私の出番は無いのではないかと心配しました」


 ゼロの命令を受けた2体は直ちに都市へと向かって飛び去った。


「それでは、私達も都市に向かいましょう。リッチだけは私達が倒さなければなりませんからね。・・・その前に、到着が早すぎますイザベラさん」


 ゼロが振り返ると、そこにいたのはイザベラだ。

 総本隊であるアイラス、イバンス両軍を率いて明日に到着する予定の筈のイザベラが腰に手を当てて仁王立ちしているが、周辺には指揮する部隊の姿は無い。

 他には、あろう事かシンシア女王と宰相のドム、シンシアを護衛する王宮警備隊と聖監察兵団の中隊がイザベラと共にいた。

 聖監察兵団の中隊を率いる隊長にゼロは見覚えがあった。


「総本隊の到着は予定どおり明日になりますの。ただ、シンシア女王が初戦を見届けたいと希望されましてね。だから、先行して来ましたの」


 胸を張るイザベラに対してゼロはため息をついた。


「そんな無茶な・・・。私にも予定や段取りがあるのですよ」


 呆れ顔のゼロにシンシアが申し訳なさそうに頭を下げた。


「すみません、私の我が儘です。国を取り戻すために私が背負う業を見届けたかったのです。私自身は戦うことができませんが、私の代わりに戦ってくれる皆さんやアンデッドさん達の戦いを見届けなければいけないのです」


 戦場に立ったシンシアは戦場の空気に震えているものの、現実から目を逸らさないその瞳は決意に満ちていた。

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