表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/100

反攻開始

 ゼロは鉱山の街から西に進んだ位置にある草原の都市を見下ろす丘の上にいた。

 行動を共にするのはイズ、リズの兄妹と道案内のチェスターとカミーラだ。

 

 反攻作戦については戦力不足から幾つもの都市や街を同時に攻める策を講じることができないため、地道に一つ一つ拠点を解放するしかなかった。

 そこで、作戦の基本方針としてはゼロを中心とした少人数が先行し、アンデッドの軍勢による奇襲攻撃を敢行して敵を消耗させ、最後に後続のイザベラが指揮する本隊により拠点を解放することとなった。

 草原の都市に至るまでに幾つかの小規模な村や街を解放したが、先行するゼロ達は5人という少人数である上、スペクター等のアンデッドによる偵察を密にしているために敵に気付かれることなく目的地直近まで接近して完全な奇襲を行うことができた。

 それらの村や街には多数のアンデッドが彷徨っているものの、使役者であるリッチまではいなかったため、ゼロのアンデッドだけで難なく敵を殲滅することができたのである。

 また、殆どの街がアンデッドに支配されていたものの、難を逃れた住民達の一部が付近の森や山に潜んで生き延びており、彼等を街に帰すことができた。

 解放した街にはイザベラ達聖職者が強力な結界を張った上で防衛のための人員を配置する必要があるが、これを続けていると戦力が際限なく減ってしまう。

 そこで、配置する人員は最小限に留め、その代わりにゼロが召喚したスケルトンウォリアー等の中位アンデッドの部隊を街の周辺に配置することにした。

 仮に再び敵の襲撃を受けたとしても、ゼロの部隊と結界により持ちこたえることができるし、万が一持ちこたえられなければスケルトンウォリアーが敵を引き留めている間に残留部隊の誘導で街を逃れて鉱山の街に避難するように手配してある。


 今、眼下に見えるこの草原の都市はイバンス王国東部の中核都市であり、イバンス王国にとって貴重な平地にある都市である。

 大規模な都市であり、これまで解放した街とは都市を支配しているアンデッドの規模が違う。

 この都市にリッチがいることは間違いないだろう。


「さて、ここまでは順調でしたが、今度は少しばかり面倒ですね」


 ざっと見た限り、相当な数のアンデッドがいる。

 その数は数千の規模。

 ゼロはシャドウとミラージュを召喚し、都市の偵察に向かわせた。

 スペクター程度ではリッチに気付かれてしまう可能性があるからだ。


「2体が偵察から戻るまでに作戦を説明します。といっても、奇襲をかけて大軍でもって正面から攻め落とすだけです。イザベラさん達は明日には到着しますので、それまでにはある程度の目処をつけておきましょう」


 軽く言うゼロにチェスターが唖然とする。


「明日までだと?大規模都市を攻めるんだ、通常の軍隊ならば数日は掛かるぞ?」


 ゼロは涼しい顔で頷く。


「完全に陥落させる必要はありませんからね。敵をすり減らしておけばいいだけですから何とかなるでしょう。それに、通常の軍と違って兵の消耗を考慮する必要がありません。まあ、それは敵方も同じですが」


 話しながらゼロはふと気付いたようにリズを見た。


「せっかくです、リズさんにも手伝ってもらいます。リズさんには遊撃隊を指揮してもらいましょう」


 突然のことにリズが慌てる。


「しかし、私はまだ未熟で・・。下位アンデッドを10体程か、中位アンデッドを1、2体しか扱えません」


 確かにリズの死霊術はゼロに比べてまだまだ未熟ではあるが、その成長速度は驚異的である。

 そもそも、リズが死霊術を学び始めてまだ1年にも満たず、数ヶ月前には下位アンデッドを2、3体扱うのが精一杯だったのが、今や中位アンデッドを召喚できるまでに成長していた。

 ゼロですら何年も掛けてたどり着いた領域である。

 精霊使いである彼女の能力と適性が大きく影響しているらしく、精霊に死霊の力を乗せたり、その逆だったりと、独自の技を身に付けるまでに至っているのだ。


「これを使ってみてください」


 そう言ってゼロが差し出したのは赤い宝石が付いた1本のネックレスだった。

 ゼロの腕輪にはめられた赤い魔石と同じものだ。


「これは!」

「鉱山の街の地下迷宮を調査していてもう1つ見つけたものです。カミーラさんに鑑定してもらっていて、呪いの類は無いことを確認済みです。貴女ならば使いこなせるでしょう」


 リズはゼロの手からネックレスを受け取った。

 手にした途端、魔石からリズの身体に不思議な力が流れ込んでくる。


「凄い・・・。魔力が高ぶってくる」


 驚くリズにゼロが説明する。


「以前にも話しましたが、この魔石は特定の魔力にのみ反応して、その力を増幅させます。所謂、死霊術を効率よく扱えるようにするアイテムですね。未熟な能力の死霊術師の力を底上げするもので、私が持っていても大して役に立ちませんが、貴女ならば有効に扱える筈です」


 ゼロの説明に真剣な表情て頷くリズ。


「わかりました。全力を尽くします」


 何よりもゼロの期待に応え、その役に立ちたいと強く思ったのだ。

 次にゼロはイズとチェスター、カミーラを見た。


「イズさんはリズさんの援護をお願いします」

「心得ました」


 イズは力強く頷く。


「チェスターさんとカミーラさんは当面は私の護衛をお願いします。そして、戦いの最終局面、リッチを仕留める際には協力をお願いします」

「任せろ!」

「・・・頑張る」


 そうこうしている間に偵察に出ていたシャドウとミラージュが戻ってきて、都市の現状と都市を支配する敵の状況が判明した。

 ゼロは再び草原の街を見下ろす。


「始めましょう!」

 

 草原の都市解放作戦が始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ