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鉱山の街解放

「終わりました」


 リッチを冥府の底に引きずり落とし、残された数百のアンデッドを支配下に置いたたゼロは振り返った。


「「ゼロ様っ!」」


 イズとリズの兄妹が駆け寄る。


「ゼロ様、今まで何をしていたのですか!」


 イズを押しのけてリズがゼロに詰め寄る。


「え・お・おぅ・・」


 その勢いに思わずのけぞってたじろぐゼロ。


「ゼロ様が行方不明になって・・私・・信じていても・・」


 ゼロに縋りついて嗚咽を漏らすリズ。

 イズも半ば呆れ顔で笑みを浮かべる。


「ゼロ様、妹を泣かせないでください」

「ええっ?私の責任ですか?」

「そうですね。妹は心配性なんですよ。だからこれはゼロ様の責任です。これで丸く収まります」

「そんなっ」


 ゼロは自分の胸に顔を埋めて泣くリズに慌てふためきながらもその肩と頭に手を置いて軽く撫でる。


「すみません、心配をかけました」


 ゼロの声に顔を上げないままでリズが何度も頷く。


「そうですのよ!貴方、今まで何をなさっていたのです?」


 振り返ってみればそこには腰に手を当てて不機嫌そうな表情で仁王立ちしているイザベラの姿。

 ゼロの手に安心したのかリズの嗚咽は止まっているが、ゼロから離れようとはしない。

 ゼロは肩を竦めた。

 

「まあ、色々と事情がありますのできちんと説明します。その前にこのアンデッドをどうにかしなければなりません。私について来てください」


 そう言うとゼロはオメガ、アルファ、3体のデス・ナイト以外の配下のアンデッドを冥界の狭間に戻した。

 残されたのはリッチを始末した後にゼロの支配下に置かれた数百のアンデッドだが、歩き出したゼロに従って彼等も整然と移動を始める。

 ゼロと結界をものともしないオメガとアルファは鉱山の街の中に向かうが、アンデッド達は3体のデス・ナイトに先導されて街を迂回し始めた。

 チェスターとカミーラはある程度は事情を把握しているのか、イズ達に目配せしてついて来るように促すとゼロに続いて歩き始めた。

 

 アイラス王国の援軍とネクロマンサーゼロの活躍により鉱山の街は危機を脱した。

 駆け抜けた目抜き通りを逆に向かって歩くゼロ。

 街を守っていた兵士や冒険者、住民達が遠巻きにゼロを見ているが近づこうとする者はいない。

 その視線に軽蔑の色は無いが、畏怖に満ち溢れている。

 ゼロが街を守ったことは理解しているが、アンデッドに国中を攻められ、街を襲われた彼等からすれば死霊術師のゼロに畏怖を感じるのは致し方ないのだろう。

 そんな中でイザベラはヘルムントに状況把握、イバンス兵との情報交換と兵の休息の手配を頼むとゼロの後を追った。


 ゼロは街を抜けて山道を登り、その先にある坑道へと入ってゆく。

 それは以前にゼロが依頼を受けて調査した地下迷宮への入口だった。

 数体のウィル・オー・ザ・ウィスプを召喚して光源としたゼロの後にはイズやイザベラ達が続くが、その更に後にはオメガ、アルファ、デス・ナイトに先導された数百のアンデッドが続く。

 イザベラやイズだけでなく、事情を知っているであろうチェスター達ですら数百のアンデッドが後をついて来る状況に背筋が寒くなるが、死霊術を学ぶリズはアンデッド達が完全にゼロの支配下にあることを理解していた。

 閉鎖された坑道を進み、封鎖した筈の地下迷宮への扉を開いて更に地下へと進む。

 ゼロは最深部の地下神殿に到着すると振り返った。


「それでは説明します。まず、私がここで何をしていたのか、この神殿が何であるのかです」


 ゼロが右手を翳すとその手首の腕輪にはめ込まれていた赤い魔石が輝いた。

 すると、その光に呼応するようについて来たアンデッド達が神殿内に置かれていた棺に向かい、次々と棺の中に姿を消してゆく。

 神殿に入りきれなかった個体もこの階層に無数にある部屋に置かれた棺に吸い寄せられ、数百もいたアンデッドが瞬く間に姿を消した。


「ゼロ様、これは・・どういうことですか?」


 唖然としたリズがゼロに問い掛ける。


「ここは遥か昔、まだイバンス王国が建つ前にこの地に存在したある宗教の神殿です。神殿と表現しますが・・・それは表向きです」


 神殿を見渡しながら話すゼロ。


「どういうことですの?」


 イザベラの疑問にゼロが説明を続ける。


「宗教施設であることは間違いありません。ただ、この宗教は死霊術を是とし、死霊達を神?の使いと崇め、死を超越した死霊により世界を支配しようとした狂信者達の施設です。ここにある無数の棺は死霊術を容易に行使できる装置であり、彼等はこの装置を駆使して不死の軍勢を生みだそうとしたのです」


 言葉を切ったゼロは試しにその装置の1つを作動させてみた。

 棺の中から次々とスケルトンが這い出してくる。


「この装置の力を使えば術が未熟な者でも死霊術を容易に行使できますし、実力がある者が使えば恐るべき軍勢を効率的に呼び出すことができます。ただ、死霊術師の私が言うのもなんですが、そのような狂信者達が繁栄するはずもなく、人々の脅威、敵として滅ぼされました。しかし、長き時を経て滅びた筈の狂信者達が死霊となって蘇り、かつての野望を果たそうとしているのです」


 ゼロの説明にイザベラ達は息をのんだ。

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