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闇の中で

 暗く、広い空間に設けられた祭壇の上。

 その祭壇の上でゼロは目を閉じて静かに佇んでいた。

 背後にはオメガとアルファが控え、ゼロの左右にサーベル、スピア、シールドが立つ。

 そして、祭壇の下には無数のアンデッドがひしめき合っている。

 その中でシャドゥとミラージュからの報告を受けて目を開いたゼロは眼下にひしめくアンデッド達を見渡す。


「アイラス王国が動きましたね。ここまでは予定どおりです」


 無表情で呟いたゼロは再び目を閉じて精神を集中する。

 そんなゼロの右手首にはめられた腕輪には赤く輝く魔石がはめ込まれていた。

 その闇に包まれた空間にゼロ以外に命ある者は存在しなかった。


 国境を越えたイザベラ率いるアイラス王国軍は聖監察兵団と聖騎士団を前面に進軍を続けていたが、狭隘な山道で迫り来るアンデッドの軍勢を前に思うように先に進めずにいた。


「阻止結界を前面に集中!無理に飛び出す必要はありませんの!狭い山道です、敵は前からしか来ません!結界の内側から着実に打ち倒しなさい」

 

 イザベラは聖騎士団と聖監察兵団の阻止結界を交互に押し出してその内側からの攻撃を繰り返し、少しずつ軍を進めていた。

 そんな戦場の上空ではリズが放ったレイス5体が情報収集に当たっている。


「敵アンデッドはおよそ3千!前線はこちらの攻撃で押し戻されているのに、後方は前に進もうとしていて、その間で前後から挟まれたアンデッド達が押し潰されて自滅しています」


 リズはレイスからの情報を逐一イザベラに伝え続ける。

 情報を聞いたイザベラは頷いた。


「敵は闇雲に前進しようとしているだけ。統率が取れていませんのね」


 それでも数においては圧倒的に不利な状況だ。


「数が多いですわね。きりがありませんわ」

  

 うんざりしたように漏らすイザベラだが、無理に突出することなく、慎重に、それでいて確実に軍を進めている。


「確かに数は多いですが、単調な攻撃ですね」

 

 軍による部隊行動のために出番のないイズは指揮官であるイザベラの傍らに立ち、状況を見守っていた。


「確かに、ゼロ様に限らず手練れのネクロマンサーならば数で押すだけでなく、こちら部隊の背後や中心部等にアンデッドを出現させてこちらを攪乱するはずです。やはり統率者が存在しないのかもしれません」


 リズも死霊術を学ぶ者としてイザベラに助言する。


「だとしたら、一気に攻勢に出たらどうですの?今の戦力でも敵を蹴散らすことはできると思いますわ」


 イザベラの言葉にイズとリズは首を振った。


「止めておくべきです。仮にですが、アンデッドを指揮しているのがあのゼロ様ならば、罠の可能性が高い。イザベラ殿が如何に勇猛で個の強さでゼロ様を上回るであろうとも、集団戦闘であの方が本気でアンデッドを操るとなれば話しは別です。そうなったら数百程度のこちらの戦力などひとたまりもありません」

「私は兄様と違ってゼロ様が敵だとは微塵にも思いません。しかし、やはり一気に攻勢に出るのは反対です。敵はこちらの攻撃と自滅により数を減らしつつあります。しかし、敵はアンデッドの軍勢です。倒しても倒しても際限なく出現されるといずれこちらの手が止まります。このまま慎重に進むべきです」


 2人の助言を聞いたイザベラは笑みを浮かべた。


「そうですわね。貴方達はあのおバカネクロマンサーと行動を共にしていたのですものね。ネクロマンサーのことを私よりも理解している。貴方達の言葉に従った方が良いですわね」


 目的地まではまだ距離がある。

 鉱山の街を包囲するアンデッドを撃退してイバンス王国の残存兵力と合流し、街を解放しなければならないのだ。

 イザベラは損耗を防ぐことを最重点とした部隊運用を進めることにした。  

 このまま慎重に進んでも、明日中には鉱山の街に到着できる。

 本番はそれからなのだ。

 

 闇の中の祭壇の上でゼロは再び目を開いた。


「部隊を指揮しているのは・・・イザベラさんですか。また恐い人が来ましたが、まるで戦力が足りていないようですね。しかし、私もまだ動けません。私の方も、もう少しだけ、時間が必要です」


 呟いたゼロは目の前で増え続けているアンデッドを見下ろす。

 その数は数千にも及んでいた。

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