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ネクロマンサー対リッチ

 障壁が破られてアンデッドがなだれ込んでくる直前


「大地の精霊ノーム!我等に仇なす者達を阻む防壁を立てろ!」


イズが大地の精霊魔法を行使して床を隆起させて物理的に入口を塞いだ。


「これでもう暫くの間実体を持つ敵を阻むことができる!但し精神体のアンデッドは抜けてくるから注意しろ!」


 ゼロを除く全員が入口の付近に密集して敵アンデッドと戦闘に入った。

 そしてゼロは祭壇の上でリッチと対峙した。


 ローブの下、骸骨と化しているリッチの眼窩の闇の中で青白い炎が揺らめいている。

 その視線が何を捉えているのか分からない。

 ゼロとサーベルは剣を構えて左右に分かれ、リッチの正面にはアルファ、シャドウ、ミラージュが立つがリッチは佇んだままだ。


「・・・」


 ゼロが無言のまま光熱魔法で先制する。

 放たれた光はリッチのローブに風穴を穿ち、その胸を貫通したが、ダメージを与えた様子はない。


「やはり通常魔法は駄目ですか」


 呟くや否やゼロとサーベルが同時に斬り掛かり、サーベルはリッチの首を、ゼロは胴体を横一線に斬り抜く。

 ゼロとサーベルの剣は正確にリッチを捉えたが、それぞれ何の抵抗も無く振り抜かれ、捉えた筈のリッチはその身体が一瞬だけ歪んだだけで、変化はみられない。


「やはり、一筋縄ではありませんね」


 再び距離を取るゼロとサーベル。

 次の瞬間、リッチの杖の先がゼロに向いた。

 眼窩の奥の炎がゼロを捉える。


「主様!」


 アルファがゼロに防御魔法を展開するよりも早くリッチの杖が光った。

 光の中から無数の死霊、レイスの群が現れてゼロに襲い掛かり、ゼロがその群に飲み込まれた。

 

「おいっゼロッ!」


 チェスターの声にレナとリズが振り返る。

 2人の目に飛び込んできたのはゼロに群がるレイスの群。

 数が多すぎてゼロの姿が見えない。


「「ゼロッ」様!」


 2人の気が逸れてこちらにも一瞬の隙が生じた。

 間断無く放たれていた魔法攻撃に間隙が生まれ、その一瞬の隙を突かれてイズの精霊障壁が崩れ、入口からアンデッドがなだれ込んできた。

 カミーラが札を放ち、飛び込んできた先頭集団を焼き払う。


「これ以上の炎はダメ!」


 彼我の距離が近過ぎてこれ以上炎の魔法を放つと炎を纏ったアンデッドに取り付かれ、巻き込まれる可能性がある。

 しかし、このままでは数に飲み込まれる。


 そのとき、リズが異変に気付いた。

 オメガ、シールド等ゼロのアンデッドがゼロを守るでも、助けるでもなく、周囲の敵アンデッドとの戦闘を続けている。

 特に、祭壇の上に立つアルファ、サーベル、シャドウ、ミラージュも動かない。


(ゼロ様のアンデッドが動かない?)


 リズは状況を理解した。


「ゼロ様は大丈夫です!一旦祭壇下まで下がりましょう」


 叫びながらリズはウィル・オー・ザ・ウィスプを3体召喚して敵アンデッドに突っ込ませる。

 火炎魔法を放つわけにはいかないが、ウィル・オー・ザ・ウィスプは本来が火の玉だ、突入しただけで周囲の敵を牽制することができる。

 その隙間にオメガ、デュラハンが斬り込んだ。

 オメガ達がこじ開けた隙間をシールド達スケルトンが押し広げ、レナ達は祭壇下までたどり着く。

 しかし、完全に退路が断たれてしまった。

 レナ達の周囲と祭壇上の僅かな空間以外が敵アンデッドで埋め尽くされる。


「リズ、ゼロ様が大丈夫とはどういうことだ?」


 イズがリズに問う。


「ゼロ様がアンデッドの群に飲まれてもアルファやオメガ達が反応していません。あの攻撃はゼロ様の脅威になっていないということです」


 リズが傍らに立つオメガを見る。


「そのとおりです。あの程度の攻撃ではマスターに掠り傷一つ負わせるには至りません」


 オメガは頷いた。


 レイスの群に取り付かれたゼロ。

 ゾンビやグールではないにせよ、これだけのレイスに取り付かれれば生身の人間ならば魂を刈り取られ、肉体は喰らい尽くされてしまう筈だが、リズの読みどおりそれを目の当たりにしたアルファ、サーベル、シャドウ、ミラージュは動かない。

 リッチは更にレイスの群をゼロに向かって叩き込む。


「少し・・・不愉快です・・・」

 

 アルファは表情を変えないまま呟いた。

 それでもリッチに変化はない。

 ゼロを脅威と認めたのか、攻撃目標をゼロのみに定めてレイスを召喚し続けている。

 それを目の当たりにしているアルファの魔力が高まってゆく。


「・・・下がれ下郎っ!」


 アンデッドとは思えないような一喝と共に巨大な氷塊でリッチを凍りつかせた。


「主様、お戯れも程々に願います」


 窘めるようにレイスの群に呑まれているゼロを見る。

 

「やれやれ、もう少し様子を見たかったのですがね」


 渦を巻いているレイスの群の中から涼しい顔で歩み出てきたゼロ。

 オメガの言うとおり掠り傷一つ負っていないどころか、レイス達はゼロに触れることすらできていない。

 ゼロがほんの少し気を高めただけで霧散してゼロから離れていく。


 ゼロは祭壇下に集まっているレナ達を見た。


「決着を着けます。あと四半刻ほど持ちこたえられますか?」


 ゼロの言葉にレナは笑みを見せる。


「誰に聞いているの?四半刻どころか一刻でも二刻でも持たせてあげるわよ」


 チェスター達も頷いている。


「上等です。それでは四半刻以内に決着をつけます。ここから先は手加減無用です。力を温存する必要はありません。全力戦闘で構いませんよ!」


 リッチに向かうゼロの背後にアルファ、シャドウ、ミラージュが控え、リッチの背後にはサーベルが回り込んだ。

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