息子が行方不明!
俺は御門龍二、社畜だ。よく名前のせいでイカつい奴だとか思われるが、そんなに体格もいい訳では無い。まぁ社畜だ。大事な事だから二度言った。
そんなこんなで俺は社畜生活を辛いながらも上司に頭を下げながら毎日たまに休みつつ送っている。
今日は上司が課長へと昇任し、その祝いで飲み会に来ている。正直祝ってやるほど良い上司ではない。
そんな苦痛な時間を終え、帰っている途中、
タタタタタタタタッ
後ろから走ってくる足音が聞こえたと思い振り返ると
ドスッ
「うっ」
「キャーー」
「誰か警察を!」
刺されてしまった…何でだよ。刺される覚えがない。
ん?待てよ…あの顔は…上司…?
そうか、俺は割と出世続きな方だった。だからそんな俺に抜かれるのではないかと思ったのだろう。
こんなことをしたら意味ないじゃん。あほぉ。
傷口が熱い…痛い…ちょっと待て、俺の三年間集めたコレクションはどうなる?あれは俺の財産とも言える代物なんだ!せめて向こうに持っていきたい!
頼む!!一つだけでもぉぉぉぉぉ!!
ミノリぢゃぁぁぁん!
ブツっという音がして俺の意識は途切れた。
「…ですか?…い…ぶですか?」
「大丈夫ですかっ!」
「はっ!」
「すみません!全然寝てなんかないです!」
「え…?いや、寝てましたよ?」
「あれ?ここは?」
ここはどこだ?俺は確か退屈な社畜生活を送っていたはずだ!なのにどうだ。今は目の前に可愛らしい幼女がいるではないか。
「はっ!ここはまさか天国…!」
「何を言ってるんですか。ここはライオネルの街ですよ。」
「ライオネル?」
「はい!ライオネルとは幼女という意味があります!」
いや…ないだろ。
「ここ、ライオネルは魔族の街」
「魔族の街って…そしたら君も!?」
「ええ。私も無論魔族です!」
「ええええ!?く、喰われる!」
冗談じゃない!アニメとか漫画の世界では魔族は人間を平気で殺す生き物だぞ?
「うふふ。面白い人ですね。魔族同士で食べ合うわけないじゃないですか。」
「は?どういうことだ?」
「どうって、そりゃあなた魔族じゃないですか。」
嘘だろ?俺が魔族?俺は社畜だぞ!
しかしさっきから俺の声が少し…いや大分高い気がする。俺はもっとバリトンボイスだったぞ!
とりあえずどうしたものか。
「とりあえず、あなたはどうしてここで寝ていたの?」
「いや、別に寝ていたわけでは…」
「え?じゃあ何をなされていたんですか?」
「え、えーと…長旅で疲れていまして…」
「寝てたんですか?」
「そうなりますね。」
起きたら知らないとこにいました!なんて言えるわけないだろ。
「旅の方でしたら私の家が経営している宿屋に泊まって行きますか?」
そうしたいのは山々だが…
「今金がない。」
「よく旅が出来ましたね」
「ぐっ」
痛い所をつくな
「それじゃあ私の知り合いの家に居候させてもらいましょう!」
「させてもらいましょうって失礼じゃないのか?」
「そうでしょうなぁ」
「そうでしょうって、無責任だな」
「街に入りましょうか。」
俺たちは街の中へと足を踏み入れた。
街の中はあの子が言ってた通り皆幼かった。
一番年齢が高いだろうと思う人は大体20代位に見える。若いなぁ
「ところであなた…名前は?私はシェリー」
名前か…御門龍二は多分違うよな。さっきガラスに自分であろう姿が映り腰を抜かすかとおもったよ。
よくは見えなかったが、少なくとも男ではなかった。
まぁそれは大体分かってた。
だって俺の下半身にポケットモ〇スターがいないんだもん!まぁ適当に…
「俺の名前はミカ!」
「ミカですか。いい名前ですね!」
中々いい名前じゃないか。
「しかしミカさんは女の子なのに一人称が俺なのですね」
「ま、まぁね。言いやすいからかな。」
ここは仕方ない。
「それより、これから行く所って」
「さっき言ってた私の知り合いの家ですよ」
てか、さっきから周りの視線が気になるな。
「ここは確か幼女の街じゃなかったのか?」
「ええそうですよ。」
「それにしては結構おっさんが集ってんだな」
「ええ。ここは中立都市でもあるので冒険者の方々も来訪されるんですよ」
「なるほど。幼女目当てだな。」
しかし、俺を見てどうするというのか。俺は元男だし多分見た目はブサイクに近いだろう。
多分幼女というだけで見られてるのだろう。居心地悪いな。
「着きましたよ。」
「ここが」
「そうです!」
「お城じゃねぇかァァァァァ!!」
「え?何か問題でも?」
「いや、問題は別にないが…」
城の関係者に知り合いって何者だよこの子。
「とりあえず話、付けてきますね。」
「お、おう」
すごいな。兵士達が頭下げてるよ。
ホントに宿屋の娘なのか?
「てか、兵士たちはショタじゃないのか?」
「ショタが何かは分かりませんが…基本幼いのは女性がほとんどと思って頂いて結構ですよ。」
そうなのか。
「あっ!いましたね、あの方が私の知り合いですよ!」
「やぁ、来たのかいシェリー。」
「こんにちは!マリーおばさん。」
おばさんって、見た目20代くらいだぞ?
「このひとが?」
「ええ!この人はミカっていって、預かって頂きたくてこちらに伺いました。」
「なるほどねぇ。いいだろう。」
あれ?割とあっさり。
「ホントですか!?ありがとうございます!」
「シェリーには世話になってるからね。」
俺の知らないところで話が成立した。
「それでは、私はこれで。」
「ありがとう。シェリー」
「いえいえ。困ったらいつでも伺ってくださいね。」
「ああ。」
「それじゃミカちゃん、まずは職業を教えてもらおうかね。」
「職業?」
「あら、身分証明書とか持ってないのかね?」
「いやぁ、」
持ってるわけないだろ!こっちはいきなり刺されて、いきなりこっちに連れてこられたんだぞ!んなもん知るか!アホ!
「そうかい。それじゃまずは鑑定をしなけりゃだね。」
「鑑定?」
「まぁ、付いてきな」
そう言って連れて行かれたのは広い聖堂みたいなところだった。
「ここは?」
「ここは、聖魔堂館。職業などを鑑定したりするところだよ。」
「へぇ~」
「こっちに来な」
「ここに手をかざしてごらん」
「ここか?」
パァァァァァ
「おお」
白い光が発せられたと思いきやプレートのようなものに何やら文字が刻まれ始めた。
ミカ 魔王族 Lv.1
HP 2500/2500 MP 3500/3500
ステータス
・攻撃 4500
・敏捷 4500
・知力 5000
・魔力 6000
・耐性 5500
スキル
・魔力操作 ・魔王の覇気 ・火魔法 ・水魔法
・風魔法 ・氷魔法 ・闇魔法 ・魔王の指揮
・魔王の奥義
なんか…多いな。
「なんだい!?これは!?」
「魔王族って…あんた魔王だったのかい?」
「いやいやいやいやそんなのよくわかんないって言うか…」
正直魔王とか言われてもホントになんの事だよ…
「それにこのステータス…並の魔族じゃ何百人集めても勝てないわよ」
「そんなに…」
「はぁ、わけを聞こうかい」
「えーとですねぇ…」
俺は向こうの世界から来たことを話した。
「転生してきた…ね」
「はい…」
「実はね、ここ数十年間魔王の席は空席なのよ」
「へぇ~」
「私の憶測だけどね、多分その魔王にあんたは選ばれ転生してきた…」
「…」
いや、いきなりそんなこと言われても困りますわぁ
俺はただの社畜だっての。なのにいきなり魔王とか
どこのラノベだよ!
「とりあえず風呂に入って着替えな」
ここはお言葉に甘えとくか。
「そうします」
「ふへぇ~~」
思わず変な声が出てしまった。
「なんだか久しぶりの風呂だな。」
「ん?」
水面に映った幼女の顔を見て俺は慌てた。
「す、すすすすみ、すみませぇぇぇぇぇん!!」
誰だこの美少女は!しかし周りには誰もいない…
まさか…
「俺?」
いやいやいやいやどうしてそうなる。俺だぞ?
元男がなぜこんな美少女に生まれ変わるんだ!
いや、待てよ…ないことは分かってるんだ。
い、一応…チラッ
「ぃぃぃぃやぁァァァ!!」
自分のを見て興奮するとかどういう性癖の持ち主だよ!いや、分かってたよ?大分前から!
分かってたけど…現実とは中々辛いものだ。
「はぁ~疲れた。」
「どうしたんだい?そんなに疲れた顔して」
「いえ、なんでもないです。」
息子がいません!とか言ったところでだろ!
それに…無毛なせいでバッチリクッキリ見えてしまった…
それにこの胸だ。中々大きい。
初めて触った胸が自分のとか逆に思い出に残りすぎてつらい!
この後マリーさんと食事をしたが口に合わないものは特になかった。味覚がこっちのものになっているのだろう。
「はぁ~疲れた」
ボフッ
ベットの上に乗っかって俺はため息を吐いた。
「これからどうすっかなぁ~」
俺の部屋はマリーさんの部屋の横を借りている。
中々広く、俺一人なら十分住めるくらいだ。
「いきなり魔王とかいわれてもなぁ~」
「それに、俺のこの姿…ミノリちゃんそっくりじゃねぇかァァァァァァァ!!」
いや、別にそこに不満はない!不満はないのだが、何かこう…言葉に出来ない感情がさぁ!
「もー…寝よ…」
俺は一人で叫び疲れて眠った。