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現在、アルトが掃除している場所はベルミア王国の山脈地帯にある教会だ。

名前は分からないが、廃棄された後もわりとよく整理されている所が多い。リュドミラたちは魔族の軍団で侵略する前にこの教会を占領していたようだ。

ベルミア王国の山脈地帯の殆どは今は魔族によって占領されている状態となったが、プリシラから聞いた話ではすぐにベルミア王国を占領できるわけではないらしい。

「はぁ・・何だか、とんでもない事に巻き込まれた気がする。」

厳密には自分から巻き込まれたようなものだが、本来なら魔族さえ来なければアルトは本来の目的を達成するために聖剣使いとして仕事をしていたはずだ。

今ではすっかり魔族の手先になってしまったが、状況が変わり過ぎてしまい本来の計画が実行不可能となった。

「貴方、どうして裏切ったの?」

椅子に座って行儀よく紅茶を飲んでいるプリシラは、アルトの裏切りが気になって居るようだった。

確かに、聖剣を持った勇者が奇襲をして魔王に立ち向かっておきながら敗北し、尚且つ裏切るという最低な行為をしでかしたのだ。

「別に。どうもしないよ。」

「はぁ・・?」

「プリシラでいいんだよね。」

「まぁ、それ以外に呼びようがないからいいけど・・。何?」

「聖剣使いって知ってる?」

「知らないわね。役職か何か?」

「スローネ帝国は世界中から非常に強力な魔法加工をされた武器を集めている。その内、聖剣と称される魔法の武器に選定された人間は勇者と呼ばれ、帝国の命令に従い凶悪なドラゴンやらゴブリンを始末する仕事を請け負う。基本的にはギルドに近いけれど、そのギルドですら出入りを禁じられている遺跡があってね。俺のような聖剣使いはその遺跡の中を調査することが本来の役目だった。今では魔族を打ち倒すのが一番の仕事だと思われちゃったけど。実際には魔族だけではなく、過去に使われた魔法遺物や未確認の魔物を調査することも使命の内となる。」

「その仕事を貴方は自分から放棄したわけだけれど。聖剣使いの仕事が嫌いになったの?」

「いいや。俺には目的があってね。聖剣使いは手段でしかないんだ。」

「そう。私たちのせいで、貴方の本来の目的は達成できる見込みが無くなったってこと?」

「そういうことになる。だから気にしないでくれると嬉しいよ。」

「気にするなとは暴論ね・・。」

流石にプリシラもあきれている様子だった。

本来の目的というものがどういうものかは知らないが、それで帝国を裏切るという行為事態はプリシラにとって信頼できる行為ではない。

時と場合によっては、例えリュドミラの本意ではなくても彼を殺す必要がある。

言葉次第では今ここで殺害したほうがいいはずだ。それなのに・・どうしてノノでさえもあんなことをしたのか。

「貴方、女の子にキスされたいから聖剣使いになったの?」

「いやいやいや。」

「貴方、リンダというお姫様に恋をしていたんでしょう?それを考えれば、どうせ報われない恋なんだからいっそのこと裏切って帝国に復讐しようってのが貴方の目的じゃないの?」

「んな浅ましい行為をするくらいなら今ここで暴れるけどね・・。」

「へぇ。どう暴れるつもり?」

「知るか。ていうか、そのリュドミラという子・・やたら強かったんだけどさ。聖剣の魔法奥義が効かないわ変な魔法攻撃を使うわで。あれは何なんだ?」

「私たちの魔王よ。」

「魔王って何だ?」

「称号みたいなものよ。魔族軍を率いて別の世界の国を亡ぼすことを許可された存在。特に私たちの場合はソロモンの乙女がその役割を担っているの。」

「なにそれ・・?」

「ソロモンの乙女というのは、魔族の中でも特に魂や魔力を強化されている少女のことを言うの。魔族の中でも最も人の少女に近く、また長寿でもある存在。私たちはカイザーの命令に従い、魔王に任命されたリュドミラの手下として生きている。わりと結構単純でしょう?」

「その、君たちは一体どういう所から来たんだ?」

「それは秘密。」

「まぁいいけど・・。ここに居てどうするつもりなんだろう。ベルミア王国の首都には侵略してこなかったけど。」

「リュドミラお姉さまはこの山の上に新しい城を魔法で召喚しようとしている最中よ。」

「え?」

「魔王の本拠地とでもいうのかしら。いくら魔族の軍団とはいえ、貴方みたいな聖剣使いにかなり数を削り取られたから。その軍団の補充のために城を建築しなければならないの。」

「なるほど。無敵ってほどじゃないんだな。」

「あら、結構生意気なのね。」

「それで、その建築ってどうする気なんだ?」

「だから召喚魔法で呼ぶのよ。浮遊王城アーカムを。」

「浮遊・・王城?」

「といっても一部だけだから、一度に補充できる軍団は一万程度ね。」

「あれ?」

てっきりアルトはその浮遊王城とやらに100万ぐらいの魔族軍団を呼びつけると思い込んでいた。

しかし、それがたった1万というのはどういうことなんだろうか。下手をすると首都を占領する事すら難しいんじゃないか?

「何だか予想しているスケールと大分違うんだけど。どうして?」

「いくら魔族といってもそう数は無い。異形系の魔族は貴方たちが数を減らしてしまったから、後は魔法でその数を水増しするしかないわね。」

「魔法・・?」

「とにかく。ベルミアの首都を占領した暁には地獄を見せてあげるわ。」

「随分な話だが・・。それで、君たちはどうするんだ?まさか、大陸全土を統一する偉業を達成するんじゃ?」

「さぁ。そこは自由なんだけど。そこはリュドミラお姉さまに聞くしか無いわね。ねぇ、紅茶のおかわり。」

「はいはい。」

完全にこき使われている気がするが。とりあえず今はお茶を汲むぐらいの事しかできない。



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