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非常に体が痛い。体がとても冷たく、そして地面が硬く感じだ。何より気絶して居ながらも自分は鎖に繋がっており、無理やり立たされている状態になっていた。

今、自分は何処にいるのか分からない。見た感じでは分からないが、体の感覚からして非常に危険な状態になっていた。

頭には袋を被せられており、更に体はほぼ裸の状態だった。パンツだけでも残してくれたのはある意味ありがたいことだが。

「私、男性の体を初めて見ました。」

「駄目よノノ!見過ぎたら汚れる!」

何か女の子の声が聞こえる。アルトは自分が今まで何をしていたかを思い出し、少々苦笑いした。

魔族に捕まったらしい。流石に非常にやばい状態であるのは分かった。

「あら、起きたみたね。」

「ふぇ?」

少女の声を聴き分けていると、中には先ほど戦っていた魔族の少女も居るらしい。

「元気?ちょっと面白い状態だけど。私、そういうの好みよ。」

「・・ここは、どこだ?」

「今の状況分かってる?貴方は捕まってるのよ。魔族の捕虜となった人間、もはや嬲り殺したくて仕方ないんだから。」

「そいつは怖い。」

むしろ一番怖いと思われるのは、聖剣を魔族に奪われたという事実だろう。流石に、今の事実を国に知られたら確実に怒られる。というか、非難され過ぎだろう。

「お姉さま、さっさとこんなの殺さないと。」

こんなのというのは流石にどうなんだろうか。

「駄目よノノ。この人は一応お姉さまが特別に捕虜にした物なんだから。一応大切になさい。」

「えー。」

さっきから一体何人居るんだろうか。少女とやらは。

「お前たちは何もっぐはぁ!?」

突然腹に蹴りを入れられた。感触からして靴なのは分かったのだが、流石にひどすぎる。

顔を隠されて体が敏感になっている状態なので、非常にその痛覚はストレスを感じる。拷問の訓練を受けていなかったら多分今ので気絶していたに違いない。

「お前とは何様かしら・・。普通の人間だったらすぐに殺していたわ。」

「一体、何の・・・・恨み、が・・・」

「人間は一度、魔族を迫害していたそうじゃない?その仕返しとして、今現在殺戮サービスを行っている最中。でも安心して。女子供は殺さないから。」

「ほう。随分紳士的だな・・。」

「貴方、私が居た場所をつきとめて奇襲したのは素晴らしい功績ではあるけど。聖剣の力を頼り切って居るだけの人間だということは事実。己の魔力を鍛錬せずに私に歯向かうだなんて。」

「馬鹿にしたところでどうなるんだ・・?第一、俺はまだ負けを認めてないからな。」

「死なないからまだ負けてないって意味?全く、いつの時代になっても血生臭いわね。うーん、私としてはあまりクールにやりたくないんだけど。」

「お姉さま、すぐに殺しましょう。」

さっきからアルトを殺すように誘導している子が居るのだが。正直恐ろしすぎる。

「とりあえず、取りなさい。ノノ。」

「え?私?」

「早くなさい。」

「は、はい!」

そして、アルトはようやくその被り物を取らせてくれた。

非常にまぶしい光がやってくる。アルトはどうやら牢屋に囚われているらしく、更に目の前には三人の少女が居た。その内、赤い髪の魔族とやらは確かに居たようだが。

「何を、するつもりだ。」

「拷問タイムよ。勇者様に対し、魔王であるこの私が手籠めにしてあげるのよ。」

「て、手籠め?」

すると、自称魔王の隣に居るピンク髪の女の子が慌てるように言った。

「そんな、お姉さまがそのような汚れた人間とだなんて・・」

「汚したのは私なんだけど・・。それに、一応下僕ぐらいはいいじゃない?下僕の勇者であれば、私は一人ぐらい居てもいいと思ったわ。」

「げ、下僕?」

赤い髪が揺れる。その少女は確かに下僕と言ったが、アルトに対して一体どういう感情を抱いているのだろうか。

「貴方、アルトと言ったわね。私の下僕となる気は無い?」

「断る。魔族の下僕になるくらいならさっさと殺せ。」

「くす・・」

「なぜ笑う?」

「随分真面目ね。でもいいのよ、無理をしなくても。さっき貴方の脳から記憶を抽出させてもらったから。貴方の過去を私は大抵よく知ったわ。」

「貴様・・!」

「第16皇位継承者の娘であるリンダ、その麗しい姿に一目ぼれしてしまった貴方はその方に対し近づこうとしてしまった。しかし、いくら勇者であれどその方と結ばれることはできない。貴方は戦争屋であるのだから、彼女とは非常に程遠い存在であることは事実。他国との戦争で勝利し続けて功績を持ったとしても、出来てあと10年後でしょうね。それまで他の男に取られるのは時間の問題・・。」

あまりにも容赦の無い過去の暴露だった。

リンダに一目ぼれした事自体は事実であるが、その事自体はまだ今も諦めきれていない。

「人をいじめて何が楽しい・・?」

「あら。これは周知の事実じゃないかしら。貴方の無謀過ぎる行為はむしろ祝福に値するわ。ただ、貴方としてどう思う?リンダの事はまだ諦めきれていないし、他の男には取られたくないでしょう?」

「お前には関係の無い事だ。」

「かっこいいわね。でも、どっちにしろ諦めきれていないんでしょう?そう、ノノが言っていたわ。」

「ノノ?」

「この子よ。」

ピンク髪の女の子がノノと言うらしい。もう一人の銀髪のロールツインテールの子はどういう子なのかは、今は不要な考慮だろう。

「サキュバスに属する魔族は、人の記憶の中に入れるの。その内、淫らな恋の感情を元にその記憶を採取する事ができる能力を持つの。」

「淫らな恋・・」

「事実でしょう?平民だった貴方が、王族である清き正しい乙女に対し劣情を働いた事事態は無礼に価するもの。」

「おいおい・・魔族の言うセリフじゃないだろ。説教かそれ!?」

「それで・・」

無視された。

「貴方には、そのリンダというお姫様を諦めきれない、その感情をもてあそばせてもらうわ。所謂、性拷問という奴ね。」

「なっ・・!?」

その非常に拙い言葉を言い放った彼女に呼応して、ノノがアルトに近づいてくる。

「私の初めて・・どうしてくれるんですか。」

「意味がよく分からない・・。」

ノノの恥ずかしがりはアルトにとっては意味不明だった。

「いいじゃない。相手は私との闘いから生還した勇敢なる少年。むしろノノの初めてに丁度いいわ。」

「この鬼畜・・」

その物凄く小さな声はアルトにしか届かなかったが、ノノにとっては鬼畜以外なんでもないらしい。

そして、ノノは決心した表情を見せてアルトの頬に手を当てる。

「これでもしイケメンでなければ魔法を総動員して無理やり整形していました。」

「えっと、それどんな魔法・・?」

「物凄く痛くて残酷な魔法です。でも、勇者としては十分身なりが整っているので・・心配はいりません。勇者様、どうかノノの事は心配なさらず、夢の中で彼女とゆっくり過ごしてください。」

ノノの顔が近づく。アルトが予想してしまった通り、ノノはアルトに唇を重ねた。

そして、突然眠気に襲われる。ノノの感触を感じただけで、非常に甘ったるい感覚に襲われてアルトは夢の中に囚われた。


そして、5分以上経っただろうか。アルトは目を覚ました。そして段々と顔が赤くなった後、後悔したかのように地面から目を離さなかった。

「あら?どうだったかしら。」

「ど、どうだったかじゃないだろう!?何だあの夢!?」

「何だって、貴方の初恋相手とキスする立派な淫夢よ。ノノの得意魔法の一つじゃない。」

「淫夢だと・・?」

「そう。でも、それは非常にリアルで繊細な夢。貴方が密かに恋を抱いていた相手とベッドの中に居られるという幻覚を見た事になるんだけど。それでどうかしら?高貴なお姫様との初めての・・」

「途中から目覚めたから、本格的にはやらなかったけど・・。」

「あら?途中で目覚めたの?」

ノノを見ると、残念な顔をしていた。

「そんな、私の夢魔法が破かれたなんて。あんまりです。」

「ノノの初めてを奪っておいて、よくも途中で放棄しやがったわね!」

銀髪の方の女の子は怒り心頭だった。意味がよくわからない。

「くっ、どっちにしろ俺は・・最低な男になった。」

「随分と奥手ね。勇者として恥ずかしくない精神。ますます気に入ったわ。」

「貴様、よくも彼女の姿で俺に下劣な真似を・・!」

「あ、あの・・」

ノノが前に出る。何かアルトに聞きたいことがあるらしい。

「じゃぁ、私なら、いいんでしょうか。」

「ノノ。今はそういう話をしているんじゃないんだけど。・・分かったわ。私の姿で彼の夢の中に入るから、ノノはその仲介をお願い。」

「「「は?」」」

勇者が悪魔っ娘とはもってしまった。

その魔王少女は一体何を言っているのか全くよく分からなかったが、自分がアルトの夢の中に入るとはどういうことなのか。

「いいから。ノノ。」

「は、はい。ではもう一度お願いします。アルトさん。」

「ちょ、ちょっとまっ!?」

そして、またノノはアルトに対しくちびるを重ねる。そして、すぐに昏睡してしまった。


また、アルトは夢の中に入る。そこは大きなベッドの上だ。そこでアルトはリンダに会った。そこで彼女に抱きしめられた後、非常に拙い事をしてしまった。

いくら勇者であれど平民、王族の少女に対してあのような淫らな行為をすることは許されない。

そもそも、彼女はまだ未成年だ。いくら恋心があったとしても、その情事だけで彼女の行く末を危うくする。

王族は基本的に国の政治に対して強い拘束力を持っている。王族の娘は他の国の王族へ嫁ぐことで、国と国の同盟関係をより強固とする。時折その同盟関係のせいで王の継承者争いが勃発し、混沌とした状態となる事例があるらしいが・・。

「どういうつもりだ・・?」

目の前に居るのは、次はあの魔王少女だ。

「リュドミラよ。」

「リュドミラ・・?」

「私の名前。ファーストネームじゃないけれど、皆そう呼んでるから。」

突然、少女はアルトの体の上に座った。アルトに対し騎乗するような状態となったわけだが、彼女はどういうつもりなんだろうか。

「これが男性の体ね・・。」

「一体何をす、ぐぁ!!?」

突然股間を捕まれた。かなり強く握られたため痛覚しかしない。

「リンダでは駄目なら、私がするしかないじゃない?」

「リンダの時はここまで、攻撃的じゃなかったよね!?」

「私、男性経験の無い処女だから・・こう見えても恥ずかしいのよ。」

「その体勢で言うセリフじゃない・・!!」

「ねぇアルト。私の下僕になったら、少しは自由になるわよ。」

「魔族の手下に、なれと・・?」

リュドミラがアルトに覆いかぶさるような形になる。すぐ目の前には彼女の顔があるが・・。

「どうしてこんな真似をする。」

「勇者を下僕にする魔王、それだけで十分私は満足できる現状だもの。」

「それはお前の性癖なのか・・?」

「えぇ。もし男女逆だったら私、あの場で貴方の処女を奪ってたわ。」

「いや、俺男なんだけど。」

どっちにしろかなり駄目な状況だということは分かり切っている。

「私が男じゃないのはしょうがない事だけれど、貴方を好んできたのは事実よ。」

「随分とだらしのない女だな・・。」

「あら、リンダというお姫様に対して劣情を持っていただらしない男が言うかしら。」

「・・現実にはかなわない。」

「そうね。もし現実にこの場でしたことのようなことがあれば、貴方の首は飛んでいる可能性があるもの。もしくは、リンダは王位継承権を略奪される可能性もある。」

「随分と詳しいな。」

「一度、プリシラ・・あの銀髪の子が貴方の国を調べていたのよ。とりあえず、今はその話は置いておいて。私の下僕にさえなれば、リンダに近づけるかもしれないでしょう?」

「何だと・・?」

「私が国の首都を占領し、リンダというお姫様を奪えばいい。そうすれば貴方は晴れて彼女を自由にできるじゃない?」

「ふざけるな。そんな馬鹿な理由で彼女を好きにしていい理由があるか!」

「あるわよ。だって貴方の自由は既に無いもの。」

「ぐっ・・!?」

彼女と視線を合わせた時、突然認識が狂うような状態になった。

そして、リュドミラはキスをする。それと同時に、左手に妙な痛覚が発生した。

「これで契約は完了したわ。」

「契約・・?」

「貴方は勇者でありながら魔王の下僕となった。私に反発するような事があった場合、貴方は左手に刻まれた聖痕に苦しめられることとなる。どう?神経を逆なでされた気分?騎士の名を汚された感想は?」

「いや・・別にどうもしない。」

「え?」

「むしろ精々したよ魔王様。確かに、俺は無駄にプライドが強すぎた。下僕というのは何か引っかかるけど、今は大人しくしてやるよ。」

「へぇ・・意外と裏切るの早いわね。」

「とりあえず、この嫌らしい空間から目を覚ましてくれないか?」

「・・しないの?」

「処女卒業はまだ早い。」

「そう。分かったわ。」

そうして、リュドミラは彼から離れた。

その光景もまた薄くなり、アルトは夢から目を覚ます。実質、わりと突然裏切ってしまったような形にはなった。しかし、それはリンダを手に入れられるからという理由があるわけではない。

実質、アルト自身はもっと別の目的があるのだから。


「どうして、彼がそんなことを・・?」

銀髪の少女・・プリシラは不審な目で目を覚ました彼を見ていた。

「勘違いしているようだが、俺は別にリュドミラを倒すために勇者になったわけじゃない。理由は言えないが、そういうことだ。」

「そう。つまり、帝国にいずれ反逆しようとしていたということ?」

「いや、まぁ・・そうなるのか。とりあえず、下僕になった後はどうなるんだ?」

リュドミラはそうね、と深く考えるようなしぐさをした。

そして、少しその場を移動すると、二つほどある者を取って彼によこした。

ほうきとちりとり。これで帝国と戦えと言うんじゃないだろうか。

「掃除でもしていなさい。私はちょっと疲れたからやすませてもらうわ。」

「・・・了解しました。」

流石に空しかった。

これで張れて、アルトはリュドミラという魔王少女の下僕となったわけだが。これから先どうなるかはまだよく分かって居ない。とりあえず、牢屋の掃除から始めてみよう。




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