正義のヒーローは奪う
僕の双子の兄さんはヒーローだ。
この地球を脅かす、悪と戦う、ヒーローだった。
僕とは違う。神様に選ばれた、正真正銘のヒーロー。
「「「「正義のヒーロー」」」
生まれた時から天才で、
そのころ問題になっていた地球制服をたくらむ怪人たちと
生後二日で戦っていた。
兄さんが立ち上げたヒーロー団体は
潰しても潰しても立ち上がってくる悪の組織から
人々を守っていた。
でも。
ある日、その日々は終わりを告げた。
僕が高校生になったその入学式に、兄さんは
とある怪人に殺された。
死体は黄金に輝き、死んでいるのが嘘かのように
みずみずしかった。
その中にはヒーローの核があると言う。
そして、それは適合者にしか取り出すことが出来ないと言う。
兄のいない今、この地球は征服される寸前で
捕虜として捕まっていた僕は
兄が立ち上げたヒーロー団体に助け出された。
僕を助けるために、何人ものヒーローたちが死んだそうだ。
死んだある者は、兄の事が好きだったらしい。
死んだある者は、僕と一緒に囚われていた恋人を見捨てて、僕を助け出したらしい。
だから、僕に戦えと言う風に聞こえる「戦って欲しい」って、言った。
選ぶ権利はある(ない)。
だから、僕はヒーローになった。
兄の胸に手を置くと、
重そうな鉄の様な
鈍く輝くステンドガラスの様な
剣の柄の様な物が手にまとわりついてきた。
兄からすべてを奪うように僕はそれを
引き抜いた。
引き抜かれたそれは、鈍い光を放ちながら
空を暴れる様に左右に揺れた。
体が持ってかれる。
誰かが叫ぶ。
おさえつけろ。
体が押さえつけられる。
引き抜いた剣の鋭い先を僕の胸へ突き立てていく。
やめてくれ。
痛い。
苦しい。
許してくれ。
叫んで、喚いて暴れても
誰も、
手を緩めてはくれなかった。
めりめりと自分の中に入ってゆく。
上も下も分からず、
ひたすらに喉が渇いて
ひたすらに痛くて
気を失った。
目覚めても、痛みは引かず、
動かせるのは瞳の眼球くらいで
隣で兄が天使が眠っているかの様に横たわっていた。
兄からは腐敗した匂いがしていた。