私の物語。
私は私のことがわからない。
どこにいる誰なのか、何のために生きているのか。
それでも、自分の意図なんて無視して決められたレールを進んでいく。
止まりたい、進みたくないなんて気持ちは全て無視。
嫌だ、嫌だよ。
だって、進んでいったらいつか終わってしまうのでしょう?
決められた文字の上を辿っていく日々は虚無なんてものよりも平坦で、ゆっくりと過ぎていった。
私は鳥籠の中の少女。
箱の中で本を読むだけの少女。
それがなんの意味を持つのかなんて私は知らない。
知っている人物がいるとすれば…。
それはきっと私の知らないあの人で、確かに知っている存在。
「作者だよ」
手元の本が語りかけてくる。
作者?
私は聞き返した。
「君という物語を作り、それを形にしないでメモ帳という鳥籠に閉ざしたままの作者さ」
つまりはどういう事なのだろうか。
私にはよく分からない。
だって、考える機能なんてほんのちょっぴりしかないもの。
私はただ本を読むだけの少女。
そんな現実からは目を背ける。
「あえて気づかない振りをするのかい?」
「まあ、いいけどね」
「でも、きっと君は気づいているはずだよ」
うるさいな
私は叫んだ。
その言葉はきっとこの本に届いた。
それきり喋らなくなった本は、私がページを捲った音しか発することは無かった。
ここまで読み続けて、突として本に書かれた文字は途切れた。
まだページの残りはあるというのに、どうして?
その疑問の答えをきっと私は知っていた。
ここは物語の最果てなのだ。
私という物語はここで終わるのだ。
私が本を閉じた途端、鳥籠の中の少女は花弁となって風に乗った。
この本はきっと、私の物語だ。